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5、コンビニ後の衝撃

 練習試合を終えて、みんな用事があるとか、休みとかで、今日は一人で帰ることになった。

 電車の中でぼんやり、窓の外を眺める。見慣れた景色はどんどんと流れていく。

 二年と少しの部活生活。もっと出来たかもしれない。いや、バレーボールなんてしないで、他の事をすればよかった。恋愛もバイトもせず、ただバレーボールをしてきたけど、笑われていただけなのかもしれない。間違いだったのかもしれない。わたしはあまりに滑稽だ。後悔と涙が押し寄せてきた。

 下車すると、こっそり駅のトイレで泣いた。


(泣いたらお腹が空いてきた)


 例によって乗り継ぎのため、時間が空いている。

 ふらりと駅の外へ出る。時間もあるし、コンビニにでも寄るか。

 そう思い立って、駅から少し離れたところにあるお気に入りのコンビニへ向かった。暗い気持ちをそのままに、適当に買い物をして店の外へ出たところで思わず足を止めた。


「ちょっと待って~」

 

 聞いたことのある声がした。

 声の方向に視線を向けると、体が震える。

 コンビニのはす向かいにあるコインパーキングから、知っている人影が出て来たのだ。

 この震えは驚きのためか。喜びのためか。

 次の瞬間、わたしは考えるより先にスマホを構えていた。

 マネージャーと顧問だ。二人きりで歩いている。手をつないで。

 顧問には家庭があるはずだ。


「殺すより、有効なことってあるのね」


 わたしは小さく呟いた。胸がいっぱいで声にでも出さずにはいられなかったのだ。

 それから、くるりとターンしてギクシャクと駅へ急ぐ。衝撃のあまり自然な歩き方を忘れてしまった。

 腹の底から沸々と笑いが浮かぶ。


(もうだめだ)


 耐えきれず、走り出していた。

 わたしを軽蔑したあいつらは、冷静に、偉そうにいばり散らした割りに、もっと軽蔑されるようなことをしているではないか!

 人が一生懸命練習している最中、こそこそと連絡しあったり、目線を合わせたりしていたのか?

 秘密の恋愛は、さぞ楽しいだろう。こちらとしては気持ち悪いけど。気分悪いけど。

 スマホ画面を確認する。堂々と手を繋ぐ二人が映る。やっぱり笑ってしまう。ウケる。気持ち悪いより、ウケる。あいつ、顧問と付き合っていたんだ。面白い。

 真面目にやっている人間が、滑稽だろうし、優越感半端ないだろうね。


 高揚を押さえるために、わたしはコンビニで買ったばかりの炭酸飲料を飲み干す。腹のそこからの笑いが止まらない。

 腹黒い世界からやって来る笑いというのを、体感できた。ありがとう。


(弱味を握った!)


 わたしは性格が悪い。性格がいいと思っていきるより、潔くていいや。


 遠回しに嫌みをいうマネージャー。体罰飲酒のクソ顧問。ならば、わたしは弱みを握った性格が悪いバカ。上等だ。このまま引退試合まで過ごしてやろう。

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