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コア・デプレッシャ

「ミナトくん、助けにきたよー!!」


 少女のような声色を発しながら、駆け寄ろうとするレーナ。それは、先程までデプレッシャたちを右から左へ屠っていたとは思えないほど、可憐な姿のように見えたが……。


「どうなっているんだ??」


 レーナがどんなに走っても、コア・デプレッシャとなったミナトにたどり着くことはない。それどころか、駆け出した地点であるトウコの横に戻っているではないか。混乱するレーナだったが、トウコは一部始終を客観視していた。



「えっとね、ミナトくんの方にレーナちゃんが走って行ったとき、足の下に変な矢印が現れて。そしたら、レーナちゃんがその矢印の方向に滑るみたいに移動して、それで私のところに戻ってきたよ?」


「……なるほど。コア・デプレッシャの固有スキルか」



 コア・デプレッシャには特別な能力がある。ミナトに関しては、矢印を出現させ、それを踏んだ人物の移動先を強制させる能力のようだ。


「そんなものが私に通用すると思うなよ!」


 レーナは腰を落とすと、先程よりも力強く踏み出す。どうやら、移動方向を変えられても、強引に駆け抜けてミナトに接近するつもりらしい。


「うおりゃあああーーー!!」


 突き進むレーナの真下に彼女の足と同じサイズの矢印が現れる。レーナがそれを踏み付けると、またも後方に強制移動させられるかと思われたが……。


「ぎゃあっ!!」


 レーナは悲鳴を上げながらひっくり返る。


「レーナちゃん! 矢印がさっきと違う方向に表示されていたよ! たぶん、前か後ろか自由に変えられるみたい!」


 トウコの推測は正しい。先程とは違い、レーナは矢印を踏んだ瞬間、ミナトの目の前まで強制的に移動させられた。自分が想定していた速度とは違うタイミングで接近してしまったレーナは、ミナトのパンチをもらって倒れてしまったのである。


「面白れぇじゃねぇか」


 レーナは立ち上がると、巨槍を手離し、腰にある長剣を引き抜き、不敵な笑みを浮かべた。


「久しぶりに体を動かすとするか」


 その発言に、嫌な圧を感じ取ったのはトウコだけではないようだ。レーナが地を蹴る。これまでとは、勢いが段違いだ。ミナトは反射的に固有スキルを発動させたのか、後退の矢印をレーナの足元に出現させる。


「その程度で!」


 レーナは確かに後退した。強制的に後退させられたが、再び地を蹴ると、その分の距離を一瞬で縮めてしまう。さらに、ミナトは矢印を出現させたが、そこにレーナの姿はない。


「遅いぜ!」


 ミナトの目の前に現れたレーナが、長剣を横一文字に振るうと、デプレッシャの硬化した白いボディが火花を散らした。


「もう一発だ!」


 レーナが剣を振り上げたが、その足元に矢印が発生。二人の間に再び距離が。かと思えば、レーナの足元に現れる前進の矢印。ミナトは距離を縮めて、不意打ちの拳を放つが……。


「同じ手に引っかかるか!」


 レーナは接近のタイミングを把握していたかのように、距離が詰まった瞬間、剣を振り上げていた。剣撃を受けてよろめくミナトに向かい、さらに距離を詰めるレーナ。


「チカヅクナ!!」


 ミナトが言葉を発し、レーナの足元に後退の矢印を発生させる。が、レーナはそれよりも速く、別の場所へ移動している。ミナトが発生させる矢印は、レーナの足元を捉えられなかった。


「に、人間って……そんなに速く動けたかな?」


 トウコが疑問に思うのも無理はない。レーナの動きは瞬間移動そのものだ。ミナトの右手側に現れたと思ったら後方。左側に現れたかと思ったら前方に。とても目で追うことはできなかった。


「ここで終わっておけ!」


 そして、ミナトの横手に現れたレーナが、斬撃を叩き込む。その剣技はあまりに速く、トウコには霞んで見えたが、二度や三度の攻撃ではなかったようだ。


「ギシャアアアーーー!!」


 断末魔の叫びを上げつつ、仰向けに倒れるミナトは、完全に意識を失った。


「ふぅ。まぁ、こんなものかな」


 長剣を鞘に収めながら一息吐くレーナだが、トウコから見る限り、彼女は汗すらかいていない。本当に軽い運動を済ませた、といった調子だ。



「いやいや、驚いたよ。勇者ってこんなに強いの?」


「勇者じゃなくても、Sランクの冒険者やガードでも、これくらいは朝飯前だと思うぞ」



 Sランクのガードなんて一度の依頼で、どれだけのお金が取られてしまうことか。トウコはますますレーナの腕が欲しくなってしまうのだった。


「それよりも、トウコ」


 レーナが戦っているときよりも真剣なまなざしでトウコを見た。



「本当にミナトくんを……助けられるのか?」


「うーん……やってみるから、とりあえず見守っていてよ」



 トウコはオレンジ色の球体……メヂアを指で摘まむと、それを透かしてレーナを見つめるのだった。


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