表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
第8章 ウィザード・オブ・ザ・アンガー
90/152

7話 急げ!!

 やいばを交えるレイと塚元つかもと

 塚元をガンガン責めるレイに対して、塚元は受け流すのが精いっぱいの様子だ。

 レイがウィッチブレイドで塚元の刀を撥ね退けた隙に、回し蹴りを塚元にお見舞い。それを受けたことで、柱に叩きつけられた衝撃で塚元は刀を落とした。

 尻餅をついた塚元の目の前に、ウィッチブレイドが突き付けられた。


「さぁ観念しなさい……――」


 塚元を見下すように睨むレイ。

 レイは耳に着けているインカムに手を当て、タケルに連絡を入れた。


「――塚元を抑えたわ。そっちはどう?」


『《こっちも抑えた。今、上地のことを訊いてる》』

「なぁ白ちゃん、降参するさかい堪忍してぇな……」


 今にも泣きそうな顔で、塚元は両手を上げた。


「うるさい! アンタみたいなクズが命乞いできると思ってるの?」

「クズ?」

「そうよ。じゃなきゃゴミかしら?」


 塚元に暴言を吐くレイ。自分の味方を使えなくなった道具のように平気で殺す塚元に怒りが収まらないのだ。


「ほー、ええ例えやな――」


 突然低い声で喋り出した塚元。

 レイは気づいていないが、その時に左手に嵌めたグローブのスイッチを入れていた。


「――……ホンマ死んでまいそう、やっ!」


 塚元は、グローブを着けた左手をレイに向けて伸ばした。


「キャァァァー‼」

 

 グローブがレイの心臓近くに触れた瞬間、レイの全身に電流が流れた。

 塚元がレイから手を離すと、レイは崩れるように倒れてしまった。


                 〇


「《どうした⁉》」


 悲鳴の後からもインカムで呼びかけるが、全くレイの応答がない。


「何があったんですか⁉」

『分かりません、こちらからでは何も……』


 野々原に連絡してみるが、やはり分からないようだ。


(何があったんだ⁉)


 こんなことを考えていると、ある光景が頭を過った。

 

 撃たれて倒れる谷の姿だ。

 

(まさか……)


 次第に胸騒ぎ大きくなる。レイにも同じことが起こっているのではないかと……。

 武は鬼柳きりゅうとダークスピーダーを何度も交互に見る。

 谷を殺した犯人の可能性がある男が居るのに、見逃さなきゃいけないのか……と。


「《畜生……‼》」


 迷いを振り払い、ダークスピーダーに飛び乗ると、急発進させた。


「《野々原さん、レイの現在地は?》」

『今出します』


 すると、助手席のダッシュボードから薄い板のような物が伸び、それが立ち上がった。

 レッドスピーダーにも付いていた物と同じタブレット端末だ。

 そして、タブレット画面にはシーシャークの見取り図の中に赤い点が現れた。レイの現在地だ。

 レイは建物の中央近くに居るようだが、分かるのは位置だけで、どういう状況かは分からない。

 1秒でも早く着かなければ。

 そこで目を付けたのは、シフトレバーの左横に付いている『NITROUS』と書かれた赤いスイッチカバーだ。

 カバーを開け、中のスイッチをONにすると、赤いランプが点灯、続いてシフトレバーのカバーを開け、中のボタンを押した。

 すると、ダークスピーダーのマフラーから青白い炎を噴射し、武がシートに押し付けられる程に一気にスピードが上がった。

 この『NITROUS』とは笑気ガスとも呼ばれる亜酸化窒素ガスをエンジンに送り込むことで、過給状態になり、一時的に馬力を上げ急加速が可能となる。

 アナログのスピードメーターは限界を振り切り正確な速度を表示できていないが、デジタルのスピードメーターは200から更に上昇している。

 幸い一般道は片道3車線と広く、今の時間帯なら車も少ない。


『無茶です武様。そのスピードでは事故になります!』


 ダークスピーダーの異常な加速に気づいた野々原が武に警告した。


「《時間が無いんです!》」


 武はシーシャークに向けてダークスピーダーを走らせた。

 

     

 シーシャークの中――

 塚元の電撃を受けてから床に倒れたままぐったりして動かないレイ。

 その間に塚元は自分の刀を拾うと、ぐったり倒れたレイの側に立った。


「どうや、ゴミにやられた気分は?」


 倒れるレイを見下す塚元。先ほどレイに言われたことを根に持っているせいか、レイに皮肉を返すが、レイの耳には入っていない。


「答える気にもならへんか。ええでぇ、今もっと楽にしてやるさかい」


 そう言うと塚元は、刀を振り上げ……。


「何や?」


 外から聞こえるタイヤの軋む音。それに気を取られた塚元は音が聞こえた方へ目を向ける。

 目に入ったのは、爆発で吹っ飛んだ本来は両開きの扉があったところ。その先には近づいて来る。ヘッドライトの明かりだ。

 

 シーシャークを正面に捉えたダークスピーダー。

 武はスピードを少し緩めるが、それでも何十キロも出ている。

 どんどん建物が近づいて来る。

 爆発で空いた穴の先には塚元の姿が目に入った。


(ここだ!)


 武は建物に入る瞬間にハンドルを切った。それによってダークスピーダーは横滑りし、さらに減速したが――


「嘘やろ⁉」


 ――勢いでダークスピーダーの後部にぶつかった塚元が落とし穴すれすれまで飛ばされ、その時に刀を落としてしまった。


 武はダークスピーダーから降り、急いでレイへ近寄った。


「《レイ、しっかりしろ⁉》」


 武はレイの体をゆするが、全く反応がない――いや、息すらしていなかった。

 レイの蘇生を始めようとすると、突然武の首が絞められた。

 塚元が腕で武の首を絞めているのだ。


「要らんことせんでええは黒ちゃん!」


(くそ‼ ……)


 抵抗するが、なかなか塚元は力を緩めない。

 その時に武の頭にある言葉が過ぎった。


 ――教えた通りにやれば大丈夫よ。相手の腕で首を絞められたら、後頭部を使って相手に頭突きをするの。


 レイから首を絞められた時の対処法もレイから教わっていたのだ。

 武は自分の後頭部で塚元の顔目掛けで頭突きをした。続いて右ひじを使いで脇腹を殴った。

 塚元が武から離れると、更に右ストレートパンチを塚元に入れた。

 塚元も「このやろぉー‼」と武を殴りにかかるが、武はそれを避け、更に右に続いて左手で塚元の顔にパンチを打ちこんだ。


「うっ‼」


 武の左腕に激痛が走った。

 苦痛の表情を浮かべ、撃たれた左腕を抑える。


(こんな時に……)


 痛み止めの効果が切れてしまったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ