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109 ゴンギルドの本拠地

関連小説の紹介 ※本作の最後に、小説へのリンクがあります。


★『…マジで消すよ? 俺の愧術がチートすぎて、クラスのヤツらを一方的に縛ったり消したりします!』


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女の子を緊縛して奴隷にする、嫌なヤツを消す、お金を出す…これ全て、異世界最強の、愧術…!



★『チートゴーレムに引きこもった俺は、急に美少女たちから懐かれはじめました。キスしながら一緒に風呂やベッドに入るって聞かないんです!』


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引きこもれば引きこもるほど、チヤホヤされる…チートゴーレムのお話!

 『ラッキー・ツー』は街のすみっこにあった。

 カジノというのは酒場などと一緒で、大人たちが多く集まる場所にあるものだと思っていたけど、『ラッキー・ツー』はその例から外れるように人気のないところにある。


 しかし……へんぴな所にあるというのに、カジノの前はかなり賑やかだ。

 その理由を、ボクは建物を見て知った。


 3階建てで、すごく大きい。

 『ラッキー・ワン』もかなりのものだったけど、その倍以上ある。


 屋根もかなり高いというのに、そこからさらに尖塔のようなものが飛び出ていて、天を衝くほどの高さにまでなっている。


 規模も佇まいもカジノっぽくなくて、まるで室内遊園地みたいだ……!


 ただ、客層はぜんぜん遊園地っぽくない。

 入口には木を組んで作られた巨大な門があるんだけど、血の気の多そうな大人たちが吸い込まれるように入場している。


 ボクとウサギは入る前から圧倒されてしまった。

 おのぼりさんみたいに「おお~」と唸っていると、案内役のマニーが教えてくれた。



「このカジノの系列店のなかでも、もっとも建物の規模があるのがこの『ラッキー・ツー』と『ラッキー・シックス』なんだ。どちらも大きすぎるあまり、街中には建てられなかったようだがな」



「はぇ~」



 ボクとウサギは限界まで首を上に傾け、ぽかんと口を開けて建物を見上げる。

 思わず背伸びまでしてしまうボクらに、マニーは鼻で笑った。



「おいおい、キミたちはこのカジノより何倍も高い塔を、毎日のように登っているじゃないか」



「そうなんだけど……でも、人の手でもこんなに大きな建物が作れるんだね」



 すると、マニーはこらえきれないように笑いだした。



「ハハハ、そんなわけがないだろう。人間の手だけでこの規模の木造建築などできるはずもない。『神の叡智』さ」



 ……この『第108世界』では、ほぼすべての建物が石か木でできている。

 鉄が使われている建物は『太陽の塔』と、王様の住むお城以外には存在しない。


 『ラッキー・ツー』は木造なんだけど、木造では耐久性の関係で大きさに限界がある。

 だけどその問題を解決したのが、神様が授けてくれた建築技術……『神の叡智』だと、マニーは教えてくれた。


 人間では不可能な計算により成り立っていて、その設計図は『芸術品』のように美しいらしい。

 芸術品と聞いて、ウサギはピョコンと帽子のウサ耳を立てたんだけど、ボクはあまり興味をそそられなかった。


 ちなみになんだけど、この世界では『お酒』も作ることができない。

 『作れない』というよりも、厳密には『みんな作り方を知らない』といったほうが正しいかな。


 毒抜きした肉と同じで、太陽の塔からエレベーターに乗って降りてくるんだ。

 理由はわからないけど肉よりはたくさんもらえるので、それほど貴重品でもない。


 娯楽の少ないこの世界の大人たちにとっては、そのお酒を飲むのがなによりもの楽しみらしい。

 特に冒険者にとっては『命の水』とも呼ばれていて、一日の疲れを癒やすには欠かせないモノなんだって。


 ボクはお酒を飲んだことはないけど、味は知ってる。

 もちろん妄想の中でだけど……。


 作り方もだいたいわかるから、今度作ってみようかなぁ……。


 って、今はそんなことを考えてる場合じゃなかった。

 ボクはカジノのほうに思考を戻す。



「でも、カジノってお金を賭けて『ケルパー』みたいなのをやる場所なんでしょ? それだったら、『神の叡智』まで使ってこんなに大きいカジノを建てなくてもいい気がするんだけど……」



 『ケルパー』はそんなに場所をとらずにプレイできる。

 ちょっとしたテーブルと椅子があればいい。


 それだったらこんな大きな建物は必要ない。

 これほどの規模なら、街でケルパーをやる人全員を集めても埋まらない気がする。


 ボクの新たなる疑問に、マニーは「わかってないな」みたいに肩をすくめた。



「この街のカジノは大きくふたつに分かれるんだ。まずひとつは『ケルパー』のような頭脳勝負のカジノ。そしてもうひとつは、体力勝負のカジノ」



「体力勝負って……なにをするの?」



「簡単に言えば、塔の3階でやった『力だめしの間』のようなことだ。ただ、ケルパーのように競技者どうしが賭けあうのではなく、競技者の中でだれが一番になるかを観客として賭けるんだ。だが盾を目指すのであれば、競技者にならないとダメだろうな」



 『力だめしの間』……冒険者ギルドが主催していた、スカウト対象を見極めるための競技。

 なるほどそれなら広い場所が必要なので、この規模も納得がいく。



「まあ、実際になにをやっているかは入ってみればわかることだ。どうするアンノウン? 逃げるなら今のうちだぞ?」



 『力だめしの間』にはいい思い出はないけど、ボクは引き返すつもりは全くなかった。



 ボクはもう一度、高くそびえる『ラッキー・ツー』を見上げる。

 やる気を奮い立たせるように、大きくウンと頷いた。



「いや、ボクは逃げない……! よぉし、行こう……!」



 決意とともに一歩を踏み出そうとしたんだけど、水を差すように横からチョンチョンと突つかれてしまった。


 この呼び方は、ウサギだ。

 見ると、彼女はカジノの斜向いを指さしていた。


 そこは大きな公園だった。

 この街のはずれには、大きな公園がいくつもあるので珍しいものじゃなかったんだけど……中に存在するモノが珍しかった。


 木々をアーチとして『ゴンギルド』の横断幕がかかっており、その下にはたくさんのテントが張られている。

 テント村の中で行き交う『ゴンギルド』のメンバー……ようはクラスメイトたち。



「……ゴンのギルドって、こんな所にあったんだ……」



 ボソリとつぶやくボクと、頂けない様子のマニー。



「ギルドともなると大所帯だから、宿に泊まるわけにもいかんだろうからな」



「でも、ゴンたちはブルーゲイルの鉄の蹄を納品したから、1000万(エンダー)はあるはずだよね? それだけあれば、家くらい借りれると思うんだけど……」



「冒険者ギルドに目をつけられたらどうなるのか、もう忘れたのか? 新規ギルドともなるとなおさらのこと……今の彼らに家を貸す物好きなど、いるわけがなかろう」



『お外で寝て、危なくないのかなぁ?』



 ウサギは我が事のように心配している。


 でもボクもそれは気になっていた。


 この街は昼間は安全なんだけど、夜になるとよからぬヤツらが徘徊するそうなんだ。

 路地裏で生活しているならず者たちや、一説には『塔賊』たちともいわれている。


 そんなヤツらが野宿の冒険者やら、酔っ払って寝ている人を襲うから、かなり危険なんだって。


 ボクはマニーなら答えを知ってるかなあと思い、ウサギと揃って秀美(しゅうび)な横顔を見つめる。

 しかし期待に反し、眉に小さくシワを寄せていた。



「しかし解せんのは、何事もなくキャンプできているということだ。普通であれば、火を放たれて略奪されてもおかしくはないハズなのに……」



『火をつけられちゃうの!?』



 手で口を押さえ「わあっ」と驚くウサギ。



「……駆け出しのギルドの大半は、そうやって潰れていくんだ。ただ、裏社会に通じていれば、それは防げることだが……」



 『裏社会』という単語に、ボクは不意にときめいた。

 『裏の』とか『影の』とかそういうのが頭につくと、なんとなく危険な香りがして……ちょっと憧れる。



「裏社会って?」



「夜のならず者たちが行っている略奪は、表から見れば犯罪だが……裏から見れば商売だ。商売であるからには需要と供給が存在し、表の貴族のように牛耳るヤツも当然いる。その権力者に便宜を図ってもらえるような関係であれば、たとえ札束に埋もれて寝ていても襲われないってわけさ」



「ってことは、ゴンは裏社会の誰かと仲がいいってこと?」



「ブルーゲイルの鉄の蹄を納品したとはいえ、『ゴンギルド』はまだ弱小……裏社会のヤツらにとっては畑の野菜と同じさ。一方的に収穫する対象ではあっても、仲良しなんて言葉はありえん」



「じゃあ、ゴンたちのキャンプはいつ襲われてもおかしくないってこと?」



「そうだ。普通であればとっくの昔にやられているだろうに、手出しをされないのが不思議なくらいだ。もしかしたらなにか狙いがあって、ゴンギルドを泳がせているのかもしれないな……」



 それからマニーはしばらく考えていたけど、ゴンギルドが無事である理由は結局わからなかった。


 ボクはちょっと心配ではあったけど、わからないことを気にしてもしょうがなかったので『ラッキー・ツー』へと意識を戻す。


 そしていよいよ巨大なるカジノの中に、足を踏み入れたんだ……!

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