仲間
久々ですね。読んで下さる方、ありがとうございます。
「セリナ」
少女は自分を呼ぶ声にキュッと唇を噛むとさっきまで浮かべていた辛そうな表情を消し、振り返った時には明るい笑みを浮かべていた。
「なに?メノ?」
「生き残りはコイツだけだ。他は居ない」
一切の感情が込められていない声。
セリナの名を呼んだのは、20歳ほどの青年。
瞳は黒味を帯た深紅。
髪は金の混じった燃える炎の様な紅。
鮮やかな色彩を纏いながらもどこか冷たい刃を思わせ、近寄りがたい雰囲気が漂う。
「そう。ありがとう、メノ」
悲しげな笑みを浮かべ、少年を見るセリナにメノは僅かに不機嫌そうにした。
「メノ、笑顔、笑顔」
突然、辺りに明るい声が響いた。
「ラン」
「ほら、セリナも笑いなさいって。一人だけでも助かったんだから」
ランと呼ばれたのはどことなく色気の漂う妙齢の女性。
肩で切り揃えられた銀の髪に鮮やかな緑の瞳。
活動的な性格を表すように、長ズボンに半袖の上着と実に動きやすい格好をしている。
「ほら、笑って。あなたは精一杯やってるんだから。それにね、あなたは否定するけど、あなたに罪はないのよ。始めに過ちを犯したのは人の欲なんだから。あなたはその犠牲になっただけ」
じっとセリナの目を見つめ、そう言い切った。
「ありがとう、ラン。」
微笑むセリナにランは嬉しそうな笑みを浮かべた。
メノの雰囲気も僅かに柔らかくなった。
「セ〜リナ」
「ラギ」
突然、声と共にセリナに飛び付いて来たのは、12、3歳ほどの少年。
短い銀の髪に楽しそうな少し垂れ気味の銀の瞳。
見る者が思わず目を細める愛らしい容姿をしている。
「ラギ、急に飛び付かないで。危ないでしょう」
しゅんと下を向き、ラギは上目でセリナを見る。
瞳を潤ませ、悲しげにする。
「セリナは、僕のこと、嫌い?」
誰もが慌てて否定し、必死に慰めるほど、愛らしく儚げな姿。だが、セリナ達には通じなかった。
「そんなこと言ってないでしょ。危ないからやめろって言ってるの。だいたい、私にそれは効かないわよ」
呆れたようにセリナは言った。
「は〜い」
なぜか楽しそうにラギは返事をした。
「ねぇ、セリナ。早くここから出ようよ。お腹すいた〜」
ぐいぐいとセリナの腕を引っ張る。
「分かったから、手を離して」
痛いのかセリナは眉をひそめた。
「は〜い」
セリナの腕を離すと、ぱたぱたと走り出しす。走りながら、振り返った。
「僕、先に行って場所探しておくね」
返事も待たずにラギは走り去った。
「ラギったら、元気ね。見習わなきゃね」
苦笑するとセリナはぐるっと目に焼き付けるように周りを見渡す。
「行こっか」
しばらくしてセリナはメノとランに晴れやかに笑い掛けた。
諦めはしない。自分を許すことも出来ない。それでも一緒に居てくれる者がいる。
だから、笑おう。
人が忘れた罪を一人背負う少女と共に旅するのは、少女に罪無きことを知る者。