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◆ミカ③

ウソだ。ウソだウソだウソだ。

信じられなかった。タイヨウが私と同等に見ている女が存在するなんて。そんなわけがない。だって、私は特別で、誰よりも輝く星のような存在なのに。



「絶対に許さない……」



私はすぐに暴露系エリチューバ―に連絡し、この女を叩き潰してやった。勇者もクビになったらしく、噂によるとどこかのギルドで受付をやっているらしい。


マジで笑える。超ド底辺じゃん。やっぱり、これで私が一番……と安心したのもつかの間、タイヨウの浮気がどんどん発覚する。



「なにこれ……。アイドル、女優、貴族令嬢、私と同じエリチューバ―??」



私はこの女どもと同程度って思われてたってこと?? おかしいでしょ。全員ブスだし、俗っぽいし、何も考えてなさそう。どうしてタイヨウはこんな女たちに……。



「あ、分かった。私のせいじゃなくて……タイヨウが馬鹿なのか」



だって、そうでしょう。私はいつだって特別だった。一番だった。誰からも羨まれて、なんでもかんでも一つ抜けていた。それなのに、こんな女たちと同列なわけがない。だとしたら、おかしいのはタイヨウの方だ。



「失踪しちゃったし、別れればいっか」



私はタイヨウに別れのメッセージを送った。きっと、馬鹿みたいに謝って、私が一番だから一緒にいてくれって懇願されるだろう。そう確信していたが、タイヨウからの返信はさっぱりしたものだった。



『そうだな、それがいい。今まで楽しかったよ。ありがとう!』


そ、それだけ……??


「やっぱ、あいつ馬鹿だったんだ」



フリーになると、これまで以上に男性から声をかけられた。社長、弁護士、ミュージシャン、俳優、勇者……など、などなど。けど、誰も退屈だ。それなのに、誰もが私を好きになってしまう。そのはずが、たまにこんなことを言う男もいた。



「ごめん、ミカちゃん。別れてほしい」

「なんかミカと一緒にいると……つらい」

「お前、なんか分かんないけどあり得ないわ」



なにが?? どうして??

中にはタイヨウみたいに浮気する男だっている。よくわかんない。


私が一番じゃないの??

だけど、友達やリスナーは決まって言うのだ。



「ミカちゃん、すごい!!」

「君は特別」

「女神みたいだ」



じゃあ、どうして? なんで皆離れていくのだろう。私に釣り合う恋人はどこにいるのやら。……って言うか、恋人ってなに? どうして必要なの??


でも、いないっておかしいよね。私ほどの可愛い女の子が一人にされているっておかしいよね??



「ねぇ、どうして恋人って必要なんだと思う?」



失踪と活動自粛を終え、ナイトファイブのリーダーからプロヂューサーになったタイヨウに聞いたことがある。すると、彼はこんなことを言った。



「胸が焦がれるくらい、その人が欲しいって思うから……だろ?」


「……なにそれ??」



マジで意味が分かんない。少しキモイような……。ドン引きする私に、タイヨウはいつものように笑った。



「つまり、好きってことだよ」


「……好き?」


「そう、好きな相手と一緒にいたい。それだけのことだろ?」


「ふーん。好きって……なに?」



首を傾げる私に、タイヨウはただ笑うだけで、何も教えてくれなかった。色々な人に、よくよく話を聞いてみると、みんな好きと言う気持ちがあって、誰かと恋人同士になりたい、と思うらしかった。いや、もちろん分かっている。そうなんだろうけど……私ってどうだったっけ。



「好きって気持ちが分かるまで、色恋とは距離を置こう」



そう決意したのだけれど、ぜんぜん分からなった。近寄ってくる男たちは、誰もがつまらない。つまらないって言うか、結局は誰も同じ感じで、特別な存在とは思えなかったのだ。



「じゃあ、タイヨウの好きな人って誰なの?」



答えが出ないと、結局はこの男に聞いてしまう。タイヨウはいつでも余裕がる微笑みを浮かべながら答えてくれる。



「今目の前にいる、ミカだよ」


「……嘘つけよ」



タイヨウは誤魔化すように笑う。空っぽだ。この男も答えはないのだろう。


「あ、分かった」


私は結論に至る。タイヨウと言う男の結論に。



「タイヨウも好きって気持ちが分かってないんだ。だから、とっかえひっかえで、テキトーに生きているんでしょ?」



タイヨウはただ笑うだけで答えない。たぶん、図星なんだ。じゃあ、いっか。たくさんの人に出会った中で、なんだかんだ一番の男であるタイヨウと一緒なら、私も焦らず、好きを理解できる日を待てばいい。



「だけど、何でこんなに寂しいんだろう」



独りを認識したとき、私は得体の知れない恐怖に襲われる。誰といても、それは拭えない。そして、最近は少し分かってきた気がする。たぶん、私を好きだ好きだと言って寄ってきた男たちも、本当はただ何となくの雰囲気で、私を口説いていただけなのだと。だとしたら、私は誰からも好かれていなかった。そういうことなんじゃないか……。



「あ、雪が降っている」



そして、私は見た。晴れた日に降る雪を。

感想・リアクションくれくれー!!

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