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15 はじめての宝箱、はじめての秘密

 床石をどけた先には、正方形の床下収納みたいなのがあって……そこには木でできた宝箱がすっぽりとおさまっていたんだ。



「や……やった……!」



 ボクは中身も見ていないのに、思わず歓喜の声をあげてしまう。


 なんたってボクにとっては、初めての宝箱……!

 嬉しい悲鳴のひとつやふたつ、あげたくなるってもんだ……!


 ボクは正体不明のヤツと出会った恐怖もすっかり忘れて、いそいそと宝箱を取り出す。


 オール木製の宝箱は赤いペイントがされていて、いかにも何か重要なものが入っていそうな雰囲気をこれでもかと放っていた。


 仲間たちも、期待に満ちた瞳で覗き込んでいる。

 ボクはさっそく開けてみようとフタに手をかけたんだけど、



「待て、アンノウン。罠があるかもしれないから、不用意に開けないほうがいい」



 マニーに肩を掴まれ、止められてしまった。


 でも……たしかにそうかもしれない。

 『太陽の塔』にはモンスターがいるほかに、いくつもの罠が仕掛けられてるって聞いたことがある。


 ボクは宝箱を見つけた瞬間、一刻も早く開けてみたいと思ってしまった。

 その浮かれた気持ちこそ、罠にとっては格好の標的じゃないか……!


 躊躇しかけたボクに、さらにマニーが言う。



「さっき床板を外したスキルで、宝箱のフタは開けられないのか?」



 そっか……『テレキネシス』か……!

 いちど見ただけのスキルの使いみちを思いつくなんて、マニーはさすがに頭がいい……!


 でも……待てよ。

 毒ガスの罠だったりしたら、離れたところで開けても危険かもしれない。


 となると……まずは『クロスレイ』だ……!


 『超能力』のひとつ『クロスレイ』……いわゆる『透視能力』。

 壁などの向こうを、透かして見ることができるスキルだ。


 『クロスレイ』を使うには、指でこめかみのあたりを押さえる必要がある。

 ボクはこめかみを揉み込むように、ひとさし指で押さえた。



「……なにをやっているんだ?」『なにをしているの?』



 宝箱の向こうにいるマニーとウサギが、かたやいぶかしげに、かたや不思議そうに、ボクの顔を見つめている。



「ちょっと、中身を調べてるんだ……!」



 ボクはそう答えながら、こめかみをさらに強く押した。

 すると……宝箱がうっすらと透けはじめる。


 この世界には無いモノだけど、異世界には『X線スキャナー』というのがある。

 身体を透視して病気を見つけるのに使ったり、服を透視して身体検査に使ったりするんだ。


 そのスキャナーにかかると、白黒に見えるんだけど……『クロスレイ』はそれと同じような透視ができる。

 いまはスキルポイントが1だから、まだぼんやりとしてて、モノクロなんだけど……スキルポイントが多くなれば鮮明に、しかもカラーで見えるようになるんだ。


 『クロスレイ』で透視した宝箱には、罠らしきものは仕掛けられていなかった。

 肝心のお宝は……毛糸の帽子だった。


 ボクは、溜息をつきながら顔をあげる。



「中身は毛糸の……うわああああああああああああああああっ!?!?」



 ボクは衝撃の光景を目の当たりにし、後ろにひっくり返ってしまった。



「どうした、アンノウン!? 罠が作動したか!?」



『大丈夫!?』



 心配そうに寄ってくるふたりを、ボクは直視できなかった。

 特に、マニーのことが……!



「毒針でも受けたか!? 顔が真っ赤だぞ!」



『しっかりして!』



「うわあああああっ!?」



 ボクはパニックになって、慌てて這い逃げた。

 部屋の隅っこで、頭を抱えて縮こまる。



 見えた……!

 見えちゃった……!

 見えちゃったんだ……!


 宝箱の中を見たあと、ふと顔をあげると……そこには、バッチリとあったんだ……!


 ふたりの……素っ裸の姿が……!


 み……見ようと思ったわけじゃないんだ……!

 こっ、これは事故……事故なんだっ……!


 い……いや……! 今はそんなことはどうでもいいっ……!

 いや、どうでもよくないけど……今はそれどころじゃないんだっ……!


 だって……だって……ボクは……見てしまったんだ……!



 マニーの股間には……なにも付いていないのを……!!



 男の子だったら当然のように付いているものが、なかったんだ……!

 むしろウサギと同じで、何もっ……!


 う……ウサギと同じっ……!?

 ま……まさかまさかまさかまさかまさか……!


 ま……マニーって……、



 マニーって、女の子だったのっ……!?!?



「急に逃げ出したりして……一体なにがあったんだ、アンノウン?」



 後ろからポンと肩を叩かれて、ボクは叫び声をあげそうになった。


 まっ……まずい……!

 こっ……このままじゃ……怪しまれる……!


 なっ……なんとかここは、取り繕わないと……!



「もっ……もう大丈夫、ちょっとびっくりしただけだから」



 ボクは正気を装い、無理して立ち上がる。

 自分でも驚くほど、声と身体が震えていた。



「本当にどうしたというんだ。宝箱のなかに、キミの恥ずかしい秘密でも入っていたのかい?」



 冗談めかして言うマニー。

 普段だったら笑いとばしてるところなんだけど、いまのボクは彼……いや彼女と目を合わすこともできずにいる。



「う……うぅん……そんなところなんだけど……。正確には、宝箱の中じゃなくて……もっと言うと、ボクの秘密でもないんだけどね……」



 しどろもどろなボクに、マニーとウサギは揃ってキョトンとしていた。


 それからちょっと休んで落ち着いたところで、宝箱を開けてみたんだけど……鍵も罠もかかっておらず、簡単に開いた。


 中身は、ボクが透視していたとおり毛糸の帽子。

 ウサギみたいな長い耳が、ぴょこんと飛び出している可愛いらしいやつだ。


 【ウサ耳毛糸帽】

  戦闘力+1

  敏捷+2

  魅力+2



「これは俺やアンノウンが持っていてもしょうがないな。レディにこそふさわしい」



 マニーはそう言うなり、ウサ耳帽をウサギに被せてあげていた。


 いつもだったらキザだなぁと思うところなんだけど……真実を知ってしまったボクは、なんだかほっこりしてしまう。


 だって……ハタから見てると仲良し姉妹みたいなんだもん……!

 美人で積極的な姉、地味で大人しい妹……そんなカンジで、なんだかとっても絵になってるんだ……!


 しかし、ウサギはマニーが女の子だと知らないので、身体をカチコチにして緊張している。



「ふふ、そんなに怯えないで、かわいいウサちゃん」



 マニーは頬に手を当ててリラックスさせようとしたんだけど、ウサギは脱兎のごとく逃げ出し、ピャッとボクの背中に隠れてしまった。



  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 それからボクたちは、さらに先へと進んだ。


 先行したクラスメイトたちがぜんぶ倒しちゃったのか、モンスターと遭遇することもなく、楽に登り階段まで行くことができた。


 ボクら3人は階段を駆けあがり、ついに3階へとたどり着く。

 到達のスタンプをオジサンに押してもらったところで、鐘の音を聞いた。


 この『太陽の塔』では、8時、12時、16時、20時の4回、鐘が鳴るんだ。

 前に聞いたのは12時の鐘だったから……いまは16時か。


 ちょうど夕方だし、お昼に食べたゴハンのBuff(バフ)効果も切れることだし、今日はここまでにすることにした。


 手に入れた戦利品は、こんなところだ。



 【ゴブリンロワーの胃石】10個

  ゴブリンロワーのドロップアイテム。

  あとで換金しよう。


 【鶏モモ肉】1個

 【鶏卵】4個

  レイジングチキンのドロップアイテム。

  うち鶏モモ肉1個と、鶏卵2個をお昼の親子丼の材料に使った。

  残っているのは鶏卵2個だ。


 【グレムリンロワーの爪】8個

 【グレムリンロワーの耳】1個

  グレムリンロワーのドロップアイテム。ウサギが拾っておいてくれたようだ。

  ちなみに耳のほうは少しだけレア。あとで換金しよう。


 【レイジングブルの爪】1個

 【牛バラ肉】2個

 【牛乳】1個

  レイジングブルのドロップアイテム。これもウサギが拾っておいてくれたようだ。

  爪は換金するとして、牛肉と牛乳は……そうだ、晩ゴハンに使おう……!

  ちなみに牛乳は風船みたいな薄皮の中に入っていて、ナイフで切って取り出す。


 【ウサ耳毛糸帽】1個

  宝箱にあったアイテム。

  ウサギが装備中。



 うん……!

 初めての冒険にしては、上出来なんじゃないかな……!


 それからボクらはエレベーターに乗って、1階まで戻る。

 生まれて初めて乗ったエレベーターは、なんだか変なカンジだった。


 ゴトゴト揺れながら沈んでいくのが、胃がせりあがってくるような感覚でちょっと気持ち悪い。

 ウサギは下に着くまでのあいだずっと、ボクの腕にしがみついていた。


 塔を出ると、オレンジ色に染まった世界が迎えてくれる。

 いまボクらの頭上にある、塔の太陽が傾いて街は夕暮れに変わっていたんだ。


 あたたかい色に縁取られた、建物や人のシルエットが長く伸びていて……なんだか巨人の影絵みたい。


 ニセモノの夕陽なのに、作り出している光景はなんだか幻想的。

 ホンモノの夕陽はもっとキレイなんだろうけど、これはこれで悪くない。


 ウサギはすっかり見とれてしまい、風景を絵に描きたそうにしていたのでボクは、



「描いてていいよ、そのあいだに戦利品を換金してくるから」



 と言ってあげた。


 塔の入口の階段で座り込み、スケッチをはじめるウサギ。

 隣に座って、保護者のように見つめるマニー。


 ハタから見るとその姿は、やっぱり姉妹っぽかった。


 そんなふたりを横目に、近くにある露天に戦利品を持ち込んでみたんだけど……なんと、ぜんぶで8千(エンダー)にもなったんだ……!


 ボクにとっては生まれて初めての、冒険での稼ぎ。

 しかもずっと無一文だったところに、こんな大金が転がり込んできた……!


 つい気が大きくなりそうだったんだけど、よく考えたら半分はウサギのものなんだよね。


 ボクは腰の布袋に、8枚の『1,000(エンダー)紙幣』をしまい込むと、姉妹の元へと戻った。

■□■□パラメーター□■□■(現在の階数:3階)

挿絵(By みてみん)


□■□■スキルツリー■□■□


今回は割り振ったポイントはありません。

未使用ポイントが2あります。


括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。


●サイキック

 ニュートラル

  (1) LV1  … テレキネシス

  (1) LV2  … クロスレイ

  (1) LV3  … テレパシー

 選択:ライトサイド

  (0) LV1  … テレポート

  (0) LV2  … タイムストップ

  (0) LV3  … プリサイエンス

 選択:ダークサイド

  (0) LV1  … ダークチョーカー

  (0) LV2  … エナジードレイン

  (0) LV3  … マインドコントロール


●錬金術

 風錬

  (1) LV1  … 抽出

  (0) LV2  … 風薬

  (0) LV3  … 旋風

 火錬

  (1) LV1  … 変形

  (0) LV2  … 火薬

  (0) LV3  … 噴火

 地錬

  (1) LV1  … 隆起

  (0) LV2  … 地薬

  (0) LV3  … 地震

 水錬

  (1) LV1  … 陥没

  (0) LV2  … 水薬

  (0) LV3  … 奔流


●潜在能力

 必殺技

  (1) LV1  … 波動弾

  (1) LV2  … 烈蹴斬

  (1) LV3  … 龍昇撃

 選択:打撃必殺技

  (0) LV1  … xカウンター

  (0) LV2  … 爆裂拳

  (0) LV3  … 点穴

 選択:投げ必殺技

  (0) LV1  … 当て身投げ

  (0) LV2  … イズナ落とし

  (0) LV3  … 真空投げ


●料理

 見習い

  (1) LV1  … 下ごしらえ

  (1) LV2  … 焼く・炒める

  (1) LV3  … 茹でる・煮る

 コック

  (0) LV1  … 盛り付け

  (0) LV2  … 揚げる・漬ける

  (0) LV3  … 燻す・焙煎


●彩魔法

 灰

  (0) LV1  … フリントストーン

  (0) LV2  … プラシーボ

  (0) LV3  … ウイッシュ

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