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現状確認、現状予測

ふむん、続き投稿はこんな感じでやるのか、というテスト

「なんでやねーん、なんでやねーん」


実に無表情かつ平坦なツッコミが姿見の前でリピートオンエアー。

ああ、涼やかで透き通った声を耳に、こんな事するさくらも可愛いにゃぁ。等と途中から目的を見失って見惚れること数分弱。

いやいや、そんな事言ってる場合じゃないだろうに


一人ツッコミテイク2

そんな事よりも、そんな事よりも重要な事がある。大事なことなので二度強調するくらい俺の事よりもよっぽど重要だ。

……彼女は、さくらはどうなったんだ?


俺の意識は彼女の体の中にある、だが彼女の意識らしいものは感じられない。この体を動かすのは俺という意識だけなのだ。

正直愛すべき彼女の体を乗っ取る等冗談ではない、彼女の人生は彼女のものだ幸福もそして出来ればこないで欲しいが不幸も。

可能性を考えてみよう、俺がこの体にいる以上、彼女の意識はこの体の中にはない。いやもしかしたら居るのかもしれないが、俺には感じ取ることができない。

では彼女はこの体の中にいないと仮定すると、彼女の意識、または魂というべきものはどこにあるのか?

俺という意識が彼女の体の中に憑依した結果消滅してしまった?

うむ、ありえんな、断言しよう、ありえん。

自慢じゃないが俺の精神力なんぞ、そこらへんにいる一般人以下だ。俺が千人集まっても彼女の精神に勝てるとは思えん。というか、勝てん。

では俺の精神と接触した弾みではじき出されたとか?

だったらその辺りに浮遊してそうだなぁ……だが前者と同じ理由で俺如きではじき出せるとは思えんのも事実。

原作設定に準拠するなら魂状態でも夜族ミディアンの吸血鬼は肉体を再構築したり憑依とか素で出来るらしいしなぁ。

周囲を見渡してみるが、彼女の寝室の小物や彩に彼女らしさ可愛らしさが詳細にわかって嬉しいくらいでめぼしい物はない。

霊体を視る、霊視能力はさくらは持ってたけど魂が俺な状態で見えるんだろうか……。

……ん?


ベッドの上に何か落ちているのに気づく、窓のカーテンは締め切られており室内は暗いのだが、吸血鬼らしく問題なく見る事ができる、暗視能力は活用出来るようだ。落ちていたのは手鏡だ、紫を基調としたこれまた古風で流麗なデザイン。

素人意見だが骨董品店に持っていったら高う売れそうな感じがする。

というか、某都市伝説的な色合いは鏡としてはタブーな組み合わせな気もするんだがどうだろう。

手に取って覗き込むとこれまた曇り一つ、傷一つ無い鏡面がどこか淡い紫の輝きを帯びて……


――これはヤバイ――

電光の如く俺の記憶と本能と第六感が危機を告げる、思考と行動の神経回路が即座に反応し肉体はラグ無く行動に移した。

そして手鏡をベッドに叩きつける。パリンとか音がしたがかんけいねー

俺の記憶が確かならこの鏡はニズグレアの紫鏡、多次元を映す鏡にして無限の並行世界に繋がる扉だ。

何がヤバイって、この鏡、悪霊的ななにかに呪われており制御不能で一定時間覗いた存在を問答無用にランダムで別の世界に取り込むというデンジャラスなシロモノなのだ。

ゲームの外伝ストーリーで主人公とヒロインを欝展開に取り込む、実にえげつないキーアイテムでもある。

淡い紫光は発動の初期動作だ。タッチの差で対処に成功したと考えていい。まさに危機一発だった。

特に激しい運動をしたわけでもないが、精神的な疲労によりゼイゼイと大きく呼吸を荒げる

なんでこんな所に、この鏡があるんだ?外伝はメインストーリーのエンディング終わってからの話だろう?


メインストーリーが終わるまでに多少の差はあるがゲーム時間で二、三年が経過する。学園物なので卒業でエンディングになるわけだ。

今此処にいるさくらの体は十代前半、恐らくゲームの開始時期前後だろう。この手鏡が登場するには早すぎる。


だがそれでいて、現状の理由が納得いく要素が揃ったとも言える。

恐らく彼女はこの鏡の力で魂だけが別の世界、恐らく俺の居た世界に飛ばされてしまったのだろう。

で召喚だか転移だかの起点に俺がいたのじゃないだろうか?

偶然にしては出来過ぎな気もするが、その辺りの疑問への検証は後回しにする。

では、いずれ帰ってくるだろう、少なくとも外伝ではかなり苦労するが帰還自体は出来ていたし、彼女は魔術やその他の神秘への知識に詳しい賢明な娘さんだ。足で纏いの主人公が居なければ外伝の時より帰るのは早いかもしれない。多分。

強くて賢い子だけど寂しがり屋でもあったから、そこらへんが心配ではあるが……。

そうは思っても自分に出来る事は現状ほとんどない。予想と現状把握が限界だ、あとは今からできる事を考えていく位だな。


とりあえず、手元や周辺から順次確認していこう、机に立てかけるタイプのカレンダーを手に取る。

その日付は1996年10月となっていた。ゲーム本編の開始時期が確か1997年4月中盤だったか。体感で十年以上もタイムスリップした事実になんだか不思議な気持ちになる。ゲーム異世界に来ている段階で今更ではあるが。

本編開始前でよかったと安堵、少なくとも6ヶ月の余裕がある。最悪主人公とのイベントを進めるのを俺がやらねばならない、だが、彼女の意思が介在しない状況で進めるとかいろいろと間違っているとも思う。

さくらがそれまでに帰ってきてくれればセーフだ。

だが無為に過ごして良いのだろうか?むしろ6ヶ月の間、さくらの家族をだまくらかして過ごせるかも疑問ではあるが。

何もせずに待ちの体制というのも性に合わない、出来る事はやっておくべきだ、出来る事が判らないなら判る努力をするべきた。

事態が悪化する可能性もあるが、知らずに後悔するよりも知って後悔する方がましだと思うのですよ。


ベッドに叩きつけたニズグレアの手鏡を手に取り相対しない様に慎重に覗き込む、割れた鏡面がじわじわと復元されつつある。しぶとい鏡だよ。まぁ、そんなのだから手加減無用で叩きつけたのだけど。

さくら帰還の鍵はこの鏡だ、元凶もこれだが、彼女の帰りを遅らせるのも早めるのもこの鏡の取り扱い次第だろう。

まぁ、俺の予測が正しかったらの話なのだが、状況証拠としてはかなり有力だと思うのだ。

ともあれ、しつこく言うが俺の予測が正しければ鏡を通じて、俺の体と俺の魂、彼女の魂とこの体のラインみたいな物がまだ繋がってると思う。


危険だが定期的にこの鏡を活性化させたりするか、ラインを通じて通信信号的な何かを送る事ができればさくらの帰還を早める事が出来るんじゃないだろうかと判らんなりに考えた。

鏡の活性化は時どきこれを覗く感じだろうか、正直綱渡り感があって嫌だ、うっかりすると此処からさらにわけのわからん世界にかっ飛ばされるかもしれんのだ。異世界的二重遭難とか断固拒否したい。やる時は細心の注意を持って行おう。

そしてラインからの信号送信?つーてもどうやればいいのか見当がつかん、やっぱり魔術とか霊能的な方法だろうか。この屋敷内にその手の魔道書的なものがあるか調べてみるべきか。


本棚は先ほどざっくり周りを見た時にあった。そちらから先に調べてみよう。えらく重厚な黒木の十段棚が鎮座ましている。どこもかしこもアンティークめいているな。お金持ちですねブルジョアジー。自宅の本棚なんか三段棚のファミリーショップ800円の安物ですよ。妙な敗北感を感じながら蔵書の内容を確認していく、うわぁ、意外に少女漫画とかあるよ。いや、なんだかんだで、さくらさん十代の女の子ですから買ってても可笑しくないんですけどねハーレークインな感じのとかあんまり俺は読まない感じの小難しそうな本とかがある。乱読家なんだな。実際ゲームでも日頃彼女は本の虫だった。

上から下まで見てみたが、目的の本はその中にはなかった、思うに魔道書とかSAN値が下がりそうな物体だし、無造作にこんな所に置いてるはずがないのかもしれない。だとすると所在は専用の書斎とかか。

そう思い至り、俺は書斎を探して私室から出ることにする、作中さくらの家に招かれる機会はあったが、流石に屋敷の構造を詳細に描写される事はなかった。少々不安だが動くべき時だと思う。出入り口であろう重厚な扉に向けて足を向けた。


扉の向こ側には広い廊下が続いており、薄暗かった。

等間隔で置かれた窓には厚いカーテンが置かれており、遮られながらも篭れ出る光から時刻は昼間か早朝だと予測できた。

自室だけではなく廊下までこれなのは吸血鬼の屋敷らしいと言えるだろう。もっとも夜族ミディアンにとって日光は致命的なものではないらしいが。

そんなことを思いながら歩けば意外と早く書斎にたどり着いた。

左右で開く扉というよりも門という方が正しい雰囲気の入口にちょっとたじろいだが、悩んでも仕方ないだろう。下手にこんな所でウンウン言っていて家人に見つかっても困る。できれば心構えが出来てから会いたいものだ。

そして書斎でいわゆる一つの魔道書を手にとった訳だが、意外な落とし穴が待っていた。


「ド、ドイツ語にラテン語、だと?」


うん、魔道書というものを舐めてました。英語とかだと訳して読むのに時間かかるなと思っていたが。日本語どころか英語ですらないよ。アラビア文字だとか古代ヘブライ語だとか多国籍極まりない本達が待っていたのである。

別に英語だって得意な訳ではない自分のオツムには厳しいよ本当に。

おもむろに年代物の一冊を手に取りながらページをめくる、中身も全部ラッテーンの香り漂う異国の文字、しかも手書きでびっしりと書き込まれた物だ。


「流石にハードルが高すぎる【久遠に臥したるもの死する事なく、怪異なる永劫の果て、死すらも終焉を迎えん】とか読めるわけない……」


……ホワイ?

なにかえらい流暢に鈴を鳴らす様な抑揚で言葉が紡がれた。

言葉は日本語では無かったが、意味は頭にするりと浮かんでくる。

えーと、その、何? このチート地味た現象?


額に人差し指を当ててクールになれと自分に自己暗示、この作品世界の設定を思い返しつつ、現実で聞いた事のあるまた聞き知識をひねり出して合わせて思考する。


そもそも、人間の記憶というのは肉体、脳に蓄積された電気信号の情報である。

例えて言うなら、肉体は車であり、精神とか魂は運転手だ。

ならば、本来の持ち主ではなくとも、一切変わることない体に別人の魂と精神という運転手が乗り込んだ場合でも。その体の性能を引き出すことは不可能ではないのではないだろうか?

もちろん、他人の車に乗った場合、自分の車との違いで上手く運転出来ない。基本の操縦方法は同じでも微妙な違いがあるので色々な部分で戸惑うものだ。

自分とさくらのスペック差はF1と子供自転車(三輪車)位あると思うので運用法の違いは普通の場合の比ではない、いきなり十全に操縦はできないだろう。


またこの世界における神秘事情では、肉体=精神=魂の三位一体で生命体は存在している。

肉体は物質界へのインターフェースであり保護機構

肉体が魂という情報の宿る器であり、精神は魂という苗床が育てる作物と評されている。

いうなればパソコンのハードが肉体でありソフトが魂。様々な用途となるアプリケーションが精神である。


さて、自分という精神と魂が本来の彼女の体の代わりに宿っているとは言え

彼女の脳に蓄積された記憶が初期化される訳ではないだろう、現時点でもその記憶は脳に刻まれている。

特に生存や社会生活を営む上で無意識に使用する記憶は特に強く表に出るのではないだろうか。

言語や生活習慣等は特にその傾向が強く、システマチックに言うと本来の持ち主ではない自分にも使用する権限が公開されているのではないか

そういえば、この書斎を探す時もそれほど迷うこともなくたどり着く事が出来た、これも、さくらの記憶を無意識に利用した結果ではないだろうか。


ただ、さくら自身の今までの記憶は考えようとしても曖昧だ、なんとなく知ってるような知らないような、思い出したくてもど忘れして思い出せない案件を思い出そうとするような時に似ている。

これはたぶん、自分の魂とさくらの体とがブレているという事だろう。そもそも本人ではないのだしな。


ともあれ図らずしも言語の壁を突破することが可能になった。

ま、自分の手柄ではなくさくらの力だが、使えるものはありがたく使わせて貰おう。

ぱんぱんと手を叩き、さくらに感謝の祈りを捧げつつ、それっぽい本を幾つか手に取り自分に必要そうな項目を確認していく。

魂とか、精神とか、肉体とか、世界とか、異世界とか、空間とか、転移とか

そんな感じのサムシングを探して時間は流れる。


さて、結果から言うとほとんど何もわからなかった。

もっとも、一時間やそこらでこの書斎のすべてを調べ尽くせたわけではないし、自分自身の理解力の壁もある。

なら判るまで調べられればよかったのだが、それを中断せざるを得ない出来事が起きたからだ。




とりあえず、垂れ流すように書くスタイル



そして、こそっと増える。

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