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最強勇者の実力は

 次の日の朝、レーナとトウコはリトナ区へ向かった。


 レーナは甲冑で身を包み、頭部を守る兜から、彼女のシンボルとも言える赤い髪が伸び、風になびいている。それを見たトウコは素直に感想を口にした。



「わぁ……レーナちゃん、かっこいいね」


「魔王のやつをぶっ倒して以来着ていなかったけど、調子は悪くなさそうだ」


「レベル6のコラプスエリアなんて初めてだよ。緊張するなぁ」


「大したことはねぇよ。行くぞ」



 レーナはそう言うが、レベル6のコラプスエリアはかなり危険だ。並みの腕前では攻略できない。トウコがこれまで訪れたことがない理由も、この難易度を突破できるガードを雇う金がなかったからだ。



「レベル6になると、何だか色の濃さも違う気がするね」


「そうか? コラプスエリアなんてどこも一緒だろ」


「本当に? どこまでも吸い込まれてしまいそうなほど、真っ白に見えるけど」



 コラプス化した土地は、呪いによって景色が変化する。色のない純白の世界に変わってしまうのだ。二人は雪の中を歩くように、コラプスエリアの奥へ進む。


「ミナトくん……コア・デプレッシャの位置は分かるか?」


 レーナの質問に、トウコは魔力計測器を手にして頷く。


「魔力が濃い。たぶん、あっちだと思う」


 トウコが示した方向へ進む。白く汚染されたエリアに人気はなく、この世界にレーナとトウコは二人きりのように思えた。しかし、五分ほど歩くと、レーナが足を止める。



「さっそく出てきたみたいだな」


「……うん」



 二人が進む道を遮る影が。それは、人……ではない。人であった何か。全身を(ろう)で固めたように真っ白な体のそれは、デプレッシャと呼ばれるモンスターだ。


「ギチギチギチ……」


 口らしき部分が動き、とても意思を通わせられるとは思えない、奇妙な音を立てる。それは、本来は人であったとは想像しがたい姿だ。



「トウコ、もう少し下がっておけ」


「そんなに強いデプレッシャなの??」


「違う。私の攻撃に巻き込まれたら、魔石いじりができなくなるぞ?」



 トウコはかくかくと頷いてから、物影に隠れる。レーナはそれを確認してから、デプレッシャの方を見てから、兜の額部分にあったフェイスガードを降ろす。


「それじゃあ、久しぶりに暴れてやるか!」


 レーナは背負った巨大な槍を掴むと、ゆったりと構えた。


「うおりゃあああ!!」


 掛け声と共に、レーナはデプレッシャに向かって踏み出し、その巨槍を振り下ろす。


「ギニャァァァ!!」


 槍の一撃はデプレッシャを叩き潰す。刃は潰れているため、その肉体を引き裂くことはないが……。


「う、ウソでしょ??」


 後方で見守っていたトウコは思わず声を漏らした。レベル6のコラプスエリアをさ迷うデプレッシャだ。普通なら数名のガードがやっとの思いで排除するはず。それが……。


「よーし、一発撃破。トウコ、行くぞ!」


 たった一発である。



「さすがは魔王を討伐した最強の勇者だねぇ。私が見てきたガードの人たちとは、何て言うか……次元が違うよ」


「そうかぁ? あの程度のデプレッシャは、魔王討伐に参加した勇者なら、誰でも一発で撃破できると思うぞ」


「へぇ……」



 あまり大袈裟に驚いてしまったら、失礼かもしれない。トウコはできるだけ控えめなリアクションに止めたつもりだったが……。


「ぬおりゃあああ!!」


 何度も遭遇するデプレッシャをすべて巨槍の一撃で倒してしまうレーナ。ときには複数体のデプレッシャが相手になったが、結果はほとんど同じ。それには、トウコも開いた口が塞がらなかった。



「ねぇ、レーナちゃん。……もう少し手加減してあげた方がいいんじゃない? コア・デプレッシャを浄化したら、みんな人間に戻るんだからさ」


「大丈夫だって。二割くらいの力でやっているから」


「に、二割かぁ……」



 では本気で攻撃したら、どうなってしまうのだ。トウコはそんな疑問をあえて口にしなかった。


 さらに進むと、明らかに空気が変わった。トウコが手にする魔力計測器の数値も一気に跳ね上がる。



「レーナちゃん、たぶん……あれだよ」


「……ミナトくん、か?」



 トウコは頷く。二人の視線の先には、雪が積もったような真っ白な公園の景色。そして、そこに立つデプレッシャだが……どこか、これまで遭遇したものとは雰囲気が違う。


 他のデプレッシャよりも禍々しく、攻撃的な姿は、この地を絶望で汚染する原因……


 コア・デプレッシャで間違いなかった。


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