表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/144

それは近い未来のお話

「どうしたの、このお金!?」


 百万イエールを持ち帰ったレーナに、トウコもゼノアも目を白黒させた。



「絶対まともなお金じゃないですよね!?」


「決めつけるな」



 ゼノアの断定にさすがのレーナも仏頂面を見せる。もっと、有難がられると思っていたのに……。



「だって、顔も傷だらけじゃないですか!」


「レーナちゃん、このお金は返してきなさい! 悪いことしてまでお金を稼ぐ子になってほしいなんて、私言ってないからね!?」


「そうですよ! 最近は少しでも不正があると悪い評判が広がるんですから! 炎上ってやつですよ!!」



 二人から責め立てられ、レーナの額に青筋が立つ。



「二人して決めつけやがって! まともにバイトして稼いできたんだよ!!」


「バイト……??」



 もちろん、腑に落ちない二人にレーナは細かく説明する。変な老人に出会い、変な女と殴り合い、最終的に金を得たことを。



「モデルですか……」


「そっかぁ。凄いね、レーナちゃん。うん、さすがだよ」


「だろ? 私くらいの美貌の持ち主になると、街を歩くだけで金が転がり込んでくるもんなのさ」


「これなら……家賃は三か月分は大丈夫そうだね。ありがとう、レーナちゃん!」


「ふん、まぁな。私だって役に立つんだよ。分かったか、ゼノア」



 背中を伸ばすレーナを見て、ゼノアは穏やかな笑みを浮かべる。



「そんなの、最初から分かっていますよ。僕が言いたかったのは、それぞれ役立つタイミングが違うから、人の仕事を責めるようなことはやめましょう、ってことです。レーナさんのガードとしての能力は絶対的に信じていますよ」


「そ、そうなのか?」


「はい。だから、別の方法で資金を調達してくれたことも、凄く感謝していますよ。ありがとうございます」



 思わぬ労いに顔を赤らめるレーナ。それをトウコは見逃さなかった。



「あ! レーナちゃん、照れてる」


「照れてねぇ!!」



 否定しながらも、さらに頬の赤みが濃くなるレーナを笑いながら、トウコもゼノアも使命感を燃やし始めた。



「さて、僕もレーナさんに負けていられません。今度こそ、エタ・コラプスエリアを見つけてきます」


「私も! すっごいメヂアを作って見せるから!!」



 しかし、三日後……。



「クソッ! どいつもこいつも情報を隠しやがって! どこにあるんだ、エタ・コラプスエリアは!!」


「もうダメだ。私なんて才能ないんだ。才能ないんだ才能ないんだ才能ないんだ……」



 二人が放つ負のオーラに、レーナは溜め息を吐かずにはいられなかった。


「やっぱり、ここの魔石工房がつぶれるのも時間の問題か……」


 彼女が諦めたけたころ、ウィスティリア魔石工房に何者かが現れる。



「すみません、ウィスティリア魔石工房で間違いないですか?」


「!?」



 来訪者を目にしたレーナの背筋が伸びた。


(い、イケメンきた!!)


 高身長の二十代後半と思われる男性。やや地味な雰囲気だが、整った顔に落ち着いた表情は、女性の視線を奪うに十分だった。レーナはすぐさま美女としての顔を作ってから、男性に急接近する。



「はい、ウィスティリア魔石工房です! メヂア製作のご依頼ですか? 魔石の加工も請け負っていますので、何なりとお申し付けください!!」


「……えーっと、あのですね」



 笑顔のレーナに対し、男性はどこか戸惑った様子だ。しかも、絶世の美女であるはずの自分を前にしているはずが、少しもこちらを見ようとしない。照れているのだろうか。いや、レーナの後方を見て、彼は明るい表情を見せた。


「あ、トウコ先輩!」


 男性の声に項垂れていたトウコが顔を上げる。



「……イアニスくん!?」


「はい、イアニスです! 先輩が工房を開いたと聞いたので、来てしまいました!」



 イケメンの視線はトウコに釘付け。まるで、レーナなど存在しなかったかのように、トウコがいる工房の奥へ行ってしまう。トウコと男性……イアニスが笑顔で再会を喜ぶ姿を見て、頬を膨らませるレーナだったが……。


 イアニスと言う青年が、その後、トウコとレーナの関係に少し変化をもたらせるとは、この時点では誰も想像すらしなかった。

「面白かった」「続きが気になる」と思ったら、

ぜひブックマークと下にある★★★★★から応援をお願いします。


好評だったら続きます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
おやおやおやおや?この流れは…… レーナとトウコの関係がどう変わっていくのか気になりますね~!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ