プロローグ
「なんだい。今頃気づいたのかい」
口ではそう言っていたものの、老人は特に驚きを感じた様子ではなかった。
「そう。この街にゃお前さんのように、いろんなヤツラがいろんな所からやってくる。いったいどこから、と聞かれても困っちまうがな。……まぁ、そんなことはどうでもいいんだが、それこそいろんな所から、だ。他の地域、他の国、他の星、他の銀河系、他の宇宙、お前さんももう見ただろうが、物理法則からしてまったく違う他の宇宙……そうそう最近だとオムニバースとか言うんだったか……」
老人は気だるそうにそれだけ言うと、妙に黒目が大きい瞳でジィッと俺を見つめながら、更に言葉を続けた。
目の周りは異様なほど窪んでいて、話を聞いている内に、まるで小さい頃にテレビで見たグレイタイプの宇宙人のそれそっくりに見えてきて、無意識のうちに距離をとっていた。
「兎にも角にもそういうことだ。ここにはたくさんのヤツラがいる、そいつらが今まで誰一人として試さなかったと思うかい? いわんや、そういう事だ。……全員諦めたよ。そして今までの奴らと同様、街の住人の一人になって消えていった。分かるか? 砂漠や海にあるものを見つける事すら難しいのに、その何かすら分からないんじゃ、どうしようもないだろう?」
最後に、どうだい? と言ったきり老人は俺に興味を無くしたようで、煌々とネオンが輝いているストリートの方へと体を向けてしまった。話は全て終わったということだろう。
「…………」
俺は何も言えなかった。
痛いところを突かれた? そんなもんじゃなかった。
本当に、言って欲しくないことをガツンと言われて、そして、他の選択肢が全て消え去ったからだ。
正直、このまま全てを諦めてしまいたくなった。
強がりに聞こえてしまうかもしれないけど、今の言葉を聞いたからとかでもなく、本当に、本当に何の糸口も見つけられずに何日も何日も時間が過ぎ去っていたからだ。
このまま全てを忘れて、あの街で喧騒の中でバカ騒ぎしながら一生を終える、それも良いかもしれない。
でも、今の俺にはそんなこと出来なかった。
「ん? 行くのかい? 物好きだな」
老人は、顔こそ明後日の方を向いてはいたが、その口ぶりは久しぶりに珍しいものが見れたと言わんばかりで、思わず表情を見てみたくなったけど、それでもその顔を確認するのが怖かったから、すれ違いざまに軽く会釈だけして、俺は街へと繰り出した。
悔しいけど、惚れた弱みには逆らえない。
今は自分の都合より、彼女のためにがんばろう。
それが、このどん詰まりの状況でも俺を動かす最後の原動力になっていた。
目の前に広がるゴミ溜めの街で、見つかるのかさえも分からない宝を探す探究心への
まずはじめに、ご覧になっていただいてありがとうございます。
初投稿&新連載です。
なるべく早く次のを投稿していきたいと思っていますが、実際は秋の夜長に月を肴に、お酒でも飲みながらのんびりと待っていられた方が良いかもしれないです。




