私と彼の甘いはずの日々
私には、好きな人がいます。
かっこよくて、背が高くて、性格もよくて、そして同級生の、本当に理想の彼です。
恋をしたのが高校入学と同時、一目ぼれでした。
そして、意を決して告白したのが、恋をしてから一年たってからでした。
告白を快く受けてくれた彼は私と付き合うことになって、付き合って一年たっても周囲からは理想の恋人同士だって言われてます。
……なあんて、少し現実にはありえないことを想像して、逃避をしていました。
今、私は駅で待ち合わせをしています。
待ち合わせの一時間前に来て、待っています。
「よ、ハニー」
待ち合わせきっかりの時間に、彼が来ました。
ハニーなんて呼称を言って違和感ない人なんて、彼ぐらいです。
「……おはようございます、あなた」
そして私は彼にあなた、と呼ぶよう言われてます。惚れた弱みと言いますか、私、彼の言うことにはなんでも応えたくなっちゃうんです。
そのせいで私は、……私は!
たしかに、彼はかっこいいです。
背も高いです。
同級生です。
クラスでは理想の関係、だとか最上のカップル、とか言われてます。
でも、でも、でも!
「……あなた、どうして私にこんな恰好をさせるんですか!?」
「ん、かわいいと思って」
「そんな理由で駅まで呼びつけないでください!」
とっても彼は、いい性格をしているのです!
私を休日の朝にこうして呼びつけるときのセリフ、みなさん聞いたらびっくりしますよ!?
『おう、ハニー。俺だ、お前の愛しい彼だよ』
そんな言葉から始まって、
『あのさあ、ハニー、お前結構かわいい服似合いそうじゃね?』
そんな言葉で私を釣って、
『じゃあさ、俺に見せてくれよ、明日朝。メイド服着て。ああ、心配すんな、ちゃんと服は作って送ってやったから。朝届くよう手配してあるから、それ来て駅前集合な、じゃ』
ですよ!?
で、私は朝届いたメイド服を見てびっくり。
私は普通のメイドさんが着る服を想像していました。
でも、違いました。
フリフリは必要以上にあります。
スカートの丈はとっても短くて、風が吹いたらショーツが見えてしまいそうです。
そして何より、この寒い中、半袖なのです!
……彼、本当に私のこと好きなんでしょうか……?
なんども、何度も着るのをためらいました。でも、がっかりさせたくないから、着てきました。……うう、寒い……
「じゃ、俺んち行こうか。……今日は両親いねえし、……時間はたっぷりある。……しってるか、その服、スカートがめちゃくちゃ脱げ安くなってんだ、なぜかわかるか?」
肩に手を乗せ、彼が言います。私は首を振ります。
「それはな、俺が脱がせやすくするためだよ」
ばっと、私はその場で三メートル跳んで彼から距離を取りました。
「……なぜ離れる」
「わ、わわわわ、私、きょ、今日、今日はそんな、そんなつもりでここに来たわけじゃ……!」
「ないってか?……そうだな、そういうことにしといてやるよ。……じゃ、今日は健全に遊ぶとしますか。……まずはゲーセン行くか?」
「え……」
彼の意外な反応に、私は呆けてしまいます。……あれ、絶対に押してくると思ったのに……
「お、『え?』って言ったな、『え?』って。結構期待してたんだ。悪かった悪かった。……じゃ、俺んち行こうか。……今日は休みで、両親はいねえ。お前は親になんて言って来たんだ?」
私と彼は並んで歩いています。
彼の手は私の肩に乗せられますが、今度は拒否したりしません。
「……お、女友達のところで、……泊るって……」
私の声は、かすれていたかも知れません。
「あはははは!そうかそうか、やっぱり期待してたんだ!オッケー、ご期待に添えて、今日はいっぱい遊ぼうな」
とっても意地の悪い笑顔を向けて、私に言います。
ああ、私、こんな人を好きになったんだな……。
そうは思いますが、嫌いにはなれないし、どころかもっともっと好きになってしまいます。
妹にこのことを話したら、
『お姉ちゃんって、Mだよね、確実に。……いじめられて悦ぶなんて、信じられない』
とのことでした。もちろんそのあと〆ましたが、確かにその通りかも知れないと思いました。
「……よ、よろしくおねがい、します……」
だって、こんなに意地の悪い彼に囁かれて、こんな言葉を私は口走っているのですから。
「おうよ。じゃ、行こうか」
「は、はい……」
ビージーエムは『ドナドナ』。でも、私は彼と一緒なら売られるのも悪くない、と思うのでした。
私と彼は、明日も明後日も四明後日も、ずっとずっと、こんな調子で付き合って行きます。
ここから先?
何言ってんですか。
彼と私の二人だけの秘密に、決まってるじゃないですか。
こんにちは、作者のコノハです。
……まあ、特にコメントはなしです。ただ二人の惚気話なんで。
駄文散文失礼しました、ご愛読感謝!
では、失礼します!