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外道王女の行く末は  作者: 不明
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攻略キャラを把握せよ!

 剣術や魔法の鍛錬のほかにも、私には平行して行っていることがあった。それはシャルリーヌを教育することである。彼女には魔性の女となってもらい、各国の要人である攻略キャラたちを篭絡して逆ハーを築いてもらいたいのだ。別に彼女を地獄に突き落としたいわけではない。だったら何故そんなことをする必要があるのかというと、誰もは一度は憧れる"あれ"のためである。


 そう、つまり私は世界征服がしたいのだ。


 せっかく王族に生まれたのだ。世界の覇権を握らなくてどうするというのだろう。しかも戦いともなれば、血がいっぱい見れる。私の欲求を満たせて一石二鳥!

 戦場に立つ自分を想像すると、今から武者震いが止まらない。絶叫と悲鳴が飛び交う中で、剣を振るい血にまみれる私。この銀の髪に鮮血の赤は映えることだろう。そしてあの芳しい心躍る芳香を全身に纏うのだ。ああ、何て素敵なの。もっと悲鳴を! もっと血飛沫を! 命尽きる時の断末魔を私に聞かせて!


「お姉さま? ねえ、お姉さまったら!」


 はっ! いかんいかん。今はシャルリーヌを教育中だった。

 シャルリーヌは小首を傾げて、不安げな眼差しを私に向けている。上目遣いがとても愛らしい。魔性の女にとは思ったけれど、彼女の持ち前の純粋さと可愛らしさを損なわないようにしなければ。


「ねえ、お姉さま、本当にこの方達がこの国を助けてくれるのですか?」

「ええ、そうよ。それと、彼らはシャルリーヌの運命の人たちでもあるのよ。私の言うことに間違いはないわ。その証拠に、ラウル・イグレシアは我が国の魔導協会に入り込んできたでしょう?」

「そうですね。二年前お姉さまが言っていらした通りになりましたね。でも、私にできるでしょうか……。複数の殿方と……その、いい仲になるなど、不道徳ではありませんか……?」

「そんなことないわ。魅力ある女性が沢山の男性にかしずかれるのは悪いことじゃないわ。むしろ当然のことなのよ。そしてあなたにはその魅力が備わっているの。だから自信を持って。さあ、もう一度彼らの特徴をおさらいしてみましょうか」


 私は紙に書かれた攻略キャラたちの名前を指先でなぞり、それを復唱した。

 まずはランシュテールにとって長年の宿敵である、東北に位置するエストラーナ王国。ここには、女好きのチャラ男、テオバルドがいる。そして次に、処女厨の神を信奉しているキモい国、最西端のチキジマ神聖国。ここには、ショタ要員である年下ワンコなエーレンフリートがいる。そして最後に、北のメルグ帝国、堅物眼鏡のヴァルラム。いずれも軍部や政治の中枢にいる要人だ。彼らを足がかりに、情報を引き出して勝利を掴むのだ。


「私は彼らと絆を深めればいいのですね。でもカナイド王国はいいのですか? 友好国ですし、更なる絆を深めたほうがいいと思うのですが……」


 カナイドはランシュテールの西にある小国だ。三方をチキジマ、メルグ、ランシュテールという大国で囲まれているが、それでもしっかりと国土を守っている小さくとも侮れない国である。もちろんここにも攻略キャラはいる。さっきシャルリーヌとの会話でチラッと出した、ラウル・イグレシアがそれに該当する。

 ラウルは攻略キャラ中唯一の王子で、私の婚約者でもある。そして前世の私が一番のお気に入りだったキャラでもあるのだ。

 濃紺のぼさぼさ長髪に、野暮ったい格好の常にヘラヘラしている魔法オタク。しかし見た目を整えれば、あっという間に美しくきりっとした青年に早変わり。私はギャップ萌えに弱かった。それから声も最高なんだよね。ヒロインを口説く時のみに聞ける、あの低音で色気ある甘い囁き。それが聞きたくて、その場面だけ何度もプレイしたっけ……。

 しかしそれがリアルとなると話は違ってくる。二次元とリアルの好みは別物。長髪の男とか将来禿げそうで嫌。私は中途半端な禿を夫にしたくない。それに奴の存在に危機感すら覚えている。

 素性を偽り、ランシュテールに潜り込んだラウル。彼は各国の魔法に興味あるとかで、護衛も兼ねてレオンと供にヒロインの旅に同行することになる。そして道中絆を深めていくうちに、二人は愛し合うようになり結婚するのだ。

 当時はそれを玉の輿ラッキーって単純に考えていたんだよね。でも今の私の立場からしてみれば、どう考えてもスパイです。本当にありがとうございました。

 だからラウルが魔導協会に入った時から、ちゃんと監視は付けてある。すぐ追い出すことも考えたが、それよりも、もっといい奴の利用方法を思いついたのだ。

 というわけで、ラウルのことは様子を見つつ、時期が来るまで寄らず触らずでいこうと思っている。


 私は微笑み、シャルリーヌに言い切った。


「必要ないわ。だって友好国ですもの」


 いずれ私の国にするけどな!



 こうして私はシャルリーヌの教育に熱を入れた。三人の生い立ち、趣味嗜好、私が知りうる全てのことを彼女に徹底的に教え込んだ。

 それとシャルリーヌのことで忘れてはならないのがこれ。彼女への神の啓示だ。これは私の計画には邪魔でしかない。平和とか望んでないから。神とかよくわからない存在が人間の世界に口出しして欲しくない。

 だから胡散臭いものが寄り付かないように、バルニエ邸にこっそりと悪魔崇拝関係の如何わしい品々を、そこかしこに運び込んだ。もちろんシャルリーヌ自身にも身に付けさせた。そのおかげで、バルニエ邸では近頃怪奇現象が多発しているらしい。効果はばっちりだ。これで彼女に神の啓示とやらはこないはず。


 今日も今日とて伯母さまへのご機嫌伺いついでに、禁書を持ち込んだ。そして酒蔵に忍び込んで、禁書の中にある悪魔の紋章を描いておいた。

 あ、この紋章、子供の頃から好きなやつじゃん。でも、いつどこでみたんだっけ……。うーん、忘れちゃったな。まあいいか。ふーん、ミシャンドラっていう悪魔なのか。この禁書によると、戦争を勃発させる悪魔らしい。今の私にピッタリじゃない!

 ついでだし願掛けしておこうっと。えーと、うん、こんなもんかな。


”ランシュテールが戦争で常勝しますように。レオン・ド・ブランシャール”


 自分の名前を書いて、私の命とられたくないからね。レオンよ、安らかに眠れ。


次回更新土曜20時

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