表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/144

初恋

崩落からレーナをかばい、瓦礫と一緒に床へ打ち付けられたため、タイヨウは一瞬だけ気を失っていた。ぱっ、と目を覚ますと、傍らで三角座りするレーナがこちらを見ている。



「無事だったか」


「うん、おかげさまで」



ほっと一息を吐くタイヨウだったが、すぐに慌てて懐を確認する。そこにあるはずのものが、なかった。



「悪いけど、もういただいた」


レーナの手に魔石が。彼女はタイヨウが気を失っている間に、奪い取ったのだ。


「ふっ、こうなったら……仕方ないな」



往生際よく、タイヨウは背中を瓦礫に預け、争う意思はない、という姿勢を見せる。レーナはそんな彼を横目で見ながら、複雑な感情を抱いた。



「しかし……これは出られそうにないな」



タイヨウの言う通りである。瓦礫に囲まれ、完全に閉じ込められたような状態だ。大きな柱があったせいか、押しつぶされることもなく、光が差し込んでいるため視界も悪くないという点では、幸いだった。



「ははっ、高校時代もこんなことがあったなぁ」


「あー、うん。文化祭の準備のとき、タイヨウのクラスのやつらが面白がって、私たちを体育館の倉庫に閉じ込めたよね」



あのときも、暗い密閉された空間で二人きりだった。そして、そこで二人は初めてキスを……。思い出して赤面するレーナ。タイヨウはどんな顔をしているのか、と視線を向けると、優し気な微笑みが。



「へ、変なこと思い出させないで!」



思わず顔を隠す。が、そんな彼女を揶揄う笑い声が響くのだった。数秒の沈黙が流れるが、レーナはずっと気にしていたことを、問いかける覚悟を決めた。



「ねぇ、タイヨウ」


「なんだ?」


「どうして、こんなもの……捨てずに持っていたの?」



彼女は手にした魔石をタイヨウに見せると、彼は輝く夜景でも前にしたように、眩し気に目を細めた。



「お前が初めて俺にくれたものだ。捨てられるわけないだろ」


「……っっっ!!」



そう、この魔石は……高校時代にレーナが加工したものだった。メヂアの形に至るまではなかったが、彼女が必死に手を加えたもの。どういうつもりか、タイヨウが「レーナが作ったものなら欲しい」と言ったため、彼女は照れくささを感じながらも、彼に譲ったのであった。



「で、でも……私たち別れたんだよ!? そんなの、持っていても役に立たないし、捨てればよかったじゃん!! タイヨウはモノに執着しないタイプだし、おかしいよ!!」


「そうかもな……」



わずかに差し込む光を見上るタイヨウだったが、何を思ったのか、すぐにレーナに振り向いて笑顔を浮かべた。



「確かに俺は何かに執着したりしない。だけど……そんな俺にだって、捨てられない未練くらい、あるさ」


「ーーーっっっ!!」



それってどういう意味!?

レーナは必死に言葉を飲み込む。しかし、タイヨウが急に黙って見つめてくる。しかも、手を重ねてくるではないか。これは、やっぱり、そういうこと……??


ゆっくりと近付くタイヨウの顔。レーナは頭頂部から吹き出しそうな火を抑え込みながら、ただ耐えるように目を閉じた……が、突然二人は光に晒される。



「ほう、スバルとやら。なかなかの嗅覚を持っているな」


「いえ、別に。僕は何となくここに先輩たちがいる気がしただけで……」


「レーナちゃん! どこーーー!?」


「あっ!!」



巨大な瓦礫が取り除かれたらしく、二人を凝視する面々が……。



「えーっと、レーナちゃん?」



その中にはトウコの姿も。彼女の視線は、ちょうと二人の間に向けられていた。そこには重ねられた手が。



「ち、ちが! これは!!」


すぐに手を引っ込めるレーナだったが、それだけでは済まない。


「貴様、よくもレーナちゃんを……むっ?」



魔王が再びイノッピーを暴走させるかと思われたが、急に動きを止め、視線をあらぬ方向へ。そこには……。



「信じられない……」


ミカが立っていた。


「信じられない信じられない信じられない!! おかしいよ、絶対に私でしょ! そんな女より、私でしょ!?」



ミカが手の平で顔を覆うと、膝を付いて何やら呟き始める。


「おかしいおかしいおかしい。おかしいよ。だって、私は、私の方が……あれ?」


どこを見るというわけでもなく、顔を上げると、何を見たのか酷く困惑した表情だった。



「おかしいな。雪が……降ってる」


その瞬間、全員が危険を察知し、真っ先にレーナが叫んだ。


「まずい、デプレッシャ化するぞ!!」

「面白かった」「続きが気になる」と思ったら、

ぜひブックマークと下にある★★★★★から応援をお願いします。


好評だったら続きます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
全話から畳み掛けるような笑いをくれていたのに、なんだろうこのトキメキは……そしてトウコさんに見られたこの後ろめたさは…… しかも、全員集合だよ!状態でデプレッシャ化なんて、どうなるの?! イノッピが可…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ