壁、もしくは難読症(ディスレクシア)のための読書
幼いころの私は
難読症ではなかったかと思われるほど
本を読むのが苦手だった
声に出して読めばいいとよく言われるけど
声に出してはなお解らない
読みあげる作業に意識を集中
文の意味なんか憶えていない
楽譜を初見で弾くのも同じ
ベートーヴェンの第2シンフォニー
第2楽章のパート譜を
作曲者の速度指定も識らずに
何て技巧を要するんだと勘違い
第2楽章はラルゲットである
不明に気づいてからそののちは
読書速度もラルゲット
四十を過ぎてようやくに
本の中身がわかりはじめる
どうかご寛恕願いたい
私は天才児とは違い
何のとりえも持ち合わせていない
読書ぎらいの克服は
壁のひとつを選んだにすぎず
世間的にはただ奇妙な人
でも長い人生をやり過ごすには
ちょうどいい運動なのかもね