名前
更新は不定期で亀より遅いですね。
次回は、今回よりは早くお届け出来るよう、頑張ります!
「ねぇ、名前を聞いてもいい?」
はいっとコップを渡しながら、セリナが言った。
喉を優しく潤す温かく甘い白湯を飲みながら、コクッと頷いた。
「良かった。私はセリナ。あっちの無愛想で冷たそうなのがメノ。で。小さいのがラギ。こっちの美人さんはラン」
セリナの紹介の仕方にランは微苦笑し、ラギとメノは更に不機嫌になった。
だが、そんなことは気にしないセリナは少年に目を戻した。
「僕は、ヤイト」
「ヤイトか。ヤイトって、呼ばすてにしていい?あっ、私のことも呼ばすてでいいよ」
明るいセリナの声に促されるようにヤイトの顔にも弱々しい笑みが浮かんだ。
それにほっと安心したような笑みをセリナは浮かべた。
「ヤイト、お腹空かない?ちょうどスープが出来たとこだし。メノが作ったのは、美味しいわよ」
ヤイトから離れ、スープを注ごうとしたが、ヤイトの不安そうな表情に気付き、動きを止めた。
ヤイトの恐怖は近くに人のぬくもりがあることで緩和されていた。
一瞬、悲しげな笑みを浮かべると、セリナはヤイトの隣に座り直した。
「ラ〜ン。スープ二人分ちょうだい。足、痺れちゃった」
セリナが座り直すとヤイトは嬉しそうに安心したように笑った。
「りょ〜かい」
ランがヤイトに手渡した具がたっぷりと入ったスープは確かに美味しそうだった。
ゆらゆらと温かな湯気が立ち上り、いい匂いが鼻を擽る。
朝から何も口にしていなかったヤイトは、思わずごくりと喉を鳴らした。
だが、セリナを初め、ラン達が未だに食べて無いことに気付き口を付けられなかった。
「遠慮しないでいいよ。ヤイトはお客様なんだから。それにまだたくさんあるんだから」
皿を抱えたまま、食べようとしないヤイトにセリナは声をかける。それでも、口を付けようとしないヤイトをみて、先にスープを食べ出した。
美味しそうに食べるセリナにつられるようにしてヤイトも食べ始めた。
「……美味しい」
「でしょう?メノの特技はこれだけだもの」
ホッと安心したような晴れやかな笑みをセリナは浮かべた。
「…悪かったな」
少し不貞腐れたような声が炎の向こうから聞こえてきた。
メノの様子にくすくすと笑いながら、セリナはメノをなだめにかかった。
「褒めてるのよ?メノ。私はあなたの作ってくれた料理が一番好きよ」
「……それなら、いい」
焚き火に更に薪をたすメノの顔は僅かに赤くなっていた。それが、火の照り返しで無いことに気付いたランがぷっと吹き出し、笑い始めた。
命まで失いかけた少年。
それを救ったのは、人間から裏切られた少女。




