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149 謎のターゲット

 ボク、マニー、サルの3人は、南門を入ってすぐに設置されている、階段状の木箱を登って屋根の上に立った。


 ここ2種目ほどひとりでこなしていたので、仲間がいるのはやはり心強い。

 ボクらの前には一面に、いろんな形の屋根が広がっていた。


 平べったいのや、三角や四角の……なかには竹ひごのような細い枝を組み合わせた丸い屋根なんてのもある。


 これも実際の街の屋根を再現しているのかなぁ……屋根に登ったことなんてほとんどないからわかんないや、なんて思いながら眺めまわしていると、大通りを挟んだ向こう側の屋根に、雷猿たちがいた。


 雷猿たちだけではない、盗賊ギルドやエクスプローラーズのメンバーまでもが勢揃い。

 9人がかりで、ボクらの第一関門を邪魔するつもりのようだ。


 ……と、いうか、狙いはボクだけのようだ。

 18の瞳は明らかに、このボクしか捉えていない。


 ボクは、マニーとサルにささやきかけた。



「……マニー、サル。スタートの合図があったら、ふたりで先行して。ボクはあとから離れてついていくから」



 ふたりはボクに何か考えがあるのだろうとふんで、何も言わずに頷き返してくれる。



『……アンノウンチームの準備ができたようです。それでは第三走者のアンノウンチーム、スタートしてください』



 オーロラのようにきらめくお姉さんの声。

 冷たい向かい風のような、観客のざわめきを押し返すようにしてマニーとサルが屋根を蹴った。


 ボクはまだスタートラインを出ていないというのに、びゅんびゅん石が飛んでくる。


 でも、慌てちゃだめだ。

 妨害者の狙いがボクひとりなんだったら、なるべくマニーとサルから離れて行動しないと、ふたりを巻き込んでしまう。


 ボクは最小限の身体の動きで石をかわす。ちょっと重たいけど、なんとかなりそうだ。

 それに、耳を塞がれているわけじゃないから、飛んでくる音さえ『ドルフィン』のスキルで拾えれば、見ていなくても回避できそうだ。


 ボクはスタート地点の屋根の上でステップを踏んで、飛び交う石から逃れる。

 それが観客たちには不思議な行動に映ったようだ。



「……あのガキ、なんでスタートしねぇんだ? ずっと石をかわしてやがるぞ?」



「わからねぇ! また何か考えがあるんだろうよ! それにしても……相変わらず、全然当たらねぇなぁ……!」



「なあ……あのガキ、どう見てもまっすぐ前を向いてるよなぁ……横から投げられる石をぜんぜん見てねえようだけど、なんでアレでよけられるんだ?」



「いや、いくらなんでも見ずによけるだなんて無理だろ! 横目で見てるに決まってんじゃねぇか!」



「……あっ!?」



 観客たちもボクに注目してたんだけど、そのうちのひとりがなにかに気づいたのか、立ち上がってボクの先を指さしたんだ。


 その先を目で追うと……ターゲットに向かって石を投げているマニーとサル。

 ふたりはボクがオトリになっているスキに、どんどん倒してくれているんだろう……と思ってたんだけど、違った。


 なんと……四角い板のようなターゲットは、まだひとつも倒れていなかったんだ……!


 ふたりの投石が下手で、的外れだったわけじゃない。

 妨害もされていないので、百発百中に近かったんだけど、命中するたびに、



 ……ガツンッ!



 って弾き返されていたんだ……!


 ボクだけではなく、観客たちもおかしさに気づいたのか、一様に騒ぎはじめる。



「……おいっ!? なんだありゃ!?」



「あのターゲット、いくら石が当たっても倒れねぇじゃねぇか!」



「ガキどもの投石が、へなちょこ過ぎるんだろ!?」



「いや、それにしたってビクともしねえだなんて、おかしいだろ!」



「そういえば……アンノウンチームが引いた『女神の選択』には、なんて書いてあったっけ……えーっと……」



 その言葉につられ、ボクも思い出そうとする。

 そして、同時にハモった。



「「「「「謎のターゲット、だっ!!!!!」」」」」



 まさか観客たちと息ピッタリに合唱するだなんて、この『森羅三猿チャレンジ』を始めた時は思いもしなかったけど……あ、今はそんなことはどうでもいいか。


 『謎のターゲット』の正体をさぐるべく、ボクは飛んできた石のひとつをキャッチし、オーバースローのモーションでターゲットを狙う。



 ……シュゥゥゥンッ!!



 マニーとサルの投石を、追い越すほどの勢いで放たれたその石は、



 ……ガスッ……!!



 乾いた音とともに、粉々に砕け散っていた。

 砕いたのではない……砕け散っていたんだ……!



「あああっ!? 見たか、今の!?」



「な……投げた石が砕けたぞっ!?」



「なのにターゲットはピクリともしてねぇ! 表面に少し傷が入っただけだ!」



「なんだありゃ!? あんな硬い木があんのかよ!?」



「いや……あれは木じゃねえっ!!」



「「「「「石だっ!!!!!」」」」」



 再び短いハーモニーを奏でながら、ボクは確信していた。

 観客たちもきっと、確信していたことだろう。


 アレは……木なんかじゃない……! 間違いなく石だっ! それも、かなり硬い……!


 そしてボクは、雷猿たちがボクしか狙わない理由を悟った。


 ボクがオトリになって、マニーとサルがフリーになったところで、慌てて彼らを狙う必要なんてない……!


 だって石のターゲットであることを、知っているから……!

 倒すことが不可能なターゲットだって、知っていたから……!


 よぉし……!

 こうなったら……なにがなんでも倒してやるぞっ!!


 でも、ただの石で、特別に強固な石を砕くとなると……技能(スキル)を駆使するしかないっ……!


 そう意識した途端、ボクの頭の中に電流が走った。

 『瞬間分析モーメント・アナライズ』……すべてを打破する智慧(ちえ)を導きだすスキル……!


 まず、投げる石……!

 なるべく固く、先が尖っている石を選ぶんだ……!


 ボクはここで初めて、迫ってくる石たちの方角を向く。

 目視した瞬間、


 ……シュウンッ!


 散弾のように広がりながら向かってきていた石たちが、氷結したように停止した。

 9つの石の形状と材質を瞬時に分析し、そのふたつのバランスが最も取れている石を導きだす。


 ……これだっ!


 軌道的にはハズレだったけど、ボクの用途的には大当たりだった石に手を伸ばし、手のひらにおさめた。


 次は、投げ方……!


 さっきみたいな、野球のピッチャーみたいな投げ方じゃダメだ。

 『暗器術』の『操具』スキルでも、最も威力のある投擲法を解放するしかないっ……!


 ボクは、曲げた中指を親指で押さえるハンドサインの形を作った。

 そして、その中指と親指で、石を挟み込む……!


 これは、『指弾』……!

 (つぶて)で人をも殺せるという、最も危険な暗殺術のひとつなんだ……!


 かなりの運動エネルギーがあるはずだから、これで倒すことくらいはできるはず……!

 だけど、そんなんじゃ、ボクの気持ちはおさまらない……!


 ボクはさらに分析を続行する。

 視線を戻し、ターゲットを睨みつけた。


 ……ブワァァァァ……!


 すると石版に、血管のようなものが浮かび上がる。


 アレは、あの石が持つ『経脈』……!

 気の流れを可視化したものだ……!


 武侠の世界では、すべてのものに『経脈』が存在すると考えられている。

 人体だけでなく、動物、植物……有機物は言うに及ばず、無機物まで……!


 その『経脈』を『点穴』によって刺激してやれば、指先ひとつで死活が可能……!

 不治の病を治すこともできれば、逆に、死に至らしめることも、それどころか、粉々に砕くことだってできるんだ……!


 そして……あのターゲットの『経脈』は……あそこだっ!!


 ……ビシュッ……!!


 ボクは中指を、引き絞った弓のように曲げると、鋭利な石を弾き放った。


 そして、最後のダメ押し……!

 一弾指の後、『テレキネシス』でさらに加速させるっ……!!



 ……キィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーンッ!!!



 石は音速を超え、耳をつんざくソニックブームを起こしながら、モノリスへと突き刺さった。

今はやりの追放モノを書いてみました!


★『駄犬』と呼ばれパーティも職場も追放されたオッサン、『金狼』となって勇者一族に牙を剥く!


https://ncode.syosetu.com/n2902ey/

※このすぐ下に、小説へのリンクがあります


追放されたオッサンが、冒険者として、商売人として、勇者一族を見返す話です!

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『駄犬』と呼ばれパーティも職場も追放されたオッサン、『金狼』となって勇者一族に牙を剥く!!
追放されたオッサンが、冒険者として、商売人として、勇者一族を見返す話です!


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