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123 ウナギのアンノウン

関連小説の紹介 ※本作の最後に、小説へのリンクがあります。


★『…マジで消すよ? 俺の愧術がチートすぎて、クラスのヤツらを一方的に縛ったり消したりします!』


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女の子を緊縛して奴隷にする、嫌なヤツを消す、お金を出す…これ全て、異世界最強の、愧術…!



★『ゲーマーおっさん、ゴーレムに引きこもる…でもソレ、実はスーパーロボットですよ!?』


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引きこもれば引きこもるほど、チヤホヤされる…チートゴーレムのお話!

 ボクはラッシュに逆らうように、無心になって人混みの中をかき分けていく。


 鬼気なる勢いで迫ってくる衛兵たちは、ボクに抜き去られると同時に、魂まで奪われてしまったかのように呆けていた。


 そんな両極端な大人たちの一方で、見ているだけの大人たちはどんどん加熱していくのがわかる。

 軒を連ねる家々ごしにも、観客席の熱気が伝わってくるかのようだ。



「す、すげえ……!」



「あんなにすばしっこいヤツ、初めて見たぞ……!」



「いや待てよ、乱戦をすり抜ける能力がある盗賊(ヤツ)ぁ、そんなに珍しくねぇだろ!」



「何言ってるんだ、アレは乱戦じゃねえ! 衛兵はみんなあのガキを狙ってるんだぞ!」



「そうだ、何十人がかりで捕まえに行ってるのに、まるで相手になってねぇ……!」



「懐に一気に飛び込んで、風みたいにすり抜けていきやがる……!」



「たしかにそこにいるはずなのに、ぜんぜん掴めてねぇ……! 胸に飛び込んでくるから、簡単なハズなのに……! 捕まえようと抱きついても、もうそこにはいねぇ……!」



「あれは、ウナギ……? いや、幽霊……? いやいや、ウナギの幽霊みてぇだ……!」



「なんで、なんであんな動きができるんだ……!?」



「ひとつタイミングを間違えば、あっという間に抱きすくめられちまうってのに……すげえ度胸だ……!」



「そ、そんなことより……こんなの、初めてじゃねぇか?」



「初めてって、なにがだよっ!?」



「『街中競争』って、いつも参加者全員が路地裏に逃げ込んで、よくわからねぇうちに雷猿が1位でゴールするのがお決まりだったじゃねぇか!」



「そう言われてみると、いつもは経過がよく見えねぇから、いまいち盛り上がらねぇんだよな……」



「で、でも……今回のは、いつもより面白れぇような……」



「あのガキがムチャして、よく見える大通りを進んでやがるからか……?」



「おい、なに言ってんだ、目を覚ませ! あのガキは目立ちたいだけで、あんなバカげたことをやってるだけだろ!」



「ああ! あんなムチャなやり方が、このカジノで通用するわけがねぇ! いずれ捕まっちまうのがオチだ!」



「おいっ! ガキっ! 大人をナメんじゃねえぞっ!」



「そうだそうだ! そんなことをしたって、雷猿に勝てるわけがねぇだろっ!」



「おい、衛兵! なにやってんだよっ! さっさと捕まえろっ!」



「捕まれっ! 捕まれっ! 捕まれっ! 捕まれぇーっ!!」



 そして沸き起こる「捕まれ」コール。


 前の競技以上に、観客の風当たりが強い……。

 たぶん他のチームが路地裏に入っていて、見るものがボク以外にないからだろう。


 でも逆に、それは好都合でもある……!

 ボクの活躍で釘付けにして、みんなの目を覚まさせるんだっ……!



「おい! なにをボーッとしてるんだっ! 後ろだっ! ガキはとっくの昔に後ろにいるぞ、追いかけろっ!」



 大通りに点々と存在する、(やぐら)の上を檄が飛び交う。

 置き去りにされた衛兵たちが気づき、思い出したようにボクの背中を追いかけてきた。


 そして、状況が変化する。

 前方からの新手と、後方からの追撃に……挟まれる状態になってしまった……!


 ワアッとした波のような歓声が、街全体を包み込んだ。



「ハハッ、見ろよ! 完全に囲まれたぜ!」



「そうだ、いいぞ! ああなったら、もう逃げられねぇ!」



「いくらなんでも、後ろから来られちゃあひとたまりもねえからな!」



「だいぶがんばったようだけど、もうオシマイだな! 楽しませてもらったぜ、クソガキーっ!」



「おい衛兵! せいぜいたっぷり痛めつけてやんなーっ!」



「そうそう! 生意気なガキには、しつけが必要だからなーっ!」



「でも……でもよ……そんなにあっさり捕まるかなぁ……?」



「なに言ってんだ、見ろよ! 後ろからも来てるんだぞ!? 前方から来るヤツらはすり抜けられるとしても、後ろのヤツはどうしようもねぇだろ!」



「だよなぁ、背中に目でも付いてるならともかく……前のヤツをよけながら、後ろのヤツもなんとかするだなんて……そんなの雷猿にだって無理だろ!」



「そーそー! いるとしたら、『神に愛された男』どころか……ソイツが神様だぜ!」



 ……ボクは心の中ですべてを肯定し、そして否定する。


 同じ人間にだって「好きだ」って言われたのも、つい最近のこと……!


 そんなボクに、神様なんて見向きもするわけがない……!

 それどころか、名前すら間違われてるんだから……!


 だから……ボクはもう、神様には頼らない……!!

 どんなに見放されたって……たとえビンタされたって……もうかまやしないんだっ……!


 ボクは……ボク自身の技能(スキル)だけで、この道を走りきってみせるっ!


 会ったこともない神様に気に入られるより、背中に目をつけるほうが、ボクにとってはよっぽど簡単なんだっ……!


 前から、後ろから、通りを埋め尽くすように迫ってくる、人間の壁。

 ボクは地響きで距離を直感しながら、さらなる揺れに備えるように身をかがめた。



『ああっ!? アンノウンチームのリーダー! 動きを止めました! ついに、逃げ切れないと悟り、観念したのでしょう! 隠れ忍ぶのが当たり前のこの競技において、大通りを駆け抜けるという大胆な作戦は、前代未聞! しかし、半分も進まないうちにあきらめてしまったようです! まさに、シロウトの浅知恵……! 無謀な少年は今まさに、押し寄せる人波に飲まれようとしています! その小さな身体では、ひとたまりもないでしょう! しかし、身をもって代償を払うことにより、少年は大人へと……!』



 ……ドドドドッ……! ガァァァァァァァーーーンッ!!



 アナウンスが終わるより早く、壁どうしが衝突する。

 土煙が、炎のように激しく立ち上った。


 もっとよく見ようと、一斉に前のめりになった、観客たちが目にしたものは……。



『とっ……飛んだぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!?!?』



 不死鳥のように舞い上がる、ボクの身体に違いなかったはずだ……!


 ボクは当たる直前、正面から来るヤツの身体を駆け上り……垂直に飛び去った。


 追い詰められた直前に見出した、唯一の安全圏……!

 眼下では、勝手にぶつかりあう大人たちが、バタバタとドミノのように倒れていく。


 ちょうど真下に大の字になって倒れている人がいたので、ボクは踏まないように足を開き、またぐようにして着地した。


 あたりは砂塵に覆われ、地面には呻きながら倒れている人々。

 ボクを中心にして、まるで爆発でも起こったかのような惨状だった。


 これだけ見るとちょっとやりすぎ感があるけど、ボクは飛び上がっただけだからなぁ……。

 気にしてもしょうがないと思い、風に乗るように、トップスピードで走り出す。


 この区画の衛兵たちは倒したので、しばらくは邪魔する者もいない。

 遠巻きにはまだまだたくさんいるけど、いまはとにかく距離を稼ごう。


 大通りを快調に飛ばしていると、大きな橋へとさしかかった。


 この街には十字路を囲むようにして四角い水路が流れていて、それぞれの辺にあたるところに橋がかかっているんだ。


 ボクが通ろうとしているのは『南大橋』。

 ホンモノの南大橋であれば、いつも大勢の人が行き交ってるんだけど、このニセモノの街にある橋には当然のように人気がない。


 いや、全く無いわけじゃなかった。

 まるで弁慶のように、見上げるほどに大きな衛兵が立っていたんだ……!



『この競技名物「巨兵」が現れましたっ! 普段はその巨体を活かして裏路地の通路を塞ぎ、競技者を追い込むのを得意としているのですが、今回は広いところで大暴れできるとあり、張り切っているようです!』



 橋のど真ん中にいるオジサンは「巨兵」と呼ばれているだけあって、さすがにデカい。

 身長は2メートルくらいあって、丸太のように太い腕を振り回し、カポンカポンと脇を鳴らしている。


 力は凄そうだけど動きは鈍そうなので、すり抜けて進むのは簡単だろう。

 でも振り切ったところで絶対に追いかけてくるだろうから、後々厄介な存在になるのは間違いない。


 ならば……しばらくは追いかけられないような状態にするのみ……!

 今まではずっと、かわし続ける一方だったけど……ボクはほんの少しだけ暴れることにした。

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