◆感想待ってます!
夜空に浮かび上がったキャンパスが霧散して、宙に固定されていたメヂアが、ゆるやかな速度で私のもとへ戻ってきた。それをキャッチしながら、一息吐く。
良かった、イメージ通りのシアタ現象だった……。
いやいや、安心している場合じゃないよ。ここで終わったって思うようなら、ただの自己満足だもん。さて、二人の反応は……。恐る恐る横を見ると、二人は黙って夜空を見上げたままだった。
「…………どう、だった?」
私の問いかけに、レーナちゃんだけが反応した。
「ん? ……あー、まぁ、そうだな。よかった、と思うぞ。うん。なかなかだった」
えええ……。なにこの反応。あまり良くなかったのかなぁ。
「ゼノアくんは? 私のシアタ現象、どうだった??」
夜空を見上げたままのゼノアくんが、ゆっくりと私を見る。半開きだった口をゆっくりと閉じたかと思うと、数秒の間、ただ私を見つめた。
「な、なに?」
「天才です」
「ほえ??」
ゼノアくんの目は、少しずつ炎が盛るかのように、力強さに満ちて行く。かと思えば、私の両手を握った。
「まさに貴方は天才ですよ。最高のクリエイタです!!」
「じゃあ……シアタ現象、よかったってことかな??」
「もちろんですよ! これだけの才能の持ち主、僕は見たことがありません!!」
興奮してくれているのか、さらに接近するゼノアくん。その後ろで、レーナちゃんが二度頷ているけど……
助けてもらえないかな?
この鼻息荒い感じ、ちょっと怖いなぁ。
「貴方の才能に誰も気付いていないなんて、この世界は損しています! でも、僕だけが知っていると思うと、それはそれで優越感がありますね!! 感動で胸がいっぱいだ!!」
今度は夜空に向かって、勝ち誇るように両手を挙げ、高笑いする。変な人だ。変な人だけど、私のメヂアがこの人を変にさせたと思うと、ちょっと嬉しいじゃないか。
「おいおいおい! 知ったようなことを言うんじゃねぇよ」
今度は、レーナちゃんが少し変な目つきになって、私たちの間に入ってきた。
「メヂアのことを昨日今日知ったようなお前が、トウコの才能を理解できるわけねーだろ。今のシアタ現象もな、表現力だけじゃなくて、魔力の配分とか出力の細かさとか、凄い綿密に計算されているんだからな? それも分からないで感動とか言ってんじゃぇぞ」
「レーナちゃん、そんなところまで気付いてくれたの??」
「ぐっ……」
なぜか決まり悪そうに頬を引きつらせるレーナちゃん。しかし、諦めるように息を吐くと、なぜか偉そうに手を腰に当てて言うのだった。
「当たり前だろ。お前の才能を一番分かっているからこそ、私はお前のガードになったんだ。今回のシアタ現象だって……」
「シアタ現象だって……??」
感想だ。感想をもらえる! 私は爆発しそうな心を抑え込み、レーナちゃんが再び口を開く瞬間を待った。待ったんだけど……。
「あっ! メルカちゃんが目を!!」
ゼノアくんが意識を失っていたはずのメルカちゃんへ駆け寄る。そのせいで、レーナちゃんも言いかけていただろう、感想を引っ込めてしまった……。
まぁ、仕方ないよね。今はメルカちゃんを心配しないと。
「メルカちゃん、大丈夫!?」
ゼノアくんは焦っていたのか、転びながらも四足歩行でメルカちゃんの傍らに移動した。
「ぜの、くん……」
朦朧としているのだろう。夢でも見るような表情で、彼女はゼノアくんを見つめる。それでも、彼女は伝えようとした。ずっと封じ込めていたのであろう本音を。
「ごめん、私……。ゼノくんのお金……!」
「無理しなくていいよ。無理に話さなくてもいい。元気になって、それでも話したいなら、そのとき、ちゃんと聞くから!」
メルカちゃんは涙を零しながら、首を横に振る。
「ううん。言わないとダメだよ。ちゃんと言って、怒られないと私、ダメだ」
ゼノアくんは彼女の覚悟を受け取ったのか、黙って言葉を待った。
「私……ミタカさんのお金を、全部ホストにつぎ込みました。謝って、許してもらえるものじゃないけど……ごめん、なさい!!」
「……許さない」
「……そう、だよね」
許されると思っていたわけではない。そういうことなんだろうけど、いざゼノアくんの言葉を聞くとショックだったのか、メルカちゃんの表情はぐちゃぐちゃになって、さらに激しく泣き出してしまった。そんな彼女に、ゼノアくんは言う。
「勘違いしないでほしい。僕は……君をここまで傷付けた、そのホストを許せないって言っているんだ!!」
「……えっ?」
意外な言葉に、メルカちゃんの涙が一瞬止まる。しかし、ゼノアくんが浮かべた優しい微笑みに、またも涙がこぼれだす。今度はゆっくりと優しい涙が。
「面白いこと言うじゃねぇか!」
その光景を見て、次に笑い出したのはレーナちゃんだった。あまりに笑うので、不快だったのか、ゼノアくんは不満げだ。
「何も面白くないですよ! 僕は本気で怒っているんですから!! なんとかそのホストに鉄槌を……!!」
今にも頭が噴火しそうなゼノアくんに、レーナちゃんは微笑む。さっきまで馬鹿みたいに笑っていたのに、優しく微笑んだ。
「安心しろ、そのホストの野郎は……今頃、地獄を見てるからよ」
「……どういうことですか??」
何を言っているのだろう。誰もが理解できず、首をかしげたが、レーナちゃんは何も語りませんでした。
まぁ、とにかく……事件は解決。
さてさて、後はゼノアくんの恋の行方がどうなることやら。
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