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100 世界初の麺類

関連小説の紹介 ※本作の最後に、小説へのリンクがあります。


★『…マジで消すよ? 俺の愧術がチートすぎて、クラスのヤツらを一方的に縛ったり消したりします!』


https://ncode.syosetu.com/n3047es/


女の子を緊縛して奴隷にする、嫌なヤツを消す、お金を出す…これ全て、異世界最強の、愧術…!



★『チートゴーレムに引きこもった俺は、急に美少女たちから懐かれはじめました。キスしながら一緒に風呂やベッドに入るって聞かないんです!』


https://ncode.syosetu.com/n0930eq/


引きこもれば引きこもるほど、チヤホヤされる…チートゴーレムのお話!

 ボクが今日の昼食として作ったもの……それは『うどん』……!


 簡単に作れるうえに、食べやすく、エネルギーにもなる……!

 これからの対局に備え、ピッタリだと思ったんだ……!


 麺は純白でツヤツヤ、スープはほんのり黄金色で澄んでいる。

 どんぶりの中で麺とスープがお互いに光を放ち、キラキラと輝いていた。


 本当は鶏とか魚でダシをとりたかったんだけど、なかったので野菜ダシにした。

 代用品のつもりだったんだけど、むしろ大正解だったようだ……!


 さらにはカリッと揚がったかき揚げが、いいアクセントになっている。

 さっぱりしたうどんに、ガッツリした食べごたえを与えてくれるのは間違いない……!


 二種のうどんを交互に見つめていると、ステータスウインドウが開く。



 【野菜ダシの塩かき揚げうどん】

  HP、MP、疲労、限界突破回復200%


  ★Buff(継続時間4時間)

    HP、MP自動回復1秒につき0.2%

    スキル使用時のMP消費-50%



 【野菜ダシの塩たぬきうどん】

  HP、MP、疲労、限界突破回復150%



 よしっ……!

 ボクは心の中でガッツポーズする。


 HPとMPが最大より多く回復する、『限界突破』効果がついている……!

 しかも自動回復に加え、MP消費が半分も抑えられるBuff(バフ)効果まであるだなんて……!


 これを食べれば、MP問題が一気に解決するぞ……!


 ボクは嬉々として、みんなにできたてのうどんを勧めた。

 仲間や勝負をすることになったコックたちだけでなく、観客のみんなにも。


 実をいうと、みんなに食べてもらうために多めに作ったんだ。

 なぜかというと、イタズラを見破るため。


 作っている途中、こっそりと薬とかを混ぜていたならば、コックの人たちは食べるのを躊躇するだろう、と。


 なんだかんだ言い訳して食べるのを拒んだ場合のことも見越して、ボクはさらに味見勝負も挑んでおいた。

 だから少なくとも、コック長だけは食べざるを得ない。


 彼らの反応を見て、ボクが食べても大丈夫かどうかを見極めたかったんだ……!


 しかしみんなは渡されたうどんに手をつけず、じっと見つめるばかり。



「す……すごい……!」



「こ、こんなに変なのに、こんなにおいしそうな食べ物、初めて見た……!」



「うわあっ、これヤバいって! 食べたことないヤツだけど、絶対うまいやつだって!」



「また、アンノウンがやっちゃったよ……! また斬新な料理、生み出しちゃったよ……! ほんとにマジなんなん? マジで神なん?」



「はい……! 桜あんぱんに続いて、こんなすごい食べ物を考えつくだなんて……! 同じ頭脳を持って生まれた人間とは、とても思えません……!」



「あの男のアタマの中は、本当にどうなっているんだ……!? こんな未知の食べ物を即興で創り出すなんて……! 宇宙でも詰まっているのか……!?」



「ね、ねぇ……コック長……! これ、ミミズがのたうつガキの泥んこ遊びどころじゃないですよ……!」



「ええ……! 家畜ですら見向きもしないどころか……! 見ているだけで……ニオイを嗅いでいるだけで……ヨダレが止まりません……!」



「う……ぐぅぅぅぅっ……! た、確かにっ……! だ、だが、まだ、まだわからんっ……! 食ってみて……食ってみてからだっ……!」



 みんなは凝視のあまり、とうとう顔を洗わんばかりにどんぶりに顔を突っ込みはじめる始末。


 「そうやって見るのもいいけど、早く食べないとノビちゃうよ」とボクは言ったんだけど、ホカホカあがる湯気に気づき、慌てて言い直した。



「……あっ! みんな! 食べるのちょっと待って! 食べるんだったら、ちゃんとテーブルに置いてから食べて! でないと火傷しちゃうから!」



 ボクの言葉の意味を仲間たちはすぐに理解してくれたようで、そそくさとうどんを持って空いていたテーブルに着いてくれた。


 ボクの料理を初めて食べる観客の人たちは首をかしげていたけど、カジノ内にたくさんあるケルパー用のテーブルに戻り、そこで食べるようにしてくれた。


 カジノのスタッフやコックたちもまかない台みたいなのを出してきて、そこで食べようとしてくれたんだけど……コック長だけはひとり、立ったままだった。



「……バカバカしい! どうせひと口食ったらマズくて吐き出すんだ! 俺はこのゴミ箱の前で立ったまま食うぞ!」



「まぁ、別にいいけど……倒れないでね?」



「まったく……! 倒れるだなんて、どんだけマズい料理なんだ!? もしそんなことがあったら、貴様にぶちまけてやるからな!」



 コック長は何がそんなに気に入らないのか、うどんと同じくらい頭から湯気を立ち昇らせている。

 ボクはまぁいいか、と思い、みんなに向かって言った。



「じゃ、どうぞ……めしあがれ!」



 まるで学校の給食のように、カジノじゅうの人間が一斉にハシを取る。

 そしておもむろにハシをどんぶりに入れ、麺をすくいあげた。



「……う~ん、細長い小麦粉を茹でて、スープに浸すだなんて……何度見ても、こんな料理は初めてだ……!」



 だれかが感心したように唸る。

 そういえば麺類って、この世界には無かったんだっけ……とボクは思い出し、付け加えた。



「みんな! それは『麺』っていうんだけど……息を吸い込むようにして、すすって食べてみて! 熱いのが苦手な人は、よく冷ましてからにしてね!」



 ウサギは麺をフーフーしていたけど、それ以外のみんなは一斉に口に運ぶ。

 そして、



 ……ずぞぞぞぞぞぞぞっ……!



 駒を打つ乾いた音が似合うカジノにとって、はじめての……いや、この世界にとってもはじめての、すすりあげのハーモニーが奏でられた。



 直後、大地震が起こったかのように、建物が揺れる。



 ……どんがらがっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーんっ!!



 何かを盛大にひっくり返したような音とともに、だれもいなくなった。

 神隠しにあったかのように、ボクの視界からみんな消え去ってしまった……!


 いや、違う……! みんな椅子から転げ落ちちゃったんだ……!



「う……うううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう…………………!!!!!」



 地鳴りのようなうめき声が、床から突き上げてくる。

 ボクは「来るか!?」と咄嗟に耳を塞いだ。



「うまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?!?!?!?」



 歓喜の大合奏が、ビリビリと空気を震わせる。


 盤上に並べられた駒が、木のワイングラスに注がれたワインが、バーカウンターに並んだ酒筒たちが、喜びを分かちあうようにカタカタと震えた。



 ……ドドドドッ!! ドドドドドドッ!! ズドドドドドドドドドッ!!!



 波が押し寄せるような振動と音が続く。


 このカジノじゅうの人間が、まるで集団催眠にかかってしまったかのように、転がりはじめたんだ……!



「うまいうまいうまい! やばいやばいやばい! あぁん、もうっ! なにこれぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!!」



「噛むと弾力があるだなんて……! なんだこの、硬いのか柔らかいのか、よくわからない食感は……!?!? でもうまぁぁぁぁぁぁぁぁいっ!!!」



「噛むたびに、野菜の甘みがじゅわっ、じゅわっと広がって……!! うわあっ!! 噛むのが楽しいっ!! 楽しぃぃぃぃーーーっ!!!」



「なんなんだっ!?!? このつるんとした感覚っ……!?!? 液体でも、固体でもないような、この、全身が震えあがって喜ぶような、不思議な喉越しはっ……!?!?」



「こっ、この野菜を揚げたもののおいしさは、いったい何なんだっ!?!? サクっとしててホクホクで、シャキシャキで……!! 麺の食感だけでも初めてだというのに、決して容赦はしないということなのかっ……!?!? これは、ケルパーの真理に通じるものがあるっ……!! ああっ、私の心は全駒のように、すべてこの美味に奪われてしまった……!!」



 見ると、シルバーもちゃっかり食べていた。

 しかも、数が少ないかき揚げうどんのほうを。



「ぎゃぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?!? 熱い! 熱ぃぃぃぃーーーっ!?!? でもうまい!! うますぎるっ!! 料理人生40年で初めての食感、そして味……!! 俺がいままでやってきたことは、なんだったんだぁーっ!?!? 熱い熱い! でも、うまぁーいっ!!」



 コック長は倒れた拍子にどんぶりをかぶってしまったようで、身体じゅう麺とスープにまみれていた。

 熱さのあまりのたうちまわりながら、それでも食べるのはやめられず、そこらじゅうに散らばった麺を手づかみで食べ、床にこぼれたスープを這いつくばってすすっている。


 ほら、言わんこっちゃない……だから座って食べてって言ったのに……。

 でもまぁ、おいしかったみたいだから、いっか。


 さぁて、ボクも食べよっと!


 そこでボクは大変なことに気づいてしまった。

 調理台の上に、ポツンと残っていたのは……『野菜ダシの塩たぬきうどん』だけだということに……!

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