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139 オバケのアンノウン

関連小説の紹介 ※本作の最後に、小説へのリンクがあります。


★『歩くハーレム…キモいと陰口をたたかれるオッサンでしたが、ちょっと本気を出したらそう呼ばれるようになりました!』


https://ncode.syosetu.com/n5703ex/

 僕に瞬殺された盗賊ギルドのメンバーたちは、タヌキに化かされた村人みたいに納得いかない様子で退場していった。


 ボクが彼らにやったのは、『暗器術』をスキルを使った殺害……平たくいうと『暗殺』というやつだ。

 もちろん実際には殺していないけど、ボクが使っていたのが本物の短剣だったら頸動脈を掻っ切られて即死している。


 誰からも悟られることなく殺すから『暗殺』というんだけど、達人ともなると、殺害対象にすら自分が死んだことを悟らせないんだ。


 今回やられた盗賊ギルドのメンバーたちは、自分がやられたのに納得いってない様子だったから、ボクの『暗殺』はまずまずだったんだと思う。


 さて、次のターゲットはエクスプローラーズか……と思ったんだけど、不意にステータスウインドウが反応する。


 ボクは近くにあった木箱に身を隠しながら、ウインドウを開いてみた。

 レベルがひとつあがって29になっていて、さらに新しいスキルも増えているようだ。



●忍術

 隠形術

  (0) LV1  … 形無し

  (0) LV2  … 土遁・水遁・木遁

  (0) LV3  … 火遁・風遁・金遁



 『忍術』の『隠形術』……!

 忍者にとって欠かせない、身を隠すためのスキルだ……!


 いまの競技にはうってつけじゃないか……!

 さっそく取らせてもらおう……!


 えーっと……こんな街中で身を隠すのに使う術は、たしか『土遁』だったはずだから……


 ボクは『形無し』に1ポイントを振り、『土遁・水遁・木遁』に3ポイントを振った。

 一気に3ポイントはちょっと使いすぎのような気もするけど、これだけあればかなり強力な『隠形』となるはずだ……!


 さっそく試してみようと、立ち上がって忍者のように家の壁に張り付く。

 すると、背中をくっつけている壁の木目が、


 ……じわわわわ……。


 と音が聴こえてきそうなくらいに、ボクの身体に染み込んできた。


 並の忍者が壁に隠れる場合は、壁と同じ模様の布を被るんだけど、達人になるとそれが不要になるんだ……!

 これが、いきなり3ポイントも費やした理由ってわけ……!


 ボクは壁に背中をくっつけたまま、じりじりと移動をはじめる。

 すると、「ええっ!? あれ!?」と声が降ってきた。


 そっと顔を上げてみると、見張り台のお兄さんが何度も目をこすって、



「さっきまでいたはずなのに、消えた……!? ど、どこに行っちまったんだ……!?」



 コンタクトを落とした人みたいにキョロキョロしていた。


 それでボクは効果のほどを確信する。

 蜘蛛のように壁に沿って移動していると、同じように用心深く壁に張り付いているエクスプローラーズのメンバーと鉢合わせた。


 ボクが近づいていってるのに、気付く様子もない。

 彼らの目つきは鋭く、蟻の子一匹逃さない気迫であたりをジロジロしているけど、誰もボクには焦点が合わない。


 ちょっとイタズラ心が刺激されたのと、『隠形術』の威力のほどが知りたかったので、どのあたりで気付くか試してみることにする。


 彼らからは10メートルほどの距離。

 ボクはゆっくりとスタートを切った。


 9……8……7……。


 『遁走術』の『音無し』のスキルが効いているので、服が壁を擦る音どころか、地面の砂粒を踏む音すらしない。


 6……5……4……。


 ちょっとじれったくなったので、移動スピードをあげてみる。

 ササッと早歩きしてみても、彼らは虚空を追い求めることに夢中だ。


 3……2……1……。


 一瞬ボクのほうを見ることがあったけど、視線は突き抜けてその先に向いている。

 とうとう、鼻をつまめるほどの距離まで来てしまった。


 ……ここまで気づかれないと、なんだか透明人間にでもなったような気分だ。

 獲物を探すオオカミのような、彼らのコワモテすらも、なんだかユーモラスに見える。


 そんな彼らにボクのイタズラ心は、ついに限界まで膨れ上がってしまった。


 すぅ、と肺いっぱいに息を吸い込んだあと、



「……ばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーっ!!!」



 赤ちゃんをビックリさせるような大声で、『土遁』を解除……!


 鼻先ほどの距離に現れた子供に、大の大人たちは真冬の池に落ちたかのような、心肺停止の悲鳴をあげる。



「ひいいいいいいいいいーーーーーっ!?!?!?」



 そしてそれは、名画のような『叫び』へと続いた。



「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?!?!?!?」



 断末魔が、狭い裏路地で爆発。

 そのまま爆風に煽られるようにして、ひっくり返ってしまうエクスプローラーズの面々。



「えええええええーーーーーーーーーーっ!?!?」



 と頭上から信じられないような声。

 櫓の上にいる審判のお兄さんも、かなりビックリしたようだ。


 様子がわからない観客たちは、不穏さを感じてざわめきはじめる。



「……な、なんだ? 何が起こったんだ?」



「すげえ悲鳴が聞こえてきたぞ……!?」



「ああ、ただごとじゃねぇ悲鳴だった! なにかヤバいことでもあったのか!?」



「盗賊ギルドは退場してるし、俺たちの雷猿は、あんなみっともねぇ声を出さねぇから……エクスプローラーズのヤツらか?」



「声からするに、あのガキじゃねぇことだけは確かなようだが……」



「もしかして……またあのガキがなにかやったのか!?」



「いや、いくらなんでも、あんなへなちょこなガキ相手に、あそこまでビビるなんてありえねぇだろ!」



「だよなぁ。もしビビっちまったら、盗賊連中から一生笑いモンだろ!」



「あ! そうか! きっと雷猿がやってくれたんだ!」



「なるほど、それなら納得がいくぜ! 雷猿のあまりの強さに、エクスプローラーズのヤツら、ビビっちまったんだ!」



「さすが俺たちの雷猿だぜっ! いいぞーっ! 雷猿―っ!」



「その調子で、あのクソガキもビビらせてやってくれーっ!」



「そうそう! あのガキに同じことしたら、チビっちまうだろうよーっ!」



『……旗があがりました。アンノウンチームがエクスプローラーズを倒したようです』



 盛り上がっていた観客席は、お姉さんのアナウンスですっかり静まり返る。

 敗北の印をつけられたエクスプローラーズは、ボクの足元でまだ震えていた。



「ななっ、なっ、なんなんだ、なんだんだよオマエっ!?」



「きゅきゅっきゅっ、急に、急に現れるんじゃねぇよっ……!」



「この俺たちが気づかないなんて、ありえねぇっ! ゆっ、幽霊かよっ!?」



 彼らはすっかり青ざめ、本物のお化けみたいにボクを見上げていた。

 腰が抜けて動けない様子だったので、「うらめしや~」とやってあげると、



「ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?!?」



 先を争うようにして這い逃げていった。


 ……さぁて、残るは雷猿だ……!

 マニーのアドバイス通り、徹底的にやってやるっ……!


 決意を新たにしたボクは、風のように走りだし、風に紛れるようにして姿を消した。


 しかし、現場からはあまり離れないようにする。

 さっきの絶叫は雷猿たちも耳にしているハズだから、ここで待ち伏せていれば現れるはず……!


 ……しかし、いくら待っても現れなかった。


 おかしいなと思ったけど、こうしてじっとしていてもしょうがないと思い、こっちから探しに行くことにした。


 壁に張り付いて『木遁』を使えば、かなり大胆に行動できる。


 さらに『クロスレイ』のスキルを併用すれば、完璧……!

 たとえ物陰で待ち伏せしていても丸見えになるから、絶対に不意打ちを受けることはない……!


 そして思ったより早く、雷猿たちは見つかった。

 パッと見はぜんぜんわからない。ボクもスキルがなければ気づかなかったかもしれない。


 この路地のどこにでもある、壁沿いに放置された木箱……雷猿たちはそれを被って、亀のように移動していたんだ……!

□■□■スキルツリー■□■□


今回は『形無し』に1ポイント、『土遁・水遁・木遁』に3ポイントを割り振りました。

未使用ポイントが2あります。


括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。


●忍術

 遁走術

  (2) LV1  … 音無し

  (1) LV2  … 地降り傘

  (1) LV3  … 隔世走り

 隠形術

  (1) LV1  … 形無し

  (3) LV2  … 土遁・水遁・木遁

  (0) LV3  … 火遁・風遁・金遁

 暗器術

  (5) LV1  … 操具

  (1) LV2  … 埋伏

  (1) LV3  … 誂達

 房中術

  (0) LV1  … 口印

  (0) LV2  … 綺弄

  (0) LV3  … 淫紋

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