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10 険しい道、進みます!

 『険しい道』を進むことに決めたボクとウサギ。

 不安を煽るような赤字の看板の下をくぐり、通路を進んでいくと……大きな部屋に出た。


 塔の他の場所と変わりない、灰色の壁に囲まれた部屋。

 しかしいくつか、違いが見受けられた。


 まず、『楽な道』があるほうの壁が格子状になっていて、『楽な道』の様子がわかるようになっている。

 格子の向こうでは、クラスメイトたちがどやどやと部屋に入ってきている姿が見えた。


 そして、入ってきた通路の対面には、固く閉ざされた石扉があり、手前の床には乗って作動させるタイプのスイッチがある。


 スイッチは『楽な道』『険しい道』の両方にあるから、おそらくあのスイッチを同時に押せば石扉が開くんだろう。


 ボクはさっそく、スイッチの上に乗ってみる。

 『楽な道』のほうを見ると、ゴンとレツからパシらされたヤツが、スイッチの上に乗っていた。


 ふたつのスイッチが押し込まれた瞬間、


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


 と石が滑るような音とともに、扉が上にスライドする。


 目の前の扉があがっていくのと同時に、逆に背後の扉は降りていく。


 どうやらこのスイッチを押したが最後、突破するかモンスターにやられるまでは、外には出られないらしい。


 隣の部屋からは、テンションの高い声が響きわたっていた。



「おっ! 開いたぜ! 乗り込めーっ!」



「ゴブリンロワーがたったの2匹! 楽勝だぜっ!」



「やっちまえ! なぶり殺しだあっ!」



「よぉし、次の部屋に着いたぞっ!」



「チッ! またスイッチがあるぞ……! アンノウンが来るまで進めねぇじゃねぇか……!」



 『楽な道』のほうは、あっという間に最初の部屋を突破したらしい。

 「アンノウン、早くしろーっ!」と急かすような合唱が、反響しながら耳に届く。



「よし……行こう、ウサギ!」



 ボクはウサギを連れて部屋に飛び込んだ。



「グルルルルッ、シャアアアアーーーッ!」



 さっそく敵たちが、牙を剥き出しにする威嚇のポーズでお出迎え。


 人間の大人くらいの身体に、顔ほどもある巨大な耳……そして、半魚人みたいな両生類の顔……!


 【グレムリンロワー】(戦闘力:90)

 【グレムリンロワー】(戦闘力:90)

 【グレムリンロワー】(戦闘力:90)


 戦闘能力90の、グレムリンロワー! しかも、3匹……!


 ボクはとっさに練気の構えをとる。



「グルッシャアアアーーーーーーーーーーーッ!」



 いまにも噛み付いてきそうな顔で、全力疾走してくる3匹のグレムリンロワー。

 先頭のヤツめがけて、ボクは気を放った。



「波動弾!!」



 ……ドオンッ!!



 光弾を胸に受け、のけぞり倒れる先陣。

 黒い霧となって散っていく。


 よし、まず1匹……!


 波動弾の威力にビックリして、残りの2匹が怯んでくれれば……と期待したんだけど、ヤツらの短距離走のような勢いは衰えない。

 とうとうリーチ圏内まで迫られてしまった。



「シャアアアッ!」



 熊手のような、鋭い爪の一撃が襲う。

 ボクはよけるどころかむしろ突っ込んでいって、ソイツの懐に潜り込んだ。


 攻撃が外れてスキだらけのアゴめがけ、アッパーカットを叩き込む。



「グワアアッッ!?」



 アゴを砕かれ怯んでいるスキに、残りのグレムリンロワーをさばく。

 掴みかかってきたところを、相手の力を利用して投げ飛ばした。


 『第95世界』の体術の一つ、『柔術』……!

 体格の大きな相手でも、わずかな力で投げ飛ばせる……剛を制するといわれる投げ技……!



「えいやぁあぁ」



 気づくと、アゴを砕かれたグレムリンロワーの腹を、ウサギが貫いていた。

 鉄の剣の切っ先が背中を突き破った瞬間、グレムリンロワーは霧散する。



「いいぞ、ウサギ! その調子!」



 親指を立てて賞賛していると、ウサギはボクの肩越しに視線をやり、あわわっと慌てていた。

 振り向くと、ちょうど投げ飛ばしたグレムリンロワーが復活し、爪を振りかぶっているところだった。



「よし、ついでにコイツもやっつけて!」



 ボクは爪攻撃をよけながら担ぎ上げ、一本背負いでウサギの足元に叩きつける。

 ウサギは唖然としていたけど、すぐに我に帰り、鉄剣を倒れたグレムリンロワーに突き立てた。



「グシャアアアアーーーッ!!」



 喉を貫かれ、床でもがきながら散っていく最後の敵。


 や……やった……! 勝った……!

 無我夢中で戦っていたけど、こんなにあっさり勝てるだなんて、思わなかった……!


 しかも戦闘力が90もあるモンスターを3匹も相手にして、無傷で勝てちゃうだなんて……!

 これ以上ないくらいの大金星じゃないか……!



「やった! やったやった! やったね、ウサギっ!」



 ボクは興奮のあまり、ウサギの肩をガシッと掴んで喜んでいた。

 「ひゃ」としゃっくりみたいな声で驚く彼女の肩は、格上のモンスターを2匹もやっつけたとは思えないほど細かった。



「すごいよ、ウサギ! 戦闘力90の強敵を2匹もやっつけちゃうなんて! やればできるじゃないか!」



 ウサギは恥ずかしそうにうつむきながら、スケッチブックにもじもじと鉛筆を走らせる。



『動きを止めてくれたから……』



「そっか……じゃあこうしようか! ボクが倒しきれないヤツは動きを止めるから、ウサギはソイツをやっつけて!」



 ウサギは視線を落としたまま、こくこくと頷く。

 敵を倒した興奮で、まだカッカしているのか……彼女の頭からは湯気がたちのぼっていた。



  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 強い敵をやっつけたおかげで、ボクは1レベル、ウサギは2レベル上昇していた。


 ステータスポイントがまた10ポイント増えていたので、『筋力』と『敏捷』に振る。


 そして次の戦いに備え、新たにもらったスキルポイントを、『烈蹴斬』と『龍昇撃』に振る。


 すると……新たな格闘スキルが増えた。

 『選択:打撃必殺技』と『選択:投げ必殺技』。


 ボクは、ついにきたか……! とハッとなる。


 この『選択:』とついているやつは、片方しか習得できないスキルグループだ。

 たとえば『打撃必殺技』に1ポイント振った時点で、『投げ必殺技』は消えてしまい、ポイントは振れなくなってしまう。


 これは、どっちを取るべきなんだろう……!?

 思わず長考に入りそうになったけど、



「おい、まだかよ! アンノウン!」



 と呼び声を聞いて我に返った。


 グレムリンロワーがいた部屋は格子状になっていないので、こっちの様子がわからないんだ。

 だから待つほうも余計じれったいんだろう。


 ボクはウサギとともに先へと進んだ。



「おっせぇーよ! いつまで待たせんだよっ!」



「どんなモンスターがいたか知んねぇけど、遅すぎんだよっ!」



「やられちゃったかと思ったじゃない!」



「どーせ勝ったのも偶然だろ!? 次はさっさとやられちまえよ!」



 クラスメイトたちの罵りを受けながら、ボクはスイッチの上に乗る。


 重苦しく開く石扉。

 『楽な道』のほうはまたしてもグレムリンロワー2匹だったようで、例によって瞬殺していた。


 もしかしたらこっちも同じで、またグレムリンロワー3匹が相手かもしれない。

 それだったらだいぶ楽なんだけど……。


 ほのかな期待を抱きつつ、次なる部屋へと飛び込むボクとウサギ。


 『険しい道』に待ち構える、次なる敵は……!?


 【グレムリンロワー】(戦闘力:90)

 【グレムリンロワー】(戦闘力:90)

 【グレムリンロワー】(戦闘力:90)

 【グレムリンロワー】(戦闘力:90)

 【グレムリンロワー】(戦闘力:90)

 【グレムリンロワー】(戦闘力:90)

 【グレムリンロワー】(戦闘力:90)

 【グレムリンロワー】(戦闘力:90)


 「ひえええーっ!?」という悲鳴が割り込んでくる。

 声のほうを見ると、この部屋は壁が格子状になっていて、猛獣を前にしたかのように凍りつく表情のクラスメイトたちが見えた。



「ぐ、グレムリンロワー!? 戦闘能力が90もあるぞ!」



「90って、ゴン君やレツ君よりも上だよ!」



「ヤバくない!? あんなの、もっと上の階に出てくるモンスターっしょ!? なんでこんなところにいんの!?」



「『険しい道』っていうのは、ホントだったんだ……!」



「しかも1匹だけじゃないわ! 8匹もいる!」



「ちょ……ちょっと待て! グレムリンロワーの後ろに、なんかいるぞ!?」



 たしかに、居並ぶグレムリンロワーたちの背後に、何やら大きな黒い影が蠢いている。

 目をこらしてよく見てみると……。


 【レイジングブル】(戦闘力:180)


 鼻息を荒くしながら土けりをする、巨大なウシだった……!



「えええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」



「で……でかい! でかいウシだっ……!」



「ご、ゴン君より大きいよっ……!?」



「せっ、戦闘能力180っ!? 完全に、ボスクラスじゃねぇか……! 



「あのデカい角、見てみろよっ……! ひと突きされただけでバラバラになっちまうよ……!」



「角どころか、アンノウンなんか鼻息だけでやられちまうよ!」



「あ……あんなの、俺たち全員でかかっても、絶対絶対勝てっこねぇ……!」



 対峙しているのはボクなのに、観客であるクラスメイトたちはすっかり絶望に染まっていた。


 みんなはボクがウシどころか、グレムリンロワーにやられる姿を想像しているんだろう。

 でも、情けは一片も感じられない。最初にあった恐怖心は、今や好奇心に変わりつつある。


 人がモンスターに殺されるとどうなるか、間近で見れてラッキーみたいな顔。

 ライオンの檻に生き餌として放りこまれた、醜いブタを見るような哀れみの目……!


 しかし……ひとりだけは明らかに違っていた。



「アンノウン! 逃げるんだっ! いまならまだ間に合う! 逃げて助けを呼ぶんだ!」



 格子にへばりつき、甲高い声でボクに向かって叫んでいたのは……他ならぬマニー。


 ボクは、にわかには信じられなかった。


 この身を案じてくれるクラスメイトが、まだいたなんて……!


 いつからか、ボクに親しくした者はハブられるという、暗黙のルールができてしまった。

 そのおかげでボクは、ケガをさせられても、トイレに閉じこめられても、机を隠されても……誰からも心配してもらえなくなったんだ。


 案の定、まわりにいたクラスメイトたちのマニーを見る目が、腫れ物を扱うように変わる。

 ボクに関わったら無視されることは、マニーも知っているはずなのに……それなのに、ボクのことを心配してくれるなんて……!


 せっかくの彼の思い、応えてあげたいところだけど……今のボクには、その気持ちだけでじゅうぶんだった。


 ボクはマニーに向かって、「ありがとう」の意味をこめて頷き返す。


 そして身体を翻し……グレムリンロワーの群れに、挑みかかっていったんだ……!

■□■□パラメーター□■□■(現在の階数:2階)

挿絵(By みてみん)


□■□■スキルツリー■□■□


今回は『烈蹴斬』と『龍昇撃』に1ポイントずつ割り振りました。

未使用ポイントはありません。


括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。


●潜在能力

 必殺技

  (1) LV1  … 波動弾

  (1) LV2  … 烈蹴斬

  (1) LV3  … 龍昇撃

 選択:打撃必殺技

  (0) LV1  … xカウンター

  (0) LV2  … 爆裂拳

  (0) LV3  … 点穴

 選択:投げ必殺技

  (0) LV1  … 当て身投げ

  (0) LV2  … イズナ落とし

  (0) LV3  … 真空投げ


●料理

 見習い

  (1) LV1  … 下ごしらえ

  (1) LV2  … 焼く・炒める

  (1) LV3  … 茹でる・煮る

 コック

  (0) LV1  … 盛り付け

  (0) LV2  … 揚げる・漬ける

  (0) LV3  … 燻す・焙煎


●錬金術

 風錬

  (1) LV1  … 抽出

  (0) LV2  … 風薬

  (0) LV3  … 旋風

 火錬

  (1) LV1  … 変形

  (0) LV2  … 火薬

  (0) LV3  … 噴火

 地錬

  (0) LV1  … 隆起

  (0) LV2  … 地薬

  (0) LV3  … 地震

 水錬

  (0) LV1  … 陥没

  (0) LV2  … 水薬

  (0) LV3  … 奔流


●サイキック

 ニュートラル

  (1) LV1  … テレキネシス

  (0) LV2  … クロスレイ

  (0) LV3  … テレパシー


●彩魔法

 灰

  (0) LV1  … フリントストーン

  (0) LV2  … プラシーボ

  (0) LV3  … ウイッシュ

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