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134 投石合戦、今度こそ決着…!

関連小説の紹介 ※本作の最後に、小説へのリンクがあります。


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 ボクの目の前には、いくつもの修羅場をくぐり抜けてきたような、迫力たっぷりの大人たちがいる。


 こうして改めて見上げてみると、ボクよりかなり大きい……まるでレツみたい。

 いままで戦ってこれたのがウソみたいな身長差だ。


 筋骨隆々とした戦士とは違い、しなやかな筋肉のついた身体。

 鎧のような胸板に、よくしなりそうな腕、節くれだった手には、ビリヤードの4番ボールみたいな石が握られている。


 仕切り直しで近距離戦になり、遠くまで飛ばす必要がなくなったから、大きな石を選んでいるんだろう。

 こんな近くであんなでっかい石に当たったら、痛いだろうなぁ……。


 あの石たちは、みんなボクに向けられるに違いない。

 ムチのような腕から繰り出される石は、かなりのスピードが出るだろう。


 時速150キロと仮定して、いちばん近い相手との距離は5メートルほどだから……ボクに当たるまで、0.1秒ちょっと……!

 とはいえ投球モーションがあるので、かわすだけならそんなに難しくはなさそうだ。


 相手がひとりならそれでもいいんだけど……もし、ボクが飛び退いてかわすことを予想していて、時間差で投げられたらヤバいかもしれない。

 それに、こっちは石がなくて反撃の手段がないから、下手をするとずっと石をかわし続けることになる。


 ……なんだか、昔クラスでやった雪合戦を思い出すなぁ。

 ボクに飛んでくる雪玉だけ石が入ってるんだけど、最後はそれすらも面倒になって、直接石を投げられたんだよね。


 あの頃みたいに逃げ回っても、どうせ最後はダンゴムシになるだけ……だったら……立ち向かってやるっ……!


 ボクが決意したと同時に、



『全参加者、準備が整ったようです! それでは改めまして、第3競技、投石合戦……!』



 お姉さんの声が、降り注ぐ。

 全神経を集中すると、ナメクジが這うようなゆったりとしたものに変わり、耳に絡みついてくる。



『ス……タァ……トォ……でぇ……』



 フライング気味に大人たちの肩が動き、腕が振りかぶられた。

 地獄の鬼のような顔が、一斉にボクを捉える。


 普段だったら縮み上がっちゃいそうな、それはそれは恐ろしい形相。

 しかしボクは、眉間に寄るシワの数まで数えられそうなほどに、落ち着いていた。



 ……ゴオオオオオオオオオオオオ……!



 水の流れるような音が空気を震わせ、反響する。

 濁流の地下水路を歩いているかのような、そんな感覚。


 『ゾーン』だ……!

 しかも今回は、盗賊ギルドやエクスプローラーズ、そして雷猿たちの姿までもがハッキリと見える……!


 無限に広がる水面の上で、誰もが咆哮するような表情で、ボクに向かって石を投げようとしている途中だった。


 時間差はない……! まるで示し合わせたみたいに9人同時……!

 石の弾幕で、一気にカタをつけるつもりなんだ……!


 たぶん彼らからは、ボクがボーッと突っ立ってるように見えるんだろう。

 一斉攻撃を受けたことに、蜂の巣になってからようやく気付くんだと思っているんだろう。


 雷猿なんて3人とも、まだ投球モーションの途中だってのに顔がニヤけてる。

 タンコブとアザだらけになって、泣きべそをかいているボクを想像してるんだろう。


 ……だけど、そうはいかない……!

 だってボクは、以前のボクとは違うんだから……!



 ……ぶわっ……!



 ようやく石が、彼らの手元から離れた。

 水中で発射されたかのように、空気を押しのけながら直進してくる、9つの弾丸。


 ぬるぬると泳いで近くまで来てくれたので、そのなかで一番手前にあるやつを掴み取りにする。

 そのまま掌底のようなモーションで、突き返す。


 これは、『暗器』の投げ方だ。

 『暗器術』では振りかぶって投げたりはしない。


 達人ともなると、手をかざすくらいのさりげない動きだけで、時速300キロものスピードで投げつけることができるんだ。


 狙う相手はよりどりみどりだったけど、せっかくだから持ち主に返すことにした。

 飛んできたルートをなぞる伝書鳩のように、ご主人様の元へと帰っていく。


 それをあと、8回。

 両手を使って、右手と左手、それぞれ4球ずつ投げ返す。


 ボクにとってこれは、投石合戦なんかじゃなかった。

 雪玉しか飛んでこない雪合戦よりも簡単で……まるで工場の流れ作業のようだった。


 最後の石がコンベアに乗ったところで、時は動き出す。

 レーザーのような紫色の軌跡とともに、



 ……ガンッ!!



 乾いた音が9つ、ほぼ同時に響いた。


 鬼たちの額に、焼きごてを押されたかのような赤紫の跡がうまれる。

 しかしその顔は、まだ夢見ているかのようだった。


 その表情のまま、しかし、瞳だけは白く裏返しながら、



 ……ドサンッ!!



 これまた息のあったタイミングで、大の字に倒れた。

 少しして、



 ……カン! コロン、コロン……!



 跳ね返った石たちが、足元に転がる。

 そのうちのひとつが、ボクの靴の爪先にコツンと当たった。


 死屍累々とノビている大人たちに向かって、ボクは心の中で謝る。


 ……ゴメンね、と……。


 また試合を無効にさせられるとイヤだったから、頭を狙わせてもらったんだ。

 みんな気絶させちゃえば、さすがにカジノ側もやり直しをしないだろうと思って。


 ……それにしても静かだ。

 もう『ゾーン』は終わっているはずなのに、聞こえてくるのは足元からのうめき声のみだ。


 まわりには石がヒットしたかどうか判定する審判が何人もいるのに、誰もヒットの旗をあげようとはしなかった。

 まるで悪魔から蝋人形にされたかのように、固まっちゃってる。



「……あの、当たったんだけど……」



 とボクが問い合わせてようやくハッとなり、一斉にグレーの旗が掲げられた。



『うっぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!?!?』



 突如、両耳の鼓膜を突き抜けていくような絶叫が轟き、ボクは驚きのあまり垂直に飛び上がってしまう。



『驚いちゃダメだって、驚いちゃダメだって、驚いちゃダメだって……! あの子のすることに驚いちゃダメだって言われてるのにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーっ!! うっきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーっ!?!? もう!? なんなのなんなのなんなのぉ!? なんなのっ、あの子ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーっ!?!?!?!?』



 狂ったような裏声に、何事かとステージを見上げると……頭をかきむしり、地団駄を踏む実況のお姉さんがいた。



『なんで、なんで、なんでぇ!? なになにっ!? 今度はなにをやったっていうのぉぉぉぉーっ!! 石を投げられてたハズなのに、なんで一瞬で投げ返したりしてんのよぉーっ!! しかも目にも止まらぬ速さでぇぇぇぇぇぇぇーーーーーっ!! きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?!?』



 お、お姉さんが、壊れた……!?



『あの子、マジでスゴいっ! スゴすぎるよっ! 雷猿なんてもう、メじゃないくらいに! なのになんでガマンしなくちゃいけないのぉ!? なんでスゴいのをスゴいって驚いちゃいけないのぉっ!? もう、やだやだやだやだ、やだぁーっ! あの子……アンノウンくんのこと、応援したぁーいっ! ……あっ!? アンノウンくんがこっち見てる!? アンノウンくん、アンノウンくぅーんっ!!!』



 お姉さんはボクと目が合うと、両手をぶんぶん振ってきた。


 彼女のあまりの変わりように、ボクは唖然とするばかり。


 でも手を振ってくれているから、振り返してあげよう……と思った途端、カジノのスタッフがステージに飛び込んできて、お姉さんを羽交い締めにしてどこかに引きずっていってしまった。

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