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ナイトファイブ!

「もぉーーー、タイヨウ! 今日は配信の日なのに、何しているの??」


ミカはタイヨウの腕に絡みつく。離れろ、と睨みつけるが、ミカはレーナの存在すら忘れてしまったかのように、ベタベタとタイヨウにくっついて離れない。しかも、タイヨウの方も満更でもない様子だ。


「ばーか。どうせ、お前が忍び込んでくるって思ったんだよ。そしたら、予想通りだ」



タイヨウの危機察知能力は並外れている。勇者時代も、彼の予感によって魔族たちの襲撃を何度回避したことか。余裕たっぷりな笑顔を見せるタイヨウに、ミカはさらに感激した様子を見せた。



「タイヨウ、すごーい! てか天才じゃない?? タイヨウが言うこと、いつも当たるから逆に怖いーーー」



この女、いくらなんでも知能指数下げ過ぎじゃないか? そう思うが、とは言え歪んだ鏡を見るような感覚に、レーナは苦い表情を浮かべるしかなかった。


「で、お願いがあるんだけどさ」


タイヨウは二人に向かって言う。



「来週、ナイトファイブの大きなイベントがあるんだ」


「知っているよー。タイヨウのプロデューサー感謝祭イベントでしょ?」


「そう、それそれ。俺がメインのイベントだからさ、これ以上騒ぎを起こされるのは困るんだ」


「じゃあ、その魔石を渡してよ。そしたら、大人しく帰るから」


「困ったなぁ。こいつだけは、誰にも譲れないんだ」


「でもぉ、それがないと帰らないよ?」



タイヨウが助けを求めるようにレーナを見る。しかし、彼女も何も言うことがなく、ただ目を逸らすのだった。そんな視線だけのやり取りに気付いたミカは、面白いわけがない。



「ちょっと、貴方! 私は依頼人よ? 早くタイヨウから魔石を奪いなさいよ」



躊躇うレーナに、ミカがさらにヒステリーを起こしそうになったが、タイヨウが肩をすくめて「仕方がない」と言った。



「こうなったら、無理にでも大人しくしてもらうしかないな」


「どういうこと??」



ミカが首を傾げた瞬間、ガラガラっと音を立て窓が開いたかと思うと、ベランダから二人の男が入り込んできた。



「ナイトファイブ、イエロー担当! 元気と大食いなら俺の出番、ハヤタ・ヤマブキ!」


「ナイトファイブぅ、グリーン担当ぉ。みんなの弟、ぼんやり系男子、レン・ジングージだよぉ」



一人は高身長で明るい表情を絶やさず、もう一人は小柄でアンニュイな表情の男である。そう、大人気アイドル、ナイトファイブのメンバーだ。



「ずっとベランダで待機していたのか?」


ツッコミを入れるレーナの横で、ミカは戦慄く。


「も、もしかして……ナイトファイブを使って、私を監禁するつもり?」



ナイトファイブはただのアイドルではない。そのメンバーであれば、魔王討伐に参加できるレベルの戦闘力を持っているのだ。この状況も、力ずくで解決することもあり得るだろう。しかし、タイヨウは首を横に振った。



「まさか。時間をかけて説得するだけさ。そうだなぁ、一週間くらいじっくりと時間をかけてな」



見たことのないタイヨウの怪しい笑みに、ミカもゾッとしたようだ。ナイトファイブは国によるプロジェクトである。彼らを守るためなら、国は多少の荒事も平気で隠ぺいすることだろう。



「逃げるぞ!」



さすがのレーナもナイトファイブのメンバーを二人相手にしながら、ミカを守りつつ、タイヨウも警戒しなければならない状況は不利である。ミカを担いで書斎を出て、一気にタイヨウの部屋を飛び出すしかない。



「ちょっと、魔石が!」


「タイヨウを本気にさせちまったら、監禁どころか社会的に抹殺されるぞ?? 今は逃げるしかない」


「でも、魔石!」


「諦めろ!」



長い廊下を抜けて、エレベーターで下りれば、とりあえずは逃げ切れるはずだが……タイヨウはそれほど甘くはない。



「……ミカさんを先に逃がしてもいいですよ、レーナ先輩」


「……ふん、やっぱりお前も出てきたか」



エレベーターの前で、レーナの進行を塞ぐのは、ナイトファイブの赤担当、無口系のリーダー、スバル・アイモトだった。


「先に行ってろ」


レーナはミカを下ろして、エレベーターに向かわせる。恐る恐る真横を通り抜ける彼女に、スバルは手を出すことはなかった。廊下で二人きりになると、スバルは言った。



「今日こそ……僕が貴方を倒します。レーナ先輩!」


「とんでもない殺気じゃねぇか。おもしれぇ、ぶっ潰してやるよ!」



スバルから放たれる強烈な殺気が、廊下を満たすが、レーナはそれを受けつつ、疑問に思うのだった。



(なんで私はこいつに憎まれているんだ?? まぁ、ぶん殴ってから聞けばいいか)

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