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16 さらなる超Buff料理、作ります!

 ボクは今日の稼ぎの8千(エンダー)のうち、半分の4千¥をウサギに渡した。


 口を鯉みたいに丸くして驚いたウサギは、すぐさまスケッチブックに鉛筆を走らせる。

 目を見開いた人物が、『こんなに!?』と吹き出しでしゃべっているイラストを、ばっと掲げる。


 ボクは今日一日で、ウサギに抱いていた印象がずいぶん変わっていた。

 彼女はいつも隅っこで縮こまって、顔を隠すようにスケッチブックに向かっている暗い子だと思ってた。


 でも……本当はこんなに喜怒哀楽のある子だったなんて……。

 彼女の意外な一面を知れて、ボクはなんだか嬉しくなった。



「よぉし、今日だけでこんなに稼げたんだ! これなら冒険者として暮らしていけるよ! ウサギ、この調子で明日も探索しようね! これならてっぺんもすぐだよ!」



『うんっ!』



 頷きながら、バンザイするみたいにスケッチブックをさらに高く掲げるウサギ。


 ボクとウサギはふたりして見つめあい、なんだかいい雰囲気になってたんだけど……冷たい声が割り込んでくる。



「キミたちは、塔の頂上を目指しているのか?」



 金糸のような前髪をたくしあげながら、鋭い視線を向けてくるマニー。

 そのツララのような視線と声に、ボクはヒヤッとしてしまった。



「う……うん、ボクもウサギも、てっぺんでやりたいことがあるんだ」



「やりたいこと? 頂上まで行かなきゃできないことなのか? それはいったい何だというんだ?」



「べつに何でもいいじゃないか」



「よくない。人には言えないことなのか? 教えろ!」



 マニーは聞き捨てならんといった様子で問い詰めてくる。

 ウサギはすっかり怯えていたので、ボクは背中でかばった。



「どうしたんだよ、マニー……なんでそんなにムキになってるの?」



 するとマニーは、感情を露わにしていることに自分でも気づいたのか、ごまかすようにフッと笑った。



「ムキになんかなっていないさ、もともと興味もないしね。キミみたいな人間が頂上まで行って、なにをするつもりなのか……たわむれに聞いてみただけだ」



 いつものボクだったら、こんなことを言われたらもう相手にしないんだけど……マニーの秘密を知ってしまったせいか、なんだか気になってしまったんだ。



「そっか……なら教えてあげるよ。でもお腹も空いちゃったから、晩ゴハンでも食べながら……じゃ、そろそろ行こっか」



 ボクがニッコリ言うと、マニーは毒気を抜かれたように「あ、ああ……」と返事をした。



  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 ボクはウサギとマニーを引き連れ、夕暮れの市場のなかを進む。

 立ち並ぶ露店をひやかしながら、今夜のメニューを考える。


 メインディッシュは思いついてるんだけど、それだけじゃちょっと物足りないから……なにかいいサイドメニューはないかなぁ。


 そういえば……塔のなかで『料理』のスキルを取ったあと、親子丼を思いついたんだよね。

 もしかしたら『料理』のスキルがあればあるほど、それだけメニューを思いつくのかもしれない。


 ボクは試しに、残っていた2つのスキルポイントを、『料理』の『盛り付け』と『揚げる・漬ける』に振ってみた。


 そして、ウインドウショッピングを続けているうちに……最高のサイドメニューを閃いたんだ。


 よし……今夜のゴハンは、これでキマリだ……!


 ボクは食料品を売っている露店に行き、ジャガイモをひと袋と丸パンをみっつ、そして量り売りの小麦粉と酢と油を買った。



「おいアンノウン、夕食ってレストランで食べるんじゃないのか?」



 食堂や酒場がある通りのほうを指さしながら、マニーが呼び止めてくる。



「うん、せっかくだから作ろうと思って」



 ボクは食材の入った紙袋を抱えたまま、それとは逆方向に向かって歩きだす。

 今朝がた鉄の装備を作った、『憩いの広場』へと向かうためだ。



「作る、だと……? まさか、塔の中でやったようなことをまたやるつもりなのか?」



「まぁ、いいからいいから。ついて来ればわかるよ」



「うぅむ……」



 作ると聞いて、マニーの足取りは急に重くなった。

 それとは真逆に、ボクの料理を食べたことがあるウサギの足取りは軽くなっている。


 『憩いの広場』に着くと、中央ではちょうどキャンプファイヤーが始まったところだった。

 塔に集まってくる人たちのために、地元の人がやってくれているらしい。


 やっぱりここに来て正解だった。

 ここなら火も水もあるし、野外で料理するにはピッタリだ……!


 ボクらはさっそく、広場の片隅に陣取る。

 キャンプファイヤーから火をもらってきて、ふたつの焚き木を作った。


 ウサギのリュックから調理道具を取り出し、食材も広げて準備完了。

 これでよし、っと……じゃあ調理開始っ!


 ボクはまず、ふたつのフライパンを火にかける。

 片方には軽く油を引いて、もう片方には油をたっぷりと入れた。


 温まるまでのあいだ、ジャガイモの皮を剥いてクシ切りにする。

 さらにレイジングブルの牛肉をまな板の上に置き、包丁でたたいてひき肉にした。



「ううっ……やはり、牛肉を食べるつもりなのか……!」



 ゲテモノを見るようなマニー。

 その隣には、ごちそうを見つめるようなウサギがいる。


 対照的なふたりをよそに、ボクはひき肉を三等分して、手でこねて形を整えた。


 ちょうどいいタイミングでフライパンが温まったので、油を引いたフライパンのほうにこねた牛肉を入れ、油たっぷりのフライパンには切ったジャガイモを入れる。


 じゅうじゅうと音を立てる、ふたつのフライパン。

 肉の焼けるいい匂いと、芋の揚がる香ばしい匂いが広がる。



「じゃ……ジャガイモを揚げるのか……!? そんなことするヤツ、初めて見たぞ……!」



 驚きを隠せないマニー。


 ジャガイモはこっちの世界じゃポピュラーな食べ物なんだけど、調理法は乏しくて、マッシュポテトオンリー。

 ボクも昨日までは、それが当たり前だと思っていた。


 でも、料理のスキルを得た今は違う。

 生のジャガイモを見ただけで、とめどないジャガイモ料理のレシピが頭の中にあふれてくるんだ……!


 フライパンで焼き、揚げている最中、どこからともなくプ~ンと虫が飛んできた。


 【ミツバチ】(戦闘力:2)


 なんだ、ミツバチか……と思いながら、何の気なしに目で追う。


 そのミツバチは広場から離れたところにある、木にぶらさがっている巣に戻っているところだった。


 そして、ボクはさらなるメニューを思いつく。



「ウサギ、マニー! ちょっと火加減を見てて!」



 ボクはコップを持って立ちあがった。



「お、おいおい、どこへ行くつもりなんだ!?」



「へへ、ちょっといいもの取ってくる!」



 ボクはミツバチの巣に向かうと、巣の真下にコップを置いた。


 そして巣に向かって『錬金術』の抽出陣を描く。

 陣が巣に吸い込まれた途端、トロトロと黄金色の液体が垂れてきた。


 そう、ボクは錬金術で、ハチミツを抽出したんだ……!


 甘そうな液体が、コップの中にとくとくと溜まっていく。


 その様子を、生唾を飲み込みながら眺めていると……巣の中から一匹のミツバチが飛び出してきた。


 【ミツバチ】(戦闘力:2)


 ミツバチは巣からハチミツが盗まれていることに気づき、仲間を呼ぶためブォォンと羽根を鳴らしはじめたので、



「ごめんっ!」



 ボクはとっさにジャブを放ち、はたき落とした。

 ミツバチがぽとりと地面に転がった瞬間、ボクのステータスウインドウが反応する。


 どうやら、ミツバチを倒したことでレベルアップしたらしい。

 ミツバチを倒したところで、もらえる経験値はわずかなんだろうけど……いままでの経験値がかなりたまっていたらしい。


 そして、新たに増えたステータスポイントを見て、ぎょっとなる。

 いつもは1レベルにつき10ポイントなのに……今回は30ポイントも増えていたんだ。


 スキルポイントも、いつもの2ポイントじゃなくて、6ポイント……!

 なんで……!? どうして急に3倍ものポイントがもらえるの……!?


 なんだかちょっと怖くなってきた。



「おーい! アンノウン! なにをやってるんだ! まだかー!」



 背後からマニーに呼びかけられて、ボクは飛び上がりそうになる。



「あっ……ご、ごめん! いま戻るからっ!」



 ボクは気をとりなおし、コップ一杯たまったハチミツを抱えてふたりの元へと戻った。

■□■□パラメーター□■□■(現在の階数:3階)

挿絵(By みてみん)


□■□■スキルツリー■□■□


今回は『盛り付け』と『揚げる・漬ける』に1ポイントずつ割り振りました。

未使用ポイントが6あります。


括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。


●料理

 見習い

  (1) LV1  … 下ごしらえ

  (1) LV2  … 焼く・炒める

  (1) LV3  … 茹でる・煮る

 コック

  (1) LV1  … 盛り付け

  (1) LV2  … 揚げる・漬ける

  (0) LV3  … 燻す・焙煎


●サイキック

 ニュートラル

  (1) LV1  … テレキネシス

  (1) LV2  … クロスレイ

  (1) LV3  … テレパシー

 選択:ライトサイド

  (0) LV1  … テレポート

  (0) LV2  … タイムストップ

  (0) LV3  … プリサイエンス

 選択:ダークサイド

  (0) LV1  … ダークチョーカー

  (0) LV2  … エナジードレイン

  (0) LV3  … マインドコントロール


●錬金術

 風錬

  (1) LV1  … 抽出

  (0) LV2  … 風薬

  (0) LV3  … 旋風

 火錬

  (1) LV1  … 変形

  (0) LV2  … 火薬

  (0) LV3  … 噴火

 地錬

  (1) LV1  … 隆起

  (0) LV2  … 地薬

  (0) LV3  … 地震

 水錬

  (1) LV1  … 陥没

  (0) LV2  … 水薬

  (0) LV3  … 奔流


●潜在能力

 必殺技

  (1) LV1  … 波動弾

  (1) LV2  … 烈蹴斬

  (1) LV3  … 龍昇撃

 選択:打撃必殺技

  (0) LV1  … xカウンター

  (0) LV2  … 爆裂拳

  (0) LV3  … 点穴

 選択:投げ必殺技

  (0) LV1  … 当て身投げ

  (0) LV2  … イズナ落とし

  (0) LV3  … 真空投げ


●彩魔法

 灰

  (0) LV1  … フリントストーン

  (0) LV2  … プラシーボ

  (0) LV3  … ウイッシュ

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