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異世界転移2周目なので頑張ろうと思う  作者: しぃ
第2章 エルフの里編
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第10話 真のボス

 高速で振り下ろされる大剣、無詠唱で飛んでくる高威力の魔法。

 孔は、舌を巻く思いでそれを防いでいた。


(スペルワードもなしで魔法発動とか、アリなのかよ……!)


 魔法には必ずスペルワードが必要と思っていたので、孔は非常に驚いていた。

 生き残れたら練習しようと思いつつ、今にもローブを切り裂きそうな大剣をどうにか防ぐ。


 ノーモーションでこちらへと飛んでくる呪いの矢や刃を、対抗魔法で防ぐ。


風壁(ウィンドウォール)!」


 魔法を発動するために片手を刀から離した孔の隙を狙って、死霊王が大剣を振るってくる。

 それを受け流し、反撃の一撃を叩き込もうとするが、死霊王は魔法を使って孔を飛び退かせる。


 剣技が使えない孔にとって、この状況はかなり致命的だった。

 纏わせた風で強引に二連撃ならばできるだろうが、恐らく半端な二連撃では致命傷を与えられないだろう。


 孔に残された勝ち筋は、極度の精神集中が必要な上位の魔法を、剣に纏わせて放つことだけだった。

 しかし、死霊王はそんな隙を作らせてくれそうもない。


 降り注ぐ魔法の雨を防ぎながら、必死で対抗策を考える。

 刀で斬り込んだところで、大剣で防がれるのは目に見えている。魔法戦を行おうにも、魔法の発動速度はあちらの方が上。


「くっ……!」


 激しい剣戟を繰り広げながら、孔は一縷の望みをかけて大剣にむけ魔法を詠唱する。


「聖なる水の流れよ、彼の者の汚染されし(まじな)いを浄化せよ!解呪(ディスペル)!」


 しかし、死霊王の対抗魔法によって妨害されてしまう。

 残された手段は……風魔法で大剣を吹き飛ばすぐらいか。

 それを思いついた孔は、即座に実行に移す。


武装解除風(ディスアームウィンド)!!」


 強烈な突風を大剣に浴びせかけると同時に、刀に纏わせた風を最大限利用して打ち込む。

 台風並の強風に当てられた大剣は、孔の狙い通りに死霊王の手をすっぽ抜けて飛んでいく。


(よしっ!)


 死霊王が飛び退いたのを確認すると、孔は心の中で喝采しつつ、意識を集中させる。


 刀が濃い緑に発光したのを確認すると、死霊王に向けて構える。

 大剣の回収は住んだらしく、あちらも剣を構えていた。


 刀の発光が一際強くなった瞬間、孔は地面を蹴った。


天翔嵐舞(テンショウ・ランブ)!」


 風属性の高位魔法、天翔颯陣を刀に纏わせて放つ。

 目にも止まらぬ三連撃で大上段から襲いかかる大剣を弾き返し、続く二連撃を死霊王のガラ空きになった首へと叩き込む。最後の高速突きを、人間で言う心臓の位置へと突き刺した。


 首を切断され、胸を突かれた死霊王は汚い呻き声を上げながら溶けていく。

 孔はそれを見届け、安堵しながら刀を鞘にしまおうとした。

 しかし、その時――。


「グルゥォォォ!!!」


 巨大な雄叫びを上げながら、翼を広げて現れたのは、死竜(デスドラゴン)だった。

 幻影竜に比べれば格下だが、通常のドラゴンよりかは圧倒的に強い存在。孔は絶望しながらも、刀を握り直した。


「ゴォォ!」


 一瞬の溜めをしてから、死竜は腐食のブレスを放つ。

 風魔法を駆使しながら、それをなんとか回避する孔。


「くっ……!」


 たっぷり十秒ほど続いたブレスをなんとか耐え切ると、死竜はこちらへと突進してくる。


「うぉっ!!?」


 爪での連続攻撃を、刀で防ぎながらなんとか耐える。

 時折、尻尾や翼での攻撃を織り交ぜてくるから厄介だ。


 やはり、決め手は魔法か。


爆風(ウィンドバースト)!」


 一度爆風で距離を取ると、再度魔法を放つ。


迅雷牙(ライトニングファング)!」


 孔の手元から放たれた紫電が、死竜の体を焼く。大した傷ではないが、生み出した隙を利用して高位の魔法を放つ。


紫電風牙(バイオレットファング)!!」


 雷と風で構成された魔法の刃が、死竜を切り刻む。


「グルァァァ!!!」


 怒り狂った死竜は、禍々しい色合いの巨大な球体を生成する。


 孔の三倍ほどのサイズを誇るその球体を、孔に向けて発射する。


蒼岩湖壁(アクアバリス)!」


 水と土の混合魔法により、なんとか防ぎ切る。


 雷系統の魔法もいい感じではあったが、倒し切るまでには届かない。

 やはり、体全体に魔法が当たるようにして、粉微塵にするのが良さそうだ。


旋嵐(トルネードエッジ)!」


 死竜の元に竜巻を生み出して、時間を稼ぐ。

 叫び声を上げながら竜巻を避ける死竜には目もくれず、孔は魔法を放つ。


蒸烈昇華(スチームエラプション)!!」


 数ある広範囲魔法の中から孔が選択したのは、水と火の混合、高圧水蒸気爆発を利用した魔法であった。

 落雷のように大きなドンッ!という音が鳴り響き、辺りを土煙が埋め尽くす。


 あまりの衝撃音に、倒したか……と期待した孔だったが、その期待はすぐに裏切られることとなった。

 土煙の中から、大きく損傷を負った様子ではあるが、未だ倒れない死竜が姿を現したからだ。


「これは……風で切り刻むしかないか……」


 高位の魔法を連打した影響で、視界が霞み始めているが、そんなことを気にしている状況ではない。

 重傷を負いながらも、反撃のブレスを放とうと空気を吸い込む死竜に対し、孔も魔法を構える。

 スペルワードのみで魔法を放てる孔の方が、数瞬早く攻撃に成功した。


蒼穹輪廻嵐(ソウキュウリンネラン)


 死竜を囲い込むように、淡い緑色の結界が構築される。

 そしてその中に、無数の竜巻が生成される。


「ゴォォァ!!!」


 死竜は溜め終わった腐食ブレスを放つが、結界内の竜巻に切り刻まれ、ブレスは掻き消える。

 その竜巻たちに、ブレス同様死竜までもが切り刻まれていく。


「ギャャォォ!!!」


 悲鳴を上げながらのたうち回る死竜。結界に激突するが、空中に波紋が広がるだけで、結界を破ることはできない。

 そうこうしていくうちに、死竜の体は竜巻によって切り刻まれていき、次第に悲鳴も聞こえなくなる。

 数十秒後、結界が消え、竜巻も消え去り、死竜の体が地面に落ちる。


「ああ……」


 孔はそれを見て安堵の声を上げると、視界を暗転させてばたりと倒れた。



ーーーーーーーーーー



 一方その頃。

 シルヴィアは、エルフたちによって訓練を受けさせられていた。


「魔法使いとして勇者の側に並び立つのならば、詠唱なぞする必要はない!」


 そう言った一人の老人エルフによって、シルヴィアはスペルワードのみでの魔法発動を行うための訓練をさせられていた。


「イメージが大事なのよ。例えば、水なら、自分の指先から水が流れ出てくるところを強く想像しなさい。慣れないうちは、目を閉じながらの方がいいわよ」


 そして、シルヴィアに魔法を教えているのは、エルセリアであった。

 エルセリアが手本を見せるように、スペルワードを発声すると、指先から水が流れ出る。


水生成(クリエイトウォーター)


 シルヴィアはそれを見て、目をぎゅっと閉じて意識を集中させる。


「……水生成(クリエイトウォーター)


 エルセリアのようにはいかなかったが、数滴の水がシルヴィアの指先から零れ落ちた。


「まあ、初めてにしては上出来ね。それを何度も繰り返して、最終的に戦闘中に上位の魔法を放てるようになればいいわ」


 エルセリアはそう言うと、ちなみに、とドヤ顔をしながら手を構えた。


「極めれば、こんなこともできるわよ」


 エルセリアは構えた手から、パチパチ、と雷を生み出し、的に向かって紫電を放つ。


「無詠唱、できるの?」


 シルヴィアは感嘆しつつ、エルセリアへと問う。エルセリアは、ドヤ顔を続けながら答えた。


「もちろんよ。長い時間をかけて努力すれば、あなたでもできるわよ」


 それを聞いたシルヴィアは、ふんと鼻息を鳴らす。


 それからしばらく、エルセリアが付きっきりでシルヴィアに教えていると……。


水切(ウォータースライサー)


 シルヴィアは、スペルワードのみでの魔法発動に成功していた。


「初日でこれはいい進歩ね。明日は無詠唱に挑戦しましょうか」


「ん」


 エルセリアという優秀な教師を得て、シルヴィアはどんどん魔法を極めていくことになった。

 孔が迷宮で無詠唱を扱えずアンデッド相手に苦しむ中、シルヴィアは着々と無詠唱をできるようになっていった。

水切のルビを間違えていた問題を修正。

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