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異世界転移2周目なので頑張ろうと思う  作者: しぃ
第4章 勇者覚醒編
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第30話 再びエルフの里へ、そして一悶着

章設定を忘れていたので、変更しました。

 昼過ぎ。

 孔一行は、準備を整え、エルフの里へと向かうことになった。


「レオンさん、ありがとうございました!」


 見送りにやって来たレオンに、亮太が代表して礼を告げる。


 本当は、レオニスが勇者出立パレード的なものを開催しようとしたのだが、亮太が固辞したため、レオンだけが見送りをすることになったのだった。


「いえ、私こそ、皆さんとの修練で得られるものが多くありました。皆さん、無事に魔王を倒して来てください」


 亮太とレオンは長い握手を交わし、そして離れる。


「それでは、お元気で!」


 大声で別れを告げるレオンに、全員で手を振ってから、孔たちは王城を出た。



「さて、とりあえず冒険者ギルドに行こうか」


 城を出ていの一番に、亮太がそう言った。


「冒険者ギルド?どうして?」


 クラスメイトの誰かが問う。


「冒険者カードがあれば、身分証明代わりになるからな。それに、勇者として活動するより、冒険者として活動した方が都合がいいんじゃないかなって」


 勇者として活動しない、と言うのは、事前に話し合って決められたことである。

 勇者として大々的に行動すれば、ネメシアのような者に狙われ、滞在中の国・街に迷惑をかけることになるだろうからだ。


 そして、孔たちは冒険者ギルドに立ち寄ることになった。



ーーーーーーーーーー



「よし、じゃあ、エルフの里に行こうか」


 一時間ほどしただろうか。

 全員が、『ランクアップ制度』を使って、B級に上がることができた。

 ノルディア支部の試験官が、すごく哀愁の漂う感じで座っていたのは、見なかったことにするべきだろう。試験官は、悲しそうに、「全員に負けた」と言っていた……。


 気を取り直して。

 孔たちはノルディアを出て、人目につかない場所にたどり着いた。


「で、ここからどうやって行くの?」


 道案内は、一度エルフの里に行ったことのある孔がすることになっているので、亮太が孔に問いかける。

 孔はその問いに、胸を張って答える。


「まあ見てろって。イルーシオ!」


「……なんだ?」


「本体になってくれ」


「仕方がないやつめ」


 訓練場に置いて行かれたことで不機嫌そうな様子のイルーシオ。

 孔は気にせず、『本体』になってくれと頼む。


 そして、イルーシオの体から煙が噴出し……そこから、幻影竜の姿で現れる。


「ぐるるるるぉぉぉぉ!」『うむ、やはりこちらの姿は居心地が良いな!』


 鳴き声を上げながら、念話で喋るイルーシオ。


「よし、みんな、イルーシオに乗ってくれ……って、どうした?」


「……こ、これが、イルーシオさん?」


 幻影竜の姿を見て、固まる一同。

 亮太が代表して、孔に問いかける。すると、孔は当たり前だぞ、と頷く。


「俺、とんでもない人に喧嘩売ったんじゃないかな……」


 亮太が呟きながら、イルーシオに飛び乗る。

 それを見て、クラスメイトたちも硬直が解け、イルーシオに乗り始めた。


『コウ、悪いが乗せてやれんぞ』


「分かってるよ」


 イルーシオがいくら大きいからと言って、三十何人も乗るのは無理がある。これでも、幻影の魔法で無理をして乗せているようだ。

 孔はイルーシオの言葉に頷き、『元素体(エレメンタルボディー)』を発動する。


「『元素体(エレメンタルボディー)』。……シル、おいで」


「ん」


 孔の元に集まる緑の光に見惚れていたシルヴィアに呼びかけ、抱き抱える。


「よし、いいぞ」


 孔がイルーシオに言うと、イルーシオは巨体で頷き、翼をはためかせる。


『では、飛ばすぞ!ついてくるが良い、コウ!』


「おう!」


 イルーシオはそう言うと、とてつも無い速度で飛び始める。

 孔も、全力を出してそれに追いつく。


『ほう、中々やるではないか』


『まあな』


 喋ることが難しいので、孔も念話に切り替えて話す。


 イルーシオの背に乗るクラスメイトたちは、亮太を除いて全員気を失っていた。

 亮太は、リーダーの責任感的なやつで、頑張って耐えているようだ。

 ちなみに、シルヴィアに関しては、前にも同じようなことをしているので、慣れた様子で眼下の景色を見ている。


『では、もう一段階加速するぞ!』


 イルーシオはそう言って、翼をはためかせるとこれまで以上の速度で飛翔する。

 孔はため息をつきながら、さらに加速した。



ーーーーーーーーーー



「……誰か、浮遊魔法を開発してくれないかな」


 疲れ切った様子の亮太がそう言った。

 他のクラスメイトは、気を失っていたために、大して疲れていない様子。


「まあ、がんばれ」


 肩をポンと叩いておくと、孔はイルーシオに話しかける。


「雷で打たれなかったな」


「うむ……。コウが一緒だったから、配慮してくれたのやもしれぬ」


 イルーシオはすでに人の姿に戻っている。顎に手を当てながら、そう言った。


 そして、孔たちは小屋の中へと入った。


「じゃ、行くぞ」


 そして、魔法陣に魔力を込め――浮遊感が訪れる。

 数秒後、浮遊感が消え、前にも見た景色がやってきた。


「わぁ、これ、この世界に来た時にも感じたやつだ!」


 柚葉がはしゃいだ声で言っているのが聞こえた。


 そして、前のようにリィエルが出迎えた。


「コウさんは久しぶりねぇ。シルヴィアも、お帰りなさい。そちらの方々が、今代の勇者たち?」


「ええ、そうです。こいつが、代表?リーダー?の、亮太です」


「佐渡亮太です」


 リィエルに亮太を紹介すると、亮太が礼をしながら名乗る。それに対して、リィエルもエルフ式の礼を返す。


「初めまして。リィエルよ」


 二人は握手を交わす。

 それを見て、リィエルに見惚れていた男子たちが、硬直を解いた。


「お、俺も!握手してください!」


「ず、ずりぃぞ!俺も!」


「え、えーっと……?」


 アイドルか何かなのだろうか?

 握手会に押しかけるファンのように、男子たちがリィエルに握手を求める。

 リィエルは、突然の出来事に困惑している様子だ。


「みんな、落ち着け。エルフの皆さんにはお世話になるのに、礼を欠いてどうする」


「そうよ、男子たち。気持ち悪いわよ」


 亮太が紳士的に止め、柚葉が男子たちをぐさっと刺した。

 男子たちは、うっ……と呻き声を上げ、押し黙った。


「リョウタさん、ありがとうねぇ。それじゃ、こっちよ」


 リィエルは笑顔で亮太に感謝すると、案内を始める。

 恐らく、エルセリアの元に連れて行かれるのだろう。イルーシオが、緊張しているのが見えた。


「ま、なるようになるさ」


 肩をポンと叩くと、イルーシオは孔に頼む。


「頼む、いざとなったら、せめて我が安全に逃げれるようにしてくれ……」


 懇願するようなイルーシオの目を見て、孔は苦笑しながら頷いた。



 そして、エルセリアの部屋に辿り着く。

 リィエルがノックをすると、「入りなさい」と言う声が聞こえてきた。


「エル様ー。勇者の皆さんを連れて来ましたよー」


「ご苦労、リィエル」


 エルセリアはリィエルにそう言うと、初めて会った時のような真面目なオーラを放つ。


「新たな勇者よ、ハイエルフが一人、エルセリアがエルフを代表して歓迎します」


「こ、これはご丁寧に。俺は、リーダーの佐渡亮太です」


 亮太が挨拶を返す。

 今度は、男子たちも大人しくしている様子だ。尤も、反省したわけではなく、エルセリアのオーラに押されているだけのようだが。


「さ、とりあえず……そこの邪竜の始末が必要ね」


「…………」


 エルセリアが真面目なオーラを崩さず、冷たい声でそう言う。クラスメイトたちは空気を読んで、横にずれてイルーシオを前に押し出した。


「さあ、何か申し開きはあるかしら?」


「あ、あの時はすまなかった。我も、悪気があったわけではなく……エルフの里が見えていなかったのだ」


「へえ……悪気が、なかった、ねぇ?」


 冷たい声を出しながら、イルーシオに詰め寄るエルセリア。

 周りのクラスメイトたちは冷や汗を流している。特に黒瀬は、シルヴィアを思い出しているのか、今にも気絶しそうな顔をしている。


「う、コウ!助けてくれ!この婆さんが、我の謝罪を受け入れてくれん!」


「な、婆さんですって!失礼ね!やっぱり消そうかしら?」


「ちょ、ちょっと、エルセリア、さん?落ち着いて、ね?」


 イルーシオが助けを求めて孔の名を叫び、エルセリアは怒って手元で雷をパチパチ鳴らしている。

 孔は慌ててエルセリアを落ち着かせようと、優しく頭を撫でた。


「ふん。コウ、こいつ、追い出していいかしら?」


 少し落ち着いたか、「消す」から「追い出す」に変わったが、それでもまだ足りない。

 孔は、なんとか頑張ってエルセリアを説得することになった。


「いや、それじゃ困る……。一応、イルーシオは俺の仲間なんだ。前も本当に悪気はなかったみたいだし、粗相はさせないから、俺らがいる間だけ置いてもらえない……?」


「ふぅん……仲間、ねぇ……」


 エルセリアはしばし考えながらイルーシオを見つめる。

 イルーシオは、エルセリアの手元の電撃を見て怯えている様子だ。


 数十秒後、エルセリアは仕方なさそうに首を振りながら、電撃を消した。


「はぁ、しょうがないわね……その代わり、コウはこの里にいる間、ずっと私といてもらうからね」


「は、はい……」


 我が身を犠牲に、イルーシオの滞在許可を取り付けた。

 見よ、これが交渉術だ。

 イルーシオに笑顔を見せると、安堵の息を吐いている。


「それじゃ、勇者たちの寝床を確保しましょ。コウはこの部屋を使うとして……まあ、あそこでいいかしらね」


 サラッととんでもない言葉が聞こえたが、聞こえなかったことにしておこう……。


 孔は賢明にも口を出さず、エルセリアの跡をついて行った。

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