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四日目

「それ、もしかしたら『怖い』って言ったら帰ってくれるってだけじゃない?」


「え?」


 翌日、鹿島の言葉にあっけにとられた。


 窓を開け放していても、教室内は暑い。鹿島は窓際の席にもたれて、せわしなくウチワを動かしている。窓からの熱風と、ウチワにあおられて、長い髪がばさばさと、なびいている。鹿島はホラー好きだ。席が前後なのでまあまあ話せる。昨晩、メリーさんに話そうとしたのも、鹿島が教えてくれた話だ。


 メリーさんの話をしたら、かなりウケたので、思い出せる限り、詳しく伝えたところ、思いもよらぬことを言われた。


「それは違うと思うけど。俺が怪談を聞かせたら、電話が切れるから、たぶんお話が聞きたいんだと。で、聞くまで帰らない、みたいな」


「でも、佐々木が話し終わったあと、あんた自分で自分の話に、怖いって感想、言ってるじゃない」


 そういえば、最初の日に話し終わった直後、『怖かった?』って聞かれたっけ。で、『怖くなかった』って言った。本当に微妙な話だったし。そのあと適当な話を作って聞かせたけど……確かに。一日目は、自分の話にびびって怖いって言ったし、二日目は、これも怖い話だ、って説得した。昨晩の三日目は、メリーさんの話に怖いって言った……


「えー…… そんなルールあるなら、最初に言って欲しいんだけど……何のために、必死で話考えたり、仕入れたりしてたのか、わからねー」


「無駄だったねー」


 鹿島がけらけらと笑う。話半分に聞いていて、あまり本気にされていない。寝ぼけて夢を現実と勘違いしているうか、いたずら電話に付き合っているだけ、としか思われてなさそうだ。

 こうして昼間に話していると、自分でも気のせいか何かだったんじゃないかと思えてくるから不思議だ。でも、鹿島だって、窓ガラスに映るはずのない影を見たり、気味の悪い電話がかかってきたら笑っていられないと思う。やっぱり何もせず夜を待つというの落ち着かない。『怖い』って言うだけで帰ってくれるなら、気が楽になるな。さっそく今夜、試してみよう。攻略法があるってのは、いいことだ。


「でも、帰ってくれなかったときのために、なんか怖い話ある?」

「なんでもいいのかなー? 私の体験談でもいいの?」

「……幽霊とか見える人だったの?」

「そんな、たいした話じゃないよ。あんま怖くないかも」


 昨晩、話損ねたやつもあるけど、メリーさんが途中まで聞いていたのかもよくわからないし、あれはもう、やめておこう。いまのところ、メリーさんの気に入りそうな? 話のストックはいくつかあるけど、適当な話をしてダメ出しをくらった経験もあるので、なるだけ新しい話を仕入れておきたい。

 強迫観念とらわれすぎかなあ……

 メリーさんが何に納得してお帰りになるのか、ツボがいまいちわからないのでしかたない。


「顔色悪いよ。夏バテ?」


 話し終わった鹿島に心配された。ぼんやりしていて、ろくに相槌も打っていなかったせいだろう。寝不足だからしかたない。


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