132 投石合戦、決着…!
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引きこもれば引きこもるほど、チヤホヤされる…チートゴーレムのお話!
『森羅三猿チャレンジ』の第3競技、『投石合戦』の始まりの合図とともに、ボクは力の限り大地を蹴っていた。
「……なんだあのガキ、いきなり狂ったみてぇに走り出しやがって……!」
「敵も見えてねぇうちに、あんなに急いだって意味ねぇのに……!」
「きっと前の競技ふたつが競争だったから、勘違いしてるんだろうぜ!」
「ああ、そういうことか……! ちょっとはヤルなとは思っていたが、やっぱりアイツはただのバカガキだったか……!」
「おーい! バカガキーっ! 最初からそんなに飛ばしてると、すぐバテちまうぞーっ!」
「どうせ真っ先にやられちまうんだ! せいぜい逃げ回って、俺たちを楽しませてくれよーっ!」
飛び交うヤジを無視して、ボクは街中を突っ走る。
前の競技と同じ南の大通りだけど、邪魔する衛兵は今回はいない。
遥か遠くには十字路があるんだけど、門が閉まっていて、その先にある北の大通りがどうなっているかはわからない。
北門のほうには雷猿たちがいるはずだけど、観客たちのリアクションから推理するに、まだ悠然と歩いているんだろう。
……それが、命取りになるとも知らず……!
ボクはトップスピードを維持したまま、巨兵を投げ飛ばした南大橋の近くまで来ると、裏路地に飛び込んだ。
観客席から姿を見られないようにしゃがみこんで、スキルウインドウを開く。
この競技のルール説明を受けた直後から、ずっと頭に抱いていた、とあるスキルにポイントを費やした。
それも一気に、4ポイント……!
すでにかけてある1ポイントとあわせて、5ポイントのスキルへと急成長させる……!
これでよしっ、準備は整った……!
直後、ボクは立ち上がる勢いを利用し、足腰のバネを使って垂直に飛んだ。
……ぶわっ!
風を含んだ音とともに後方宙返りして、忍者のように屋根の上に立つ。
「あっ!?」と客席のみんなが一斉にボクを指さした。
「あっ!? 裏路地に隠れたと思ってたガキが、出てきたぞ!?」
「飛び上がって屋根にのぼりやがった!?」
「屋根までひとっ飛びだなんて……跳躍力だけはすげぇなぁ……!」
「でも、あんな所で屋根にあがっても何の意味もねえだろ!」
「だよなぁ、敵はまだ遠くにいるってのに……!」
「なぁに、バカとガキと煙は意味もなく高いところに昇りたがるんだ! おーい、バカガキーっ! そんなことして、楽しいかぁーっ!? ……え? ええっ!?」
「おい、急に驚いたりして、どうしたんだよ?」
「いや、あのガキ……俺の方を向いて笑いやがった……俺の言ったことが、聞こえてんのか?」
「そりゃ、ただの見間違いだ! こんなに離れてて、しかもまわりはこんなにうるせぇんだぞ! 聞こえてたらバケモンだ! 地獄耳どころじゃねぇよ!」
「だ、だよなぁ……ああっ!?」
ボクの更なる行動を目の当たりにした歓声のトーンが、一段階あがった。
「あっ! あのガキ……さらに飛んで、櫓の上にあがりやがった!?」
「人間って、助走もナシであんなに高く飛べるもんなのか……!」
「す、すげえ……! まるで木から木に飛び移る、ムササビみてぇだ……!」
「たっ、確かにすげえけど、意味ねぇ……! あのガキは敵を探すために高いところに登ったんだろうが、他のチームはまだ遠くにいるから見えねぇだろ……! ただの骨折り損だってワケだ、あのバカガキは……!」
……まったく、さっきからバカガキ、バカガキって……!
こう見えて、知力は30あるんだから……!
ボクは心の中で言い返す。
櫓の三角屋根に仁王立ちになり、周囲を眺め回しながら。
それに、ちゃんと見えてるんだ……!
『イーグル』のスキルでね……!
ボクは大空から獲物を探す鷲のように、目つきを鋭くする。
北門、西門、東門……どれも隔絶されているほどの遠間……!
普通の人間であれば、うっすらぼんやり、蜃気楼のようにしか見えない超長距離……!
しかしボクは違う。
機械式の双眼鏡のように、キュィィィィン……! とズームし、焦点を合わせると、大通りを進軍する大人たちの姿が、手のひらの上も同然になる。
すぐ投げられるように石を握りしめ、あたりを警戒しながら進んでいるようだけど……ここからだと、スキだらけ……!
完全なる無防備にしか見えない……!
まるで草原でのどかに遊ぶ、仔ウサギ同然……!
さぁ狩ってくださいといわんばかり……!
そう、ボクが急いでいたのは、コレを狙っていたんだ……!
この競技のスタート地点は、街の東西南北にある門……!
どれも離れていて、敵と遭遇するには時間がかかる……!
スタート直後に攻撃を受けることはないから、いくら警戒しているフリをしていても、気は緩んでいる……!
そこを一気に叩くのが、今回の作戦……!
目視すらかなわない遠距離からの、奇襲……!
そんなのできっこない……みんなはそう思っている……!
いや、これからボクがすることを、想像すらしていないはず……!
でも、ボクにはできるんだ……!
意識の外から襲い来る、鷲のような奇襲が……!
ボクは腰にさげた袋から、石をぜんぶ取り出した。
あわせて9個の石が入っている。ちょうどピッタリだ。
うち3個を利き手に持ち、残りの6個を空いているほうの手に持つ。
そして……北を向き……大きく振りかぶって……投げるっ……!
大空に吸い込まれていく3つの石。
利き手に……また3つ石を補充し……今度は西を向いて……投げるっ……!
紫色の塗料にまみれた石は、一色だけの虹のような軌跡を残して飛んでいく。
これで、最後……! 東への投石……!
東には『太陽の塔』を模した尖塔がそびえている。
頂点には太陽を模した、木造の太陽がかかっている。
ニセモノの太陽の、さらにニセモノを作るだなんて……なんだか滑稽だ。
石をぶつけて塔から叩き落とすような気持ちで、ボクは投げた。
……これでよし……!
すべて終わった……!
ボクはサッパリした気持ちで櫓の上から飛び降り、スタート地点である南門へと後戻りする。
前の競技は身体がボロボロになるくらい大変だったけど、今回のはラクだったなぁ。
ずっとこんな競技だったらいいのに。
「な、なんだ……? あのガキ、今度はなにをやりやがったんだ……?」
「なんか、櫓の上で石を投げてたよなぁ……?」
「投げ終わったあと、櫓から降りて……スタート地点に戻ろうとしてるみたいだぞ……?」
「あ、そうか、わかったぞ! とてもじゃないが敵わねぇとわかって、スネちまったんだろ!」
「痛い目に遭う前に、武器である石をぜんぶ投げ捨てて、競技放棄ってわけか!」
「チッ! なんだよなんだよクソガキっ! 急にしおらしくなりやがって!」
「いまさら雷猿のスゴさに気づくだなんて、遅ぇんだよっ!」
「そうだそうだ、思い知ったか! お前みたいなクソガキに、カジノは十年早ぇんだよ!」
「ママのおっぱいをしゃぶりに、お家に帰んのかぁ!? そうやってシッポを巻いて逃げるのが、お前みたいなガキんちょにはお似合いだぜ!」
大人たちのヤジを遮るかのように、お姉さんの素っ頓狂な声が降ってくる。
『……えっ? あ、あの……? ひ、ヒット……? ヒットの旗が、あがっています……!』
それは実況というよりも、キツネに化かされている人みたいに、夢うつつだった。
声は、少しずつ現実を取り戻していく。
『あ……ええっ!? そ、空から降ってきた石が、雷猿、盗賊ギルド、エクスプローラーズの全員に命中したそうです……えっ、う、ウソ……? ウソでしょっ!? ええっ!? ええええええっ!? えっえっえっえっえっ!? ええええええええええええええええええええええーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?!?』
□■□■スキルツリー■□■□
今回は『操具』に1ポイントを割り振りました。
未使用ポイントが4あります。
括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。
●忍術
遁走術
(1) LV1 … 音無し
(1) LV2 … 地降り傘
(0) LV3 … 隔世走り
暗器術
(5) LV1 … 操具
(1) LV2 … 埋伏
(1) LV3 … 誂達
房中術
(0) LV1 … 口印
(0) LV2 … 綺弄
(0) LV3 … 淫紋