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第28話 騒乱勇者、再び

累計1000PV到達、ありがとうございます!!

 そして、深夜。


 寝る前に、軽いクラス会議が行われた。


「よし、みんないるな!それで、帝国との戦争は乗り切ったわけだが……ひとまず、俺らの役目はもうなさそうか?」


 先ほど亮太に聞いた話によると、捕らえた司令官及びその護衛は、精神魔法にかかっており、既にそれは解除済みらしい。

 司令官たちはレオニス王に謝罪し、帝国首脳陣も同様の状態であることを伝えた。そして、三日後の会談の場で責任者の精神魔法を解除し、そのまま帝国へと向かう、と言う流れを考えているようだ。


 確かに、そうなると孔たちはもうお役御免といった感じだ。


「そうだな、もうないと思うぞ」


 孔がそう言うと、亮太は頷き、話を続ける。


「それでだ。一週間前ぐらいに孔が言ってた、エルフの里に行ってみようと思うんだが……反対の人はいるか?」


 亮太が室内を見回すが、誰一人として声を挙げるものはいなかった。


「よし、いなさそうだな。まあ、案内は孔たちに頼むとして……問題は、いつここを出るかだが……。俺は、明日にでも出るのがいいと思うんだが、どうだ?」


 再度亮太が室内を見回すも、今度も反対者はいない。

 思い立ったが吉日、と言うやつだ。


「大丈夫そうだな。それじゃあ、レオンさんには明日の朝、俺が伝えておくから……そうだな、明日の昼食後に出ることにしよう。それまでに、全員出発準備を整えておくこと!以上!」


 亮太はそう言うと、手を叩いて会議の終了を告げた。

 クラスメイトたちは三々五々に部屋を出ていき……孔たち三人だけが取り残された。


「嘘、女子たち誰もシルヴィア迎えに来なかった……」


 眠すぎて忘れているのだろうか?

 どうしたものか……と首を捻らせていると、シルヴィアが目を覚ます。


「ん、コウ?」


 眠たげな目で甘えてくるシルヴィア。

 とりあえず、抱き着いてきたシルヴィアを抱えて、そのまま立ち上がる。


「コウの部屋で全員で寝ればよかろう。流石に三人は厳しいだろう故、我は床で我慢してやるとしよう」


 イルーシオが当然のようにそう言う。

 マジすか……と思っていると、シルヴィアも「ん」と頷いた。



 そして、コウに割り当てられた部屋へと辿り着く。

 ちなみに、コウに与えられた部屋は二部屋あり、片方は寝室、片方は居間のような広い空間だ。


「それじゃあ、我は眠い故寝るぞ。無論、ベッドは空けておくからな」


 イルーシオは部屋に入るなりそう言って、寝室に消えた。

 残された孔は、シルヴィアに囁く。


「俺、軽く風呂入りたくてここ使うから、先寝といて」


 そう伝えてシルヴィアを下ろそうとすると……シルヴィアは首をふるふる振った。


「私もお風呂入る。入れて」


「……は?いやいや、流石に良くない……」


「眠い。コウ、洗って」


 半ば目を閉じながらそう言うシルヴィア。

 孔に拒否権はないようだった……。


「お前、寝惚けてるんだよ。早く寝ろ」


 なんとか寝かせようとそう言うも……。


「寝惚けてない。魔法だって使える」


 シルヴィアはそう言って、手から微風を出す。


「えっと、俺に拒否権は……?」


「ない」


 シルヴィアはもう一度首を振る。

 はぁ……とため息をつきながら、孔は土魔法で石の浴槽を、水魔法でお湯を出す。


「……本当に?」


「ん。当然」


 最後の確認をするも、シルヴィアはさも当然のように頷く。

 なぜだ……と呟きながら、頭を抱える孔だった。



ーーーーーーーーーー



 二十分後。

 孔はようやく、安寧を手に入れて浴槽に浸かっていた。


 どうしたか?

 まず、なぜか目の前で服を脱ぎ始めたシルヴィアにタオルを投擲。孔は即座に『元素体(エレメンタルボディー)』の水を発動し、目の部分だけを氷にする。

 無事目隠しに成功し、シルヴィアを浴槽に浸ける。風魔法の探知(スキャン)で位置は把握できたので、目隠ししたままでもこれはできた。

 そして、シルヴィアの気の済むまで浸からせ、浴槽から出たシルヴィアの背中を流す。そして、シルヴィアが体を吹かせようとタオルを押し付けてくるので、火魔法と風魔法を組み合わせて温風を出し、ドライヤーのようにして全身を乾かした。

 「むぅ……」と呻くシルヴィアを無視し、服を押し付けて着させ、最後にベッドまで抱えて行って、ミッションコンプリート。


 孔は多大なる疲労感の中、無事風呂に入ることができたわけである。


「はぁ、一仕事した後の風呂って、最高……」


 体を弛緩させながら呟く。


 念のため、ドアノブを凍らせているので、シルヴィアが突撃してくる心配もない。

 非常に快適であった。


「はぁ……あと二十分は浸かれる」



ーーーーーーーーーー



 孔は、無事翌朝を迎えることができた。

 目が覚めたシルヴィアは、しばらく不機嫌そうに孔を叩いていたが。


「む、コウ、昼までどうするのだ?」


「ま、適当に城内をうろつくよ……イルーシオも、問題を起こさなきゃ好きにしてくれ」


「そうか」


 そして、孔は部屋を出る。

 その横には、当然のように手を繋ぎながらついてくるシルヴィア。


「どこ行くの?」


「王様のとこだ」


 短く問うシルヴィアにそう返すと、孔は自身の刀の柄を軽く握る。


「イルーシオに、この"ブラック・パーロット"をもらったし、刀を返そうかと思ってな」


「ん」


 そして、王の執務室に辿り着き、入り口にいる衛兵に挨拶をしてから、扉をノックする。

 中から「入れ」と言う声がするのを確認して、扉を開ける。


「おお、これはコウ様。昨日は、大変素晴らしい活躍だったそうで」


 執務室には、レオンの姿も見えた。

 どうやら、レオニスとレオンで戦後処理について話し合っていたようだ。


「お取り込み中のところすみません、これを宝物庫に返したくて……」


「ほう、例の勇者の武器ですな。わかりました、後で運ばせておくので、とりあえずレオンにお渡しください」


 レオニスがそう言ったので、指示通りレオンに手渡す。


「それでは、俺はこれで」


 レオニスに礼をして、執務室を出る。


 さて、どうしようか……と少し考えた後、ブラック・パーロットの素振りでもしようと思い、訓練場に向かうことにした。



ーーーーーーーーーー



 シルヴィアとともに訓練場に入ると、立ち会いを行っている二人の人物が目に入った。


「……は?」


 向かい合っていたのは、亮太とイルーシオだった。


「おい、イルーシオ、問題を起こさないって話じゃ……」


「おお、コウか!いや何、この木端勇者が、調子に乗って手合わせをしようと言ってきたのでな……身の程を叩き込んでやろうと」


「また木端勇者とか言ったな!行くぞ!!」


 大して悪気がなさそうに肩をすくめるイルーシオ、木端勇者と言われ怒る亮太。

 孔が止める間もなく、亮太はアロンダイトを振り抜く。


「ほう、聖剣か!さすがは勇者を名乗るだけある、が……まだ認められていないようだな?」


「うるさい!」


 悠長に聖剣を観察しながら、批評するイルーシオ。

 亮太は若干キレながら、袈裟斬りを叩き込む。


「ふむ、まだ遅いな……。それに、怒りで我を忘れるとは、未熟者ではないか」


 アロンダイトを軽くいなしながら呟くイルーシオ。

 亮太は言葉を発するのも忘れて、無我夢中でアロンダイトを振るっているようだ。


「そんなのだから、聖剣に認められないのだぞ……やれやれ」


 イルーシオは亮太の攻撃を流しながら、器用に肩をすくめる。

 そして、亮太の上段斬りを思い切り弾き、アロンダイトを吹き飛ばす。


「……なっ!」


「だから、こうなる。せっかくの聖剣が泣いておるぞ」


「……くそっ!」


 亮太も少し成長したと、孔は勝手に思っていたのだが……それは間違いだったのかもしれない。

 亮太は悪態をつきながら、アロンダイトを拾い上げ、スキルを発動させる。


「『聖剣技(セイクリッド)』!」


 発光する亮太とアロンダイトを見ながら、悠長に感想を述べるイルーシオ。


「ほう、それが貴様のスキルか……。身体強化系か?しかし、『覚醒』もしておらんようだな」


 そんなイルーシオに腹が立ったか、全力の打ち込みを入れる亮太。もはや、模擬戦であることを忘れていそうである……。


 しかし、イルーシオは全力の打ち込みをも、軽く流す。


「ふむ、確かに速くなっておるな。しかし、まだまだ足りんな」


 そう言って、再度アロンダイトを吹き飛ばす。

 強制的にスキルを中断された亮太は、がくりと膝をつく。


「嘘だろ……」


「勇者と驕って胡座をかくからそうなるのだ。もっと鍛錬に励むが良いぞ」


 剣を消しながらアドバイスするイルーシオ。

 亮太は唇を噛みながら、悔しそうにアロンダイトを鞘に収める。


「よし、コウよ!今のはいささか消化不良であった故、我と戦うが良い!」


「いや、やらないよ?」


「え?」


「て言うかさ、俺、問題起こすなって言ったよね?めちゃくちゃ問題なんですけど?」


 辺りを見回すと、野次馬のように集まっているクラスメイトや騎士たち。

 当然である。訓練場のど真ん中でこんなことをしていれば、人も集まると言うものだ。


「い、いやしかしだな、先に手を出してきたのはあちらで……」


「そんなの関係ない。乗る方も悪いぞ」


「うぐっ……」


 イルーシオを叱っておき、亮太の方に歩み寄る。


「怪我はしてないな?」


「あ、ああ……」


「お前も、喧嘩吹っかけるなよな。戦いたいなら、他のクラスメイトとか、俺に言えよ。シルヴィアとかイルーシオに当たるのは無しだぞ」


 亮太にも注意しておき、シルヴィアの元へと戻る。


 素振りをしに来ただけなのに、こんなことになっているとは……。

 孔は昨晩のように、頭を抱える羽目になった。

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