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「しかし、納品にはまだ余裕が……」


「ぎりぎりに納品するつもりですか?? 息子は今にもデプレッシャになってしまいそうなんです。待ってあと一か月……いえ、三週間を過ぎたら、この依頼はなしにしてもらいます。キャンセル料を請求できる立場でないことは分かってくださいね!」



 電話が乱暴に切れる。トウコはしばらく愕然としていたが、その瞳から涙が。そして、頼るような目でレーナを見た。



「どうしよう……。あと三週間しか時間がない!!」


「どうしようも何も、やるしかねぇだろ!!」


「すみません、僕のせいで!! 今すぐエタ・コラプスエリアを探してきます!!」



 三人が慌てる中、イアニスだけが状況を理解できず、立ち尽くしていたが、トウコはそんな彼にも助けを求める。



「ねぇ、イアニスくん! いますぐランクB+以上の魔石が取れそうなエタ・コラプスエリア知らない?? お願いだよ、教えてよ!!」


「お、落ち着いてください。魔石がないのですか??」


「そうなんだよ。もしかして、イアニスくん心当たりが……??」


「いえ、B+の魔石なんて僕だって欲しいくらいですから」


「だよねーーー!!」



 せめて、実績のある工房であれば、エタ・コラプスエリアの情報も入ってくるものだが、何せ信用ゼロだ。このままでは、レーナが調達した資金が尽きた時点で、工房は閉鎖せざるを得ない。今度こそ打つ手なしか、とレーナは深々と溜め息を吐いたが……。


「ん?」


 ソファの下で、何かが日の光に反射して輝いていた。レーナはソファの下に手を伸ばして、それを確認するが、その正体を知って落胆する。


「なんだ、魔王の野郎の名刺か」


 先日、魔王が工房に乗り込んできた際、レーナに向かって「いつでも電話してこい」と投げつけた名刺である。しかし、それを見た途端、レーナの記憶に魔王の言葉が蘇った。



 ――石を使って呪いを吸収すること自体、すべての呪いを管理する余にしてみると、迷惑この上ないわ。



 レーナは思わず顔を上げた。


「すべての呪いを管理するって……コラプスエリアの位置も把握している、ってことじゃないか??」

 彼女の閃きに全員の視線が集まる。


「なに? どういうことなの、レーナちゃん」


「ほら、魔王のやつが言っていただろ?」


 レーナは魔王の発言について説明すると、今度は全員の期待が彼女に集まった。



「じゃあ、魔王さんにお願いすれば、エタ・コラプスエリアの位置も分かるってこと??」


「レーナさん、電話をかけてください。魔王に直接聞いてくださいよ」



 しかし、レーナは顔を引きつらせる。



「あいつに? 気が進まねぇよ……」


「お願いだよ、レーナちゃん! この状況でなりふり構ってられないよ!」


「そうですよ、何か要求されたら、そのときはそのときで考えましょう!」



 二人の圧力に負け、レーナは電話をかけることにした。


「こんなに憂鬱な思いをさせて出なかったりしたら……あの野郎、次は百年蘇れないくらいに殺してやるからな」


 レーナの物騒な呟きに、事態を飲み込めないイアニスは「あの人、普段からこんな感じなんですか?」とトウコに耳打ちする。


 続くコール音がレーナを次第に苛立たせたが、六回目でついに応答があった。



「おう、魔王か?」


『余だ。こんな忙しい時に電話をかけてくる阿保がいたとは、さすがの余も予想外だ。が、メッセージを残すことは許そう。発信音の後に――』


「ざけんなっ!! 絶対に百年分殺すからな!!」



 受話器を叩きつけるレーナ。嗚呼、これはもうダメだ、と全員が肩を落とした、そのときだった。電話が呼び出し音が工房中に響き渡る。


「お、折り返しだよ。レーナちゃん、早く出て!」


 異様に早い折り返しに、複雑な想いを抱きながらレーナは受話器を取る。



「はい、ウィスティリア魔石工房」


『レーナちゃん、余だ。電話をくれたようだな。留守電に麗しいその声が入っていたときは、歓喜したぞ。何の用だ? 週末の予定なら空いているぞ??』

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