表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
第8章 ウィザード・オブ・ザ・アンガー
89/152

6話 武VS鬼柳

 倉庫やコンテナヤードが横に並ぶ一般道。埠頭へ入る為の配慮で片側3車線と非常に広いこの道路を走る鬼柳きりゅうの白いセダン。

 その後ろから2台の車が追いかけてくる。

 鬼柳の後ろを走る車には、赤西あかにしが助手席の窓から手を伸ばし、鬼柳の車に向けて銃撃していた。

 それにより、鬼柳の車の最後部の窓ガラスは粉々に割れ、テールランプのカバーが破壊され、中のランプがむき出しになっていた。

 そこへ、タケルが運転するダークスピーダーが追いつく。

 武はサングラスをしているが、今はサングラスに付いている暗視機能で昼間のようにハッキリと見えている。


「《派手に撃ちまくって……》」


 隠密さの欠片もない赤西の行動に呆れていた。

 もしも、目撃者が居た場合、何の言い逃れも出来ないだろう。むしろ目撃者を引き寄せる行動だ。

 すると、ダークスピーダーの前を走るセダンに乗っていた組員――青海あおみが気づき、ダークスピーダーへの銃撃を始める。

 だが、ダークスピーダーのボディは防弾、当然ながらすべての銃弾を弾いた。

 それを見た組員は「どうなってんだ、あの車⁉」と驚きの声を上げながらも、何故かダークスピーダーへの銃撃を続けた。


「《防弾って言葉知らないのかな? まぁいいや、そろそろご退却願いましょうか》」


 武はシガレットソケットの近くにある『MACHINE(マシン)GUN(ガン)』のボタンを押した。

 すると、ダークスピーダーのナンバープレートの両サイドにある黄色いフォグランプが上へ開き、銃口が伸びる。

 狙いはダークスピーダーの前を走る青海が乗るセダンのタイヤだ。

 武は狙いを定めて、ハンドルに付いている発射ボタンを押した。

 ダークスピーダーのフォグランプのマシンガンが火を噴き、銃弾が放たれると、タイヤに当たった。

 タイヤがパンクしたことでバランスを崩したセダンは、蛇行運転の後横滑り。更に猛スピードだったのと、陥没した所でもあったのだろうか、その勢いで横転してしまった。


(大丈夫だったかな……?)


 本来は動きを止める程度にしか考えていなかったのだが、思っていた以上の惨事に、敵とはいえ心配になった。下手したら自分が殺人になってしまう。

 今回は大丈夫だったが、下手をしたら一般人を巻き込む可能性もある。


野々原(ののはら)さんに、車を無傷で止めるガジェットを考えてもらわないと駄目だな……)

 


 横転した車からそれぞれ青海と組員が這い出る。

 怪我はしているが、車に乗っていた2人は無事のようだ。


「ちゃんと運転しろよな馬鹿野郎‼」

「してたよ。急にハンドルが取られたんだよ‼」

「言い訳してんじゃねぇ‼」

「んだとゴラー‼」


 武のせいとは知らない2人は、そのまま喧嘩を始めてしまった……のだが、怪我をしているので、互いにパンチを出す前に、まるでエネルギーが切れたロボットのようにすぐに倒れ、すぐに喧嘩は収まった。

 

 先ほどの組員のセダンの惨事を見て、少しマシンガンを使うことを躊躇ためらう武。

 だが、今のダークスピーダーの武器は、マシンガンとロケット弾しかない。

 何をどうすればいいのか、と武が考えている間に、赤西の標的が、鬼柳からダークスピーダーへ替わった。

 思うように攻撃が出来ないことで、武のイライラがピークに達しようとしていた。

すると、突然だ。

 ダークスピーダーに銃を向けていた赤西の額に風穴が開き、続いて車を運転していた組員の前の窓ガラスに血しぶきが飛んでガラスを真っ赤に染めた。

 猛スピードでコントロールを失った車は大きく曲がり、道路沿いのコンテナに激突、爆発炎上した。


「《な、何だ⁉》」


 一瞬何が起こったのか分からないと混乱する武だったが、その答えは鬼柳の車を見て判明する。

 運転席の窓から後ろに向けて拳銃ベレッタが伸びていたのだ。


(ミラー越しとかふざけんなよ!)


 サイドミラーを使って、後ろの標的を狙い撃ちするという、映画やアニメでは容易く成功しているので簡単に見えるが、本当はかなり高度なテクニックだ。

 それをやってのけるのだから、鬼柳という男は、やはりただ者ではない。

 武は一か八か、ダークスピーダーのマシンガンで、鬼柳の車を攻撃した。

 しかし、鬼柳の車は蛇行運転で弾を次々避ける。

 やはり鬼柳の動きを封じない限り、止めることは出来ないようだ。

 ダークスピーダーのマシンガンでは、鬼柳を直接攻撃は出来ない。そこで武は自分で銃撃するしかない。


「《野々原さん運転代わってください!》」

『分かりました』


 インカムで野々原に連絡をした。

 窓を開けて撃つことも考えたが、ダークスピーダーの窓は普通の車と違い、窓は手を出すのが精いっぱいくらいの一部分しか開かないため、鬼柳を撃つには、ガルウィングドアを開けて、身を乗り出すしかない。

 問題はミラー越しでも確実に当てる鬼柳の腕だ。

 能力が使えるようになっているか分からない今は、まともに銃弾を受けてしまう危険がある。

 ハッキリ言うと賭けだ。

 しばらくすると、ダークスピーダーのハンドルが勝手に動き出した。


『準備完了です』


 遠隔操作で野々原が運転することを確認すると、武はガルウィングドアを開けた。

 そして、シートベルトを伸ばし左腕に巻くと、適当な長さで勢いよく引っ張りベルトを固定。

 拳銃ファイブセブンを構えながら、外へ身を乗り出した。

 正直揺れが激しいので狙いがつけ難い。

 鬼柳もルームミラーを覗き、武がこちらを狙っていることに気づいたようで、拳銃を取り出すと、左手に持ち替え、ルームミラーで武を狙った。

 狙われていることに気づいた武は、サッと頭を車内に戻し弾を避けた。


(あぶねぇー‼)


 武は再び身を乗り出して銃を構える。

 鬼柳も引き金を引き始めた。

 その時だ。

 武の目の前の光景がゆっくり動き始めた。

 能力が再び使えるようになったのだ。

 狙いを鬼柳の拳銃に定め引き金を引いた。

 鬼柳が引き金を引き、銃弾が放たれ、真っすぐ武の方へ飛んで行くが、武がいち早く放った銃弾によって逸らされ、武の顔すれすれを通って行った。

 そして武は、もう1発銃弾を放ち、それは鬼柳の拳銃に見事に当たった。

 鬼柳は拳銃を落とされ、その衝撃で手を抑えた。

 無防備になった今がチャンスと、鬼柳の左肩に狙いを定め、引き金を引く。


「うっ‼」


 銃弾を受けた鬼柳はハンドル操作が出来ず、路上駐車されていた車に乗り上げ横転した。

 その近くにダークスピーダーが止まると、武が駆け寄った。

 変形した運転席のドアを無理やりこじ開けると、そこには頭から血を流す鬼柳が居た。

 重傷だが息はあるようだ。

 武は鬼柳を車から引き吊り出すと、横転した車に鬼柳を寄りかけるようにすると、銃を構える。


「《さて、色々吐いてもらおうか》」

「……何をだ?」


 息を上げながら鬼柳は武を睨みつけて訊いた。


「《上地を殺したのはお前か?》」

「……」


 鬼柳は何も言わずに黙ってしまった。

 恐らくプロの殺し屋だ。そう簡単に素性を話すはずがない。

 

 バンッ!

 

「《答えろ⁉》」


 武は鬼柳の顔のすぐ横に銃弾を撃ち込んだ。

 しかし鬼柳は、怪我のせいで反応が鈍いのか、それとも肝が据わっているのか、全く動じない。

 もしも鬼柳が谷の仇なら、今すぐにでも檻に入れたいくらいだ。

 だがその為には、証拠が必要だ。


塚元つかもとを抑えたわ。そっちはどう?』


 インカムからレイの声が聞こえた。


「《こっちも抑えた。今、上地うえちのことを訊いてる》」


 レイの方も塚元を捉えたようだ。

 後は塚元か鬼柳が白状すれば終わる。


『なぁ白ちゃん、降参する境堪忍してぇな……』


 インカムから塚元の声が聞こえる。


『うるさい‼ あんたみたいなクズが命乞いできると思ってるの?』

『クズ?』

『そうよ。じゃなきゃゴミかしら?』


(おいおい、あんまり刺激するなよ……)


「《おい、まだ殺すなよ、色々聞きたいことが――》」


 ――あるんだ、と言い切る前に、レイに「うるさい」と遮られてしまった。

 これで塚元もお終いか、と武が確信した。

 レイのことだ、問答無用で殺すだろう。


『ほー、ええ例えやな――』


 突然、低い声色で話し始めた塚元。

 武の中で、何か胸騒ぎがして……それは当たってしまった。


『――……ホンマ死んでまいそう、やっ!』

『キャァァァー!』


 インカムからレイの悲鳴が聞こえた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ