表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/152

11 最強必殺技、放ちます!

 ボクはグレムリンロワーの群れに突っ込んでいく。

 まずは手近なヤツを狙おうとしたんだけど、あとずさって距離をとられてしまった。



「シャアアアアーーーッ!」



 そして号令一下、取り囲まれてしまう。



「ああーっ! 囲まれたぁーっ!!」



 観客の、悲鳴とも歓声ともつかぬ声が、ボクの鼓膜を揺らす。



「ああっ、もう終わりだ! 逃げ場を完全に塞がれちまった!」



「あいつバカだ! 複数のモンスターを相手にするときは、なるべく囲まれないようにするのが基本なのに!」



「わざわざ突っ込んでって、自分から囲まれにいきやがったよ!」



「ああ……これじゃ、一瞬で終わっちまうぞ!」



「なんだよぉ! それじゃぜんぜん面白くねぇじゃねぇーか!」



「わんわん大泣きしながら、『助けてぇ~!』って命乞いするところが見たかったのに!」



「死ぬときまで空気読めないなんて、マジサイテー」



「でもアイツらしい、ゴミみたいな死に方じゃね?」



 さんざんな言われようだ。


 最初に戦ったグレムリンロワーは突っ込んできたので、今度のも突っ込んでくるかと思ったのに……囲まれたのは予想外だった。


 予想は外れたけど……でも……ボクにとっては逆に好都合……!

 ウサギがターゲットにされるよりは、ぜんぜんいい……!



「グルワッシャアアーーーーーーーーーーッ!」



 号令一下、八方向から一斉に飛びかかってくるグレムリンロワー。


 かなり統率のとれた動き……!

 でもでも……それもボクにとっては好都合なんだっ……!


 ボクはチャンスとばかりに腰を沈め、練気の構えをとる。

 間を置かず、即座に高く飛び上がった。


 そして空中で……脚にためた気を、気合ととともに一気に放出するっ……!



「 (レッ) (シュウ) (ザン) ッッッ……!!」



 ……シュパァァァァァァーーーーーーーーンッ!!



 空を斬り裂く音とともに、回し蹴りが炸裂。

 真円の形をした衝撃波が、高速回転しながら丸ノコのように広がった。


 グレムリンロワーたちの首筋に、蹴りの軌跡が一閃すると、



 ズババババババババッ……!!



 半魚人のような頭部が、シャンパンの栓のように次々と吹っ飛んでいく。



 バシュゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーンッ!!



 続けざまに、8匹分の黒い霧が部屋中に蔓延した。


 身体じゅうのエネルギーを脚に集め、蹴りに乗せて鋭い刃のようにして放つ……!

 それが『第95世界』の必殺技のひとつ、『烈蹴斬』……!


 大勢の敵に囲まれたときに有効なんだけど、まさか8匹ぜんぶ一網打尽にできるとは……!


 ボクが蹴り足を戻すと、浮いていた身体が地面に向かって落下をはじめる。

 するとタイミングをはかっていたかのように、憤怒が足元からわきあがってきた。



「ブモォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」



 視線を落とすと、それまで土蹴りをしていたレイジングブルが、ここぞとばかりに突っ込んでくるのが見えた。



 ドドドドドドドドドドドドッ……!!



 蹄を獰猛に踏みしめる音が、地鳴りのように部屋を揺らす。


 そうか……!

 ヤツはボクが無防備になる、着地の瞬間を狙って突っ込んでこようとしてるんだ……!



「いやあぁあぁあぁあ~」



 反対側から盾をかまえたウサギが、迎え撃つようにとたとたと走ってくるのが見えた。

 きっとボクの着地を守ろうとしてくれてるんだろう。


 だけど……全然間に合いそうにない……!

 それに彼女のちいさな身体では、レイジングブルの体当たりはとても受け止められそうもない……!


 最悪……ボクは角で串刺し、ウサギはダンプトラックに轢かれるみたいに跳ね飛ばされる……!


 このままじゃ……ふたりともやられちゃうよ……!


 よしっ……こうなったら、アレだ……!

 アレをやるしかないっ……!


 ボクは覚悟を決め、右の拳をぐっと握りしめる。


 レイジングブルとウサギの間に、割って入るようにボクは着地した。

 着地の勢いで腰が沈むのを利用して、練気の構えをとる。



「ブモォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」



 汽笛のような怒声とともに、蒸気機関車さながらのプレッシャーが目前に迫る。


 ボクはさらに姿勢を低くして、角の下に潜り込んだ。

 頭のてっぺんをかすめていく、パイルバンカーのような切っ先。


 い……今だっ……!


 ボクは、ためにためていた右拳で、天を突く……!

 そのまま全身を、カエル飛びのように、一気に伸び上がらせた……!



「 (リュウ) ッッッ……!!」



 ……ドガアァァァァァァッッッ!!



 突き上げた拳が、レイジングブルのアゴにクリーンヒットする。

 裂帛の気合いとともに、拳を力いっぱい押し上げた。



「 (ショウ) ッッッ……!!」



 ……グググググググググッッッ!!



 目を血走らせていたレイジングブルの牛顔が、万力で潰されるように醜く歪んでいく。

 目玉は飛び出さんばかりに押し出され、歯は粉々に砕け散っていく。


 ボクは最後の気合とともに、一気に拳を振り抜いた。



「 (ゲキ) ィィィィィィッ……!!!」



 スドォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!!



 ボクは拳を掲げたまま、天高く舞い上がる。

 首の骨が外れたかのように、大きくのけぞっていたレイジングブルも……きりもみしながらキリキリと宙を舞っていた。


 これが、『龍昇撃』……!

 拳にためた気を、天に昇る龍のように放出する技……!


 発動直後が最も威力が高く、その瞬間にヒットさせることができれば、どんな相手だって一方的に打ち負かすほどのストッピングパワーを発揮する。


 『第95世界』のなかでも、絶大な威力をほこる必殺技のひとつなんだ……!


 極限状態からの大逆転に、ボクの脳からはアドレナリンが出まくっていたのか……世界がまるで、スローモーションのようにゆっくりと動いていた。


 みんなは、UFOでも目撃しているかのように、ポカンと口を開けたまま……ボクを見上げていた。

 ウサギは花火でも見るかのように「わぁ……!」と嬉しそうに口を開けていた。


 『龍昇撃』が頂点に達した瞬間、いつも通りの時間が戻ってくる。



 ……ズダァァァァァァァァンッ!!



 きりもみしていたレイジングブルは、何度もバウンドしながら床に叩きつけられていた。

 少し遅れて、ボクがスタッと着地するなり、



 バシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーッ!!



 炭素ガスような黒い突風となり、消え去っていった。


 その後は、戦闘中の喧騒がウソのように静まり返り……あたりは沈黙に包まれる。

 ボクが「ふぅ」とひと息ついた以外には、何の音もしない。


 沈黙を打ち破ったのは、なんとも緊張感のないクラスメイトの一言だった。



「……え、えーっと……なんだったんだ?」



「なんか、よくわかんねぇうちに……グレムリンロワーがやられて……」



「なんか、よくわかんねぇうちに……レイジングブルがやられた……」



「いや、そんなわけねぇだろ……なんでよくわかんねぇうちに、あんなバカ強いモンスターがやられるんだよ……」



「見間違えじゃなけりゃ、あの、アンノウンがやったんだよな……?」



「いや、見間違いだろ……あの勉強もスポーツも、何もかもドベのアンノウンが、バカでへなちょこのアンノウンが……」



「そのうえ空気も読めないアンノウンが……」



「俺たち全員がかかっても敵わないようなモンスターを、たったひとりでやっつけちまうなんて……」



「それも、二撃なんて……マジ、ありえない……」



 クラスメイトは、誰一人として腑に落ちていないようだ。

 やがて、



「……おいっ!! てめぇら、ボンヤリしてんじゃねぇ!! 次の部屋に行くぞ!!」



 レツの一喝を受けて、ぞろぞろと連れ立って部屋を出ていく。

 去り際にレツは、ボクを恐ろしい形相で睨んでいった。

■□■□パラメーター□■□■(現在の階数:2階)

挿絵(By みてみん)


□■□■スキルツリー■□■□


今回は割り振ったポイントはありません。

未使用ポイントはありません。


括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。


●潜在能力

 必殺技

  (1) LV1  … 波動弾

  (1) LV2  … 烈蹴斬

  (1) LV3  … 龍昇撃

 選択:打撃必殺技

  (0) LV1  … xカウンター

  (0) LV2  … 爆裂拳

  (0) LV3  … 点穴

 選択:投げ必殺技

  (0) LV1  … 当て身投げ

  (0) LV2  … イズナ落とし

  (0) LV3  … 真空投げ


●料理

 見習い

  (1) LV1  … 下ごしらえ

  (1) LV2  … 焼く・炒める

  (1) LV3  … 茹でる・煮る

 コック

  (0) LV1  … 盛り付け

  (0) LV2  … 揚げる・漬ける

  (0) LV3  … 燻す・焙煎


●錬金術

 風錬

  (1) LV1  … 抽出

  (0) LV2  … 風薬

  (0) LV3  … 旋風

 火錬

  (1) LV1  … 変形

  (0) LV2  … 火薬

  (0) LV3  … 噴火

 地錬

  (0) LV1  … 隆起

  (0) LV2  … 地薬

  (0) LV3  … 地震

 水錬

  (0) LV1  … 陥没

  (0) LV2  … 水薬

  (0) LV3  … 奔流


●サイキック

 ニュートラル

  (1) LV1  … テレキネシス

  (0) LV2  … クロスレイ

  (0) LV3  … テレパシー


●彩魔法

 灰

  (0) LV1  … フリントストーン

  (0) LV2  … プラシーボ

  (0) LV3  … ウイッシュ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★新作小説
『駄犬』と呼ばれパーティも職場も追放されたオッサン、『金狼』となって勇者一族に牙を剥く!!
追放されたオッサンが、冒険者として、商売人として、勇者一族を見返す話です!


★クリックして、この小説を応援していただけると助かります!
小説家になろう 勝手にランキング
ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=369162275&s script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ