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19 女の子と、お風呂に入ることに…

 ボクらがとった部屋は、四階にあった。


 二階はまるごと雑魚寝部屋で、三階はひとり用の部屋が並ぶ。

 四階が三人以上が泊まる大部屋になってるんだけど、利用者があまりいなのか静かだった。


 宿のオジサンが三人部屋を勧めてきたのは、空き部屋を埋めたかった思惑もあるのかもしれない。


 肝心の部屋のほうは長方形で、ベッドがみっつ並んでいるほかに、クローゼットや鏡台があった。

 この宿のなかでは、わりといい部屋のようだ。


 ボクとウサギは部屋に着くなり荷物を降ろし、装備を外してどっかりとベッドに腰掛ける。


 マニーは何よりもお風呂が気になるようで、真っ先に浴室に入っていった。



「うむ、庶民的な宿のわりに浴室はなかなかだ。さっそく入浴するとしよう。レディーファーストだから、ウサギが一番に入るといい」



『いいの?』



 ウサギがボクにスケッチブックを向けてきたので、ボクは頷く。


 ウサギが浴室に消えていったあと、少しして……ばしゃばしゃと水が流れる音と、鼻歌が聞こえてきた。


 思ったより音が響く。まさか鼻歌を聴かれてるとはウサギも思ってないだろう。


 いままでロクに話したこともなかった女の子の、入浴音を聞くことになるなんて……。

 それに、いままで男だと思っていた女の子と、部屋でふたりっきりになるなんて……。


 どちらも今朝のボクでは、夢にも思わなかったことだ。

 なんとも落ち着かない気持ちでソワソワしていると、



(よこしま)な気持ちを抱くんじゃないぞ。彼女に変なことをしたら許さないからな」



 マニーから釘を刺されてしまった。



「そんなこと、しないよ……」



「じゃあ、なんでそんなにソワソワしてるんだ」



 そりゃ、マニーが女の子だからだよ……。

 と言いたかったけど、それは寸前で飲み込んだ。


 彼女から自然に告白してもらうか、それとも何らかの事故で判明するようなことでもないかぎり……ボクは知らないフリをしていたほうがいいだろう。

 下手に言っちゃうと、「なんで知っているんだ!?」と詰問されるのは目に見えている。


 ソワソワの理由については、適当にごまかすことにした。



「いや、ボクは孤児院暮らしだったから、こういう所に泊まるが初めてで……」



「それで緊張していたのか。そういえばアンノウンもウサギも孤児院出身だったな。孤児院には戻らなくていいのか?」



「成人の儀式が終わったら、孤児院には戻っちゃいけないって院長さんから言われてるんだ」



「自立しろということか……まぁ、家なき子になったのは俺も同じだがな」



「うん。だからこれからは毎日塔に入って、お金を稼ぐつもりなんだ。そうしないと、野宿をすることになっちゃう」



「そうか……ならば早いとこ3階を突破する必要があるな。4階からはクエストが受けられるようになるから、稼ぎも違ってくるはずだ」



 クエスト……簡単に言うと『依頼』だ。

 塔の外にいる人たちがお金を払って依頼して、塔の中にいる冒険者たちがそれを受ける。


 だいたいが、塔の中でしか手に入らないものを持ってきてほしい、って内容だ。

 頼まれたものをクエストカウンターに持っていくと、引き換えに依頼料がもらえるという仕組みになっている。


 ちなみに3階以下で手に入るものは、塔の外でも普通に売られているのでクエスト自体が存在しない。



「クエストかぁ……今日は3階まで登ったから、明日には4階まで行きたいなぁ」



「そうだな。だが、3階からはモンスターが強くなるそうだ。ボスモンスターもいるらしいから、用心してかかろう」



 なんてことを話してるうちに、部屋にウサギが戻ってきた。


 宿に備え付けのガウンを着て、ひと皮むけたみたいにサッパリした様子。

 ほんのり上気した身体からは、ほこほこと湯気がたっている。いい湯だったようだ。


 そして当然のように、次に浴室に向かうマニー。

 ボクは最後になっちゃうけど、女の子ならまぁいいか、と思って止めないことにする。


 そこで……ボクはふと思い立った。



「ねぇウサギ、お風呂ってどのくらいの大きさだった?」



『四人でも入れるくらい大きかったよ』



 四匹の動物が、仲良く湯船に浸かっているイラストとともに教えてくれるウサギ。



「そっか……ありがとう!」



 浴室のほうからは、マニーが身体を流している音が聴こえてくる。

 たまに女の子っぽい鼻歌が混ざるのだが、反響していることに気づいてハッと口をつぐむ。


 そんな細かい反応までわかるくらい、浴室の音は筒抜けだ。

 一番風呂のウサギは「ここまで聴こえてたの……!?」みたいに恥ずかしがっている。



 ……ちゃぽん……! ……ふあぁぁ~っ!



 しばらく待っていると、マニーは湯船に身を沈めたあと、気持ちよさのあまり溜息を漏らしていた。


 そこでボクはベッドから立ち上がり、脱衣所へと向かう。

 手早く服を脱いだあと、タオルを腰に巻いて浴室にお邪魔した。


 入ってきたボクの姿を見るなりマニーは、「きゃっ……!」と女の子のような悲鳴をあげる。

 が……慌てて口を塞ぎ、そして腕で胸を覆い隠していた。



「ななななななっ!? なんだっ!? アンノウン!? 俺が入ってるんだぞ!?」



 金髪をお団子頭にしている彼女は、怒りと戸惑い、そして恐怖が入り混じったような表情でボクを睨んだ。



「いや、ウサギに聞いたら大きなお風呂だって聞いたから、一緒に入ろうと思って。別にいいでしょ? 男同士なんだから」



「なっ……なにを言っているんだっ!? ダメに決まってるだろう! いますぐ出ていけっ!」



「いいじゃない。仲間になったんだから、そのくらい」



 ボクはなんでもないように言って、洗い場で身体を流しはじめる。



「だ……ダメだと言っているだろう! 出ていけったら、出ていけっ! でないと叩き出すぞっ!」



「やめてよ、そんな怖いこと」



 ボクは怯えるように言いながら、備え付けの石鹸を泡立てる。



「そうだろう!? 怖いだろうっ!? だったら今すぐ出ていくんだっ! さぁ、早くしろっ!」



「ちょっと待って、石鹸付けちゃった」



 ボクはうっかりしちゃった感じで、身体を泡まみれにする。



「そんなの、洗い流せばいいだろう! いますぐ洗い流せ! さぁさぁっ!」



「あっ、ちょっと待って、髪にも付いちゃった」



 ボクはテヘヘと頭を掻いた拍子に、髪も泡まみれにする。



「だからぁ! 洗い流せと言っているだろう! もう怒ったぞ! 本当に叩きだしてやるっ!」



「そんなに怒らないでよ、余計に泡立っちゃう」



 ボクは身体と髪を、両手でわしゃわしゃとやった。



「くっ……! 貴様ぁぁぁぁ~っ! 完全に俺をバカにしているな!? もう許さんぞっ!」



 すごい剣幕のマニー。火花が出るくらい歯をギリギリと噛みしめている。


 表情と声はかつてないほどに怖いけど、湯船の中からはピクリとも動こうとしない。

 脅しだけでボクを追い払おうと、必死になっている。


 まるで、鎖に繋がれてる番犬みたいに……!


 ……ちょっと意地悪な気もしたけど、ボクはなるべく自然な形で確かめておきたかったんだ。

 マニーが本当に、女の子かどうかを……。


 『クロスレイ』で確かめただけだから、実をいうとまだ自信がなかったんだ。

 この目で確かめることができれば、ボクのなかでもちゃんと覚悟ができる。


 やっぱりマニーは女の子なんだ、って……!


 そう思って、一緒にお風呂に入ることにしたんだ。

 違うなら違うで別にいい。


 もし男だとわかったら、それはそれで収穫だ。

 今後もこうやって、一緒にお風呂に入れるしね。


 だけど……マニーのリアクションは、どこからどう見ても女の子そのものだった。 


 露出面積を極力減らすべく、湯船の中でヒザを抱えて小さく小さく丸まっている。

 本当は逃げ出したいんだけど、身体を隠すものがないからできずにいる……という感じだ。



「ああ、今日は疲れたねぇ」



 身体を流し終えたボクは、浴槽をまたいで湯船に片足を浸けた。


 マニーは器用に身体をよじらせ、隅の方へと逃げる。

 さっきまでの強気はどこへやら、彼女は急にしおらしくなった。


 ボクが洗い場にいるときはドーベルマンみたいだったのに、同じ湯船に入ったとたんチワワになったみたいだ。

 お湯は熱いくらいなのに、プルプルと震えだす始末。


 今のマニーは、もう男の要素はどこにもない。


 金髪の後れ毛のかかった、白いうなじに細い肩。

 太ももで押しつぶされ、はみ出している胸。


 白くて滑やかな太ももには、一切のムダ毛が見当たらない。

 ちょこんと湯船から出た小さな膝小僧で、顔を隠そうとしてるんだけど全然隠せてないのがかえって可愛い。


 ふと、その顔があがって……ボクのほうを向いた。


 薔薇のように紅潮しきった頬。青い瞳は海のように潤んでいる。

 そんな泣きそうな目で見つめられたものだから、ボクは心臓を射抜かれたようにドキン! と硬直してしまった。



「このままでは……のぼせてしまう……から……頼む……出てくれ……この……とおりだ……」



 かすれた声で、懇願してくるマニー。



「は……はいっ!」



 ボクは今までに感じたことのない後悔の念に押しつぶされそうになり、シャキッと直立した。

 そのまま逃げるように風呂から出ようとしたんだけど、石鹸を踏んでしまい、スッテーンと転んでしまう。


 ズキズキと痛む腰を押さえながら、なんとか洗い場まで這い出る。


 こりゃ、バチが当たったかな……。

 ボクは調子に乗って女の子をいじめてしまったことを、いまさらながらに反省した。

■□■□パラメーター□■□■(現在の階数:3階)

挿絵(By みてみん)


□■□■スキルツリー■□■□


今回は割り振ったポイントはありません。

未使用ポイントが6あります。


括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。


●料理

 見習い

  (1) LV1  … 下ごしらえ

  (1) LV2  … 焼く・炒める

  (1) LV3  … 茹でる・煮る

 コック

  (1) LV1  … 盛り付け

  (1) LV2  … 揚げる・漬ける

  (0) LV3  … 燻す・焙煎


●サイキック

 ニュートラル

  (1) LV1  … テレキネシス

  (1) LV2  … クロスレイ

  (1) LV3  … テレパシー

 選択:ライトサイド

  (0) LV1  … テレポート

  (0) LV2  … タイムストップ

  (0) LV3  … プリサイエンス

 選択:ダークサイド

  (0) LV1  … ダークチョーカー

  (0) LV2  … エナジードレイン

  (0) LV3  … マインドコントロール


●錬金術

 風錬

  (1) LV1  … 抽出

  (0) LV2  … 風薬

  (0) LV3  … 旋風

 火錬

  (1) LV1  … 変形

  (0) LV2  … 火薬

  (0) LV3  … 噴火

 地錬

  (1) LV1  … 隆起

  (0) LV2  … 地薬

  (0) LV3  … 地震

 水錬

  (1) LV1  … 陥没

  (0) LV2  … 水薬

  (0) LV3  … 奔流


●潜在能力

 必殺技

  (1) LV1  … 波動弾

  (1) LV2  … 烈蹴斬

  (1) LV3  … 龍昇撃

 選択:打撃必殺技

  (0) LV1  … xカウンター

  (0) LV2  … 爆裂拳

  (0) LV3  … 点穴

 選択:投げ必殺技

  (0) LV1  … 当て身投げ

  (0) LV2  … イズナ落とし

  (0) LV3  … 真空投げ


●彩魔法

 灰

  (0) LV1  … フリントストーン

  (0) LV2  … プラシーボ

  (0) LV3  … ウイッシュ

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