勝敗
今年初の更新です。
今年は、去年よりは多く更新していくつもりです。
目標は、最低月一です。
頑張りたいです。
「あっはは、相変わらず、メノは可愛いわね。セリナにだけよね〜、そんな可愛い反応するのわ」
ギロッと冷たい目で睨んでくるメノを恐れることなく、ランは笑い続ける。
「しょうがないよ、ラン。メノはまたまだ子供なんだから。からかったら、ダメだよ」
堪えきれない笑みを浮かべながらも、ラギがメノを庇う、ように見せかけ、からかう。
「だったら、笑うなラギ。第一、俺は子供じゃない」
憮然とした不機嫌の声にますますランとラギの笑いは深くなる。
「知ってる?メノ、子供ほどそんな事言うんだよ?」
ラギは笑いながら、更にメノをからかう。
端から見れば無表情のメノだが、セリナ達からしてみれば、口惜しそうにしてる事が良くわかる。
「やられたわね、メノ。お姉さん達に勝とうなんて、まだまだ無理ね、その調子じゃ」
ニヤニヤとからかってくるランにボソリとメノが呟いた。
「誰が姉だ。いい年だろうが」
小さく呟いたに過ぎなかったが、それを聞き逃すランではなかった。
「ふ〜ん、メノってば、そんなこと思ってたのね」
にっこりとそれこそ何も知らなければ、極上の笑みをとしか思えない笑みでランは笑った。
そう、何も知らなければ思わず魅とれてしまう綺麗な笑み。
だがそれは、知る者が見れば、ランの怒りの表情でしかない。
「あ〜ぁ、御愁傷様。メノってば、墓穴掘る癖、直しなよ。どうせ、勝・て・な・い・んだし」
からかうラギの言葉にメノは答えるどころではかった。
「さぁ、メノ。覚悟はいいわね。どうしてあげようかしらね」
にこりと更に笑みを深くしながらも、その細い手は、パキパキと恐ろしい音を立てている。
表情は変わらないメノだったが、顔は青ざめ脂汗が流れている。
セリナに助けを求めようとするが、その前にガシッとランの両手がメノの顔を掴んだ。
「さぁ、メノちゃ〜ん。お・姉・さ・んと一緒に楽しく遊びましょうか?」
全身を震わせ、必死に逃げようとするメノだが、体格では劣るランの手がガッチリとメノの顔を掴み動くことが出来ない。
暴れるメノに何を思ったのか、ニィ〜ッコリとメノの顔を覗き込むようにランは笑った。
そして、優しげな声でメノの耳元で囁いた。
「心配しなくても、大丈夫よ。一生のトラウマになるぐらい、楽しい思いをさせてあ・げ・る」
ランの言葉が聞こえたのか、ラギも楽しそうな笑みを浮かべた。
「良かったね、メノ。うらやましいよ」
「だったら、代わってやるよ」
メノの切羽詰まった声には、ラギは実に楽しそうに首を振った。
「残念だけど、僕なんかにメノの代わりは務まらないよ。若輩者だからね、僕は。まぁ、セリナ達の事は心配しなくていいから、思う存分楽しんで来てよ。僕は留守番してるからさ」
「そうよ。観念しなさい、メノ。今夜は寝かせないわよ。」
フフフ、と楽しげな笑いと共にランはメノの首を掴み、何処かに去っていく。
一点の曇りもない無邪気そうな笑顔でラギは二人を見送る。
「いってらっしゃい、楽しんで来てね」
「お土産、楽しみにしててね」
ここで、それまで黙々とスープを飲んでいたセリナが遠ざかって行く二人に声をかけた。
「明日は、朝早いから早めに帰ってくるように。遅れたら、置いていくからね」
セリナの声が聞こえたのか、ランが遠くで手を振ってるのが見えた。
「これで、よしっと」
1つ頷くと、呆気にとられているヤイトにセリナは、笑いかける。
「気にしなくて大丈夫よ、ヤイト。ランは加減を知ってるから。それに、いつもの事だしね」
どこか呆れたように言うセリナに、ラギも苦笑する。
「しょうがないよ。メノは、まだまだ子供で墓穴掘る性格だからね」
ラギの答えにセリナも苦笑する。
二人の会話にヤイトも釣られて苦笑する。
ヤイトがスープを食べ終わったことを確認すると、軽くセリナは背を伸ばした。
「二人とも今晩は帰ってこないし、ヤイトも疲れただろうし、もう寝ようか」
それにこくりとヤイトも頷いた。
「じゃ、寝る準備しておくから、ヤイトは茶碗片付けてくれるかな?」
ラギの声に頷くと、茶碗と明かりを持ってすぐ近くの川にヤイトは向かった。
精神と外見は同じ時を過ごす。
されど、同じように成熟していく訳ではない。
竜も人も。