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願いと決意

またまた遅くなりました。

これからも気まぐれに更新だと思います。

穏やかな澄んだ金色の瞳が少女を見つめた。

少女もまた臆することなく、椿を見つめた。

「…私が分かる?椿」

「いいえ。私には貴方が誰だか分かりません。ですが、私の魂はあなたが誰か知っています。あなたが信頼に値することも。どうか、あなたの名前を教えて頂けませんか」

申し訳なさそうに恥じ入るようにうなだれながらも、乞うるようにセリナを見つめた。


「私は、セリナ。かつて祝福を受けし魂をこの身に宿す者」

椿の様子に柔らかな笑みを浮かべた。



「セリナ様」

そっと己に刻み込むようにうやうやしく名を呼んだ。

「セリナでかまわないわ。様はいらないわよ、椿」


「ですが、あなた様は」

「椿、私は私よ。かつての私が犯した過ちを償っているだけ。」

「あれはあなた様の罪ではございません。愚かなる人間が犯した罪です」

今までとは違う強い口調で椿は怒りを露にした。

「椿。私も人間であり、罪の一端を背負っているの。今、それを覚えているのは、私だけ。それにね、王を取り戻せるのも私だけ。そしてあなた達に取り戻してもらいたいのよ。偉大なるその姿を。それが私の唯一の望みであり償い。誰よりも優しく気高きあなた達を狂わせてしまったのだから」


なだめるような優しく悲しげな声。けれど、同時に声の中には強く凛とした響きがあった。

前を向くセリナから感じ取れる光を椿は嬉しげにまた眩しげに見つめた。

歓喜と共に。



「椿、今のあなたなら、行くべき場所が分かるわね。里についたら、名乗りなさい。それが鍵となるから」

椿は深々とセリナに頭を下げる。

「本当にありがとうございます。セリナ様のおかげで正気を取り戻す事が出来ました」


セリナは軽く首を横に振る。

「私は大したことはしてないわ、椿」

「私にとっては、本当に助かったんです。それを否定しないで下さい」

諭す椿にセリナは笑みを浮かべた。

「そうね。ありがたく受けとるわ、椿。そうそう、皆に伝えて。あと、二十日ばかりしたら戻るからって」

「はい、分かりました。どうぞお元気で」

心配そうな椿に明るく笑いかけると、セリナは頷いた。

「気を付けるわ。あなたも気を付けてね、椿」

「はい。おかえりを楽しみにしてます。どうかセリナ様をよろしくお願いします」

最後に深々とセリナの後ろに立つ人影に頭を下げると美しい翼をゆっくりと広げた。

二度、三度と翼を動かすと大空へと舞い上がった。


「あなたに幸あらんことを」

去り行く椿を見つめ、セリナは呟いた。何かを堪えるように空を見つめ続けるセリナの名を冷たい声が呼んだ。


少女の罪と人の罪。

償うべきはどちら?

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