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歪すぎる三角関係

レーナは再びタイヨウの控室付近に戻っていた。


(よし、そろそろ。ナイトファイブの野郎どもは、ステージチェックの時間だ。その間なら、タイヨウの近くに人も少なくなるはず……)


ゼノアが収集した情報はどれも正確で、スバルを含むナイトファイブ全員をスタッフがステージの方へ誘導するのだった。



「レーナ先輩、どこに……」


スバルが立ち去るのを確認してから、天井に張り付いていたレーナは、控室の扉の前に降り立った。


「ふう、スバルのやつ……。あの殺気は、さすがの私も嫌な汗が出るぜ」



そして、扉を開けた後のシミュレーションを脳内で繰り広げる。まずは付き人の意識を刈り取り、タイヨウを拘束して魔石を奪い取る。奪い取ればいいのだけれど……。



「ちっ、そんなこと、どうでもいいだろ!」


迷いを捨て去り、レーナは扉を開けた。そして、電光石火のごとく室内にいる人物の意識を奪う、はずだったのに……。


「よう、レーナ。待っていたぜ」



そこには、爽やかな笑みを浮かべる、タイヨウだけだった。


「ど、どうして……一人なの?」


動揺するレーナだが、タイヨウの方は愛でるような目で答える。



「そんなの、お前が会いに来てくれるって思ったからだろ?」


「う、ウソ! そんなこと言われても……」



レーナは気付かない。気付くわけがない。実際は、付き人たちがタバコやらトイレやらで席を外しているだけのことを。そして、タイヨウが実は凄く焦っていることも。



(どうしよう。何て言えば……)


しかし、レーナはこの通り乙女モードに。対するタイヨウは……。


(まずいな。このままだと魔石を取られる。どうやって切り抜けるか……)



二人は別方向とは言え、同じように次の展開に不安を覚えていたのだが、そんな状況をぶち壊す、とんでもないものが近付いていることに、なかなか気付きはしなかった。



ドッ、ドッ、ドッ、ドッ――。



地鳴りのような音と振動。あまりの激しさに、テーブルに置かれたボールペンが床に落ちる。それを見て、タイヨウがいち早く危険を察知した。



「レーナ、危ない!」


「ちょ、タイヨウ!?」



タイヨウがレーナを抱き寄せ、部屋から飛び出す。同時に凄まじい破砕音と衝撃が二人を襲った。



「い、いって……。何が起こったんだ?」



レーナが状況を把握しようと目を開くと、そこには自分に覆いかぶさるタイヨウの姿が。二人の視線が至近距離で重なる。



「ふっ、まるで昔みたいだな」


「ば、馬鹿。誰かが見ていたら……」



動揺してレーナが目を逸らすと、その先には巨大な生物の鼻先らしいものが。



「誰かが見てるも何も……余が見ているぞ」


震える尊大な声。それは巨大生物の方から聞こえてきた。二人が慌てて、そちらに目を向けると、黒いスーツ姿の男が怒りの炎で瞳を揺らしているではないか。


「ま、魔王!?」



タイヨウがレーナから離れ、すぐさま戦闘体制に入る。レーナもゆっくりと立ち上がると、手櫛で髪を整えつつ、状況を理解した。どうやら、魔王が巨大な生物……イノシシに乗って外から控室に突撃してきたらしい。そのせいで、控室は崩壊。今自分たちが立っている廊下には瓦礫が散らばっていた。



「ふはははっ! 久しぶりだな、臆病な勇者よ。余を差し置いてレーナちゃんに会おうとは。万死に値するわ」


「何を言っている。レーナが俺に会いに来たんだ。帰れ、勘違い変態野郎」


「えーいっ、十年経っても生意気な男よ。イノッピー、やつを踏み潰せ!」



魔王の指示で巨大イノシシ……イノッピーが咆哮をあげて動き出す。その勢いは、文字通り二人を踏みつぶしてしまいそうだ。



「レーナ、逃げるぞ!」


「うん!」



同時に踵を返し、ドームの廊下を走る二人。その姿を見た魔王は酷く嫉妬した。



「なんだあれは。まるで、仲良しこよし! これでは余があの二人の恋路を邪魔する悪者みたいではないか。許さんぞぉーーー!!」



実際に、そのような形なのだが、魔王はあくまで情けない男から、レーナを取り戻すつもりである。ただ、タイヨウも事実悪い男なので、魔王の捉え方も間違いではなかった。ただ、この歪な関係によって始まった逃走劇は、そう長く続かなかった。



「まずい、床が!」


「どうしたの!?」



タイヨウは気付いていた。イノッピーの爆走によって、床がもろくなっていることを。


「レーナ、つかまれ!」


床が崩壊し、二人の体は暗闇に投げ出されてしまうのだった……。

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