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133 一方的な物言い

関連小説の紹介 ※本作の最後に、小説へのリンクがあります。


★『…マジで消すよ? 俺の愧術がチートすぎて、クラスのヤツらを一方的に縛ったり消したりします!』


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女の子を緊縛して奴隷にする、嫌なヤツを消す、お金を出す…これ全て、異世界最強の、愧術…!



★『ゲーマーおっさん、ゴーレムに引きこもる…でもソレ、実はスーパーロボットですよ!?』


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引きこもれば引きこもるほど、チヤホヤされる…チートゴーレムのお話!

 実況のお姉さんが、壊れたみたいに『えっえっ』を連発するなか、ボクは三分ほど前に出発した南門に戻る。

 観客席の大人たちは皆、定員オーバーの船に乗ってるみたいにスタンド側に押し寄せていた。


 まるで航海中、海の神様と遭遇したかのように、口々に指さして叫んでいる。



「おっ……おい、見ろよ! エクスプローラーズのヤツらの身体……! どいつもこいつも、胸に紫色の汁が飛び散ってるぞ……!」



「まるで血みてぇになってるじゃねぇか……!」



「ってことは、本当に……あのガキが投げた石が当たったってのか!?」



「おい……! 向かい側の客席のヤツらも、同じように叫んでやがるぞ……!」



「ってことは……東門の盗賊ギルドのヤツらに投げた石も、当たったってわけか!?」



「ま、まさか……まさかそんなっ……!?」



「もしかして、北門にいる雷猿にも……!?」



「あっ……! あああーっ!? やっぱりそうだ! あのガキ、櫓の上から石を投げて、本当に全チームに当てちまったんだ!!」



「実況の姉ちゃんの慌てっぷり……てっきり何かの間違いかと思ってたんだが、マジだったのかよっ!?」



「そっ、そんなバカなっ!? ガキの立ってた櫓から、他チームのいる門までどれだけ距離があると思ってんだよっ!?」



「しかもそこまで飛ばすだけじゃなくて、狙って当てるだなんて……!」



「い、いや……! たくさん投げてりゃ、ひとつくらいは当たるだろ……!」



「たくさん投げてたか!? あのガキ、それぞれの方角に1回しか投げてなかったぞ!?」



「そ、その1回でたくさん投げてたかもしれねぇじゃねぇか!」



「いや、ちょっと待て……! あのガキ……スタート前の準備の時、石の入った袋をひとつしか取らなかったよな!?」



「そうだ……! あの袋には、ひとつにつき9個、石が入ってるんだ……!」



「ってことは……まさか……あのガキ……あの距離で……」



「「「ひゃっ、百発百中ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?!?!?!?」」」



 東西南北にいた大人たちが、示し合わせたような絶叫のハーモニーを奏でる。


 その頃、ボクはのんびりとスタート地点に戻っていた。

 そこにはボクが出発した時となにひとつ変わらない立ち位置で、マニーとサルが突っ立っていた。


 ふたりとも、間違い探しみたいに同じポーズで固まっている。



「あ……アンノウン……まさか……」



「狙って、やったんッスか……」



「遠投で、何百メートルも離れてるヤツに……」



「石を当てるだなんて……」



「それも、一発で……」



 ボクは「うん! ちょっと自信があったから、試してみたんだ!」と頷き返す。

 するとふたりは「ハハハ……そう……」と乾いた笑いを漏らした。


 ボクの自信、それは……『暗器』の『操具』スキル……!


 『操具』スキルは『暗器』……いわば隠し武器をうまく操るスキルなんだ。

 スキルポイントが多いほど、それだけ暗器の扱いに長けるようになる。


 たとえば袖に忍ばせている小刀とか、首を締めるためのワイヤーとかで、敵自身にもわからないほどの一瞬で急所を攻撃できるようになるんだ。


 あとは手裏剣などの投擲武器もうまく投げられるようになる。

 狙った場所に自由自在に当てられるようになるんだけど、さすがに今回のような何百メートルも離れている敵に当てるには『暗器』スキルだけじゃムリだった。


 だからボクは『イーグル』のスキルでまず位置を把握し、『瞬間分析モーメント・アナライズ』で弾道計算。

 その後、50ある筋力で遠投した。


 ようは、みっつのスキルの併せ技ってわけ。

 自信はあったけど、でも……こうもうまくいくとは思わなかった……!


 第3競技を数分で終えられた嬉しさもあわさって、ボクはウキウキしていた。

 しかし、それもすぐに終わりを告げる。



『あ、あのー、え、えーっと……ただいまの第3競技……協議の結果、やりなおしということになりました……!』



 言ってるお姉さん自身も、理不尽さを感じているようなその声。

 ボクはせっかくの気持ちに水をさされ、ガクッと首を折った。


 喜びと怒りが入り交じった、玉虫色の叫喚がおこる。



「そ……そうだ! やりなおせ、やりなおせーっ!」



「あ……ああっ! そうだそうだ! あんなデタラメな決着、あってたまるかぁーっ!」



「まったくだ! あのガキは石を適当に投げて、偶然当たっただけだ! そんなインチキ同然のやり方で1位になるだなんて、許されねぇんだよぉーっ!」



「そうだそうだ! 雷猿の本気が出てねぇ競技なんて、無効にして当然だっ!」



「いや、おかしいだろう! なんでやりなおしなんだよっ!?」



「あのガキは石をひとつも外さずに当ててみせたんだ! どう見たって偶然じゃねぇだろう!?」



「……う、うるせえっ! てめえら、どうせあのガキに賭けたんだろう!? やりなおしになったらあのガキが最下位になるのは目に見えてる! だからそうやってかばってるんだろう!?」



「そうだよ、俺はあのガキが1位になるのに賭けた! だがこの判定は明らかにおかしいだろう!?」



「あのガキは何の不正もしちゃいねぇ! それなのにやりなおしだなんて、このカジノがガキを勝たせねぇようにしてるとしか思えねぇ! だからかばってやってるんだ!」



「お……お前らも盗賊だろう!? だったらなんで、盗賊でもなんでもねぇガキの味方をするんだ!?」



「盗賊だろうが何だろうが関係ねぇよ! 単純に、あのガキはすげえガキなんだ! いままでさんざん見てきて、偶然じゃねえってことはもうハッキリしてるだろう!?」



「ああ、俺もそう思う! あのガキは、雷猿なんか足元にも及ばねぇくれぇ、すげえヤツだ……! だから俺も応援するっ!」



「こ、こいつら……! 俺たちの雷猿のことを、あんなクソガキ以下だってぬかしやがった……!」



「かまうこたぁねぇ、やっちまえっ!」



 客席のあちこちで小競り合いが起こる。

 その場にいるスタッフが止めようとしたが、数が多すぎて騒動は一向におさまる気配がない。


 沈静化のため、とうとう衛兵の格好をしたスタッフまでもが投入される。

 場内は混迷をきわめ、競技の再開までしばらく時間がかかってしまった。



 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 第3競技、投石合戦の『やりなおし』にあたって、いくつかのルール変更がなされた。


 スタート地点が街の四方にある門から、十字路にある門の中からとなった。

 相手がすぐ近くにいる状態で開始というわけだ。


 あとは屋根に登るのは禁止、放物線を描いて当たった石は無効、目視できない距離から投げられた石は無効、というルールが加えられる。


 そのあからさまな変更からもわかるように、完全にボクを潰しに来たようだ。


 そしてボクはいま、街の中央にある十字路の真ん中……広場のような場所にいる。


 隠れるためのものはなにひとつない。

 左手側にはエクスプローラーズのメンバー3人、右手側には盗賊ギルドのメンバー3人……そして決闘のように正面に相対するは、雷猿の3人……!


 雷猿は揃いも揃って、鬼瓦みたいな形相でボクを睨みつけている。

 いや、雷猿だけじゃない……エクスプローラーズも盗賊ギルドも、あきらかにボクのほうを意識しているようだ。


 ……ムリもないか、開始からたった三分で、見えないところからやられちゃったんだから。

 盗賊が得意とする不意打ちをこんな子供にやられたのが、悔しくてしょうがないんだろう。


 みんな手にしっかりと石を握りしめている。

 きっと開始と同時にこっちをめがけて、一斉に石を投げるつもりなんだろう。


 ……そしてボクのほうはというと、石を持っていない。

 前の競技で投げつくしちゃったうえに、石の補充をカジノ側から認めてもらえなかったからだ。


 だからボクは……9人の大人たちを、逃げることも隠れることもできない場所で、しかも反撃する武器もなく、いちどに相手しなくちゃならないんだ……!

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