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WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
第8章 ウィザード・オブ・ザ・アンガー
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1話 特定

 河川敷・橋の下――

 周りの風景がオレンジ色に染まった頃、「BODY」の機能で車体の色を変えたレッドスピーダーの運転席に座るレイが、助手席のダッシュボードから伸びるタブレット画面を見ていた。

 沢又さわまたとチンピラのスマートフォンから引き出した情報を確認しているのだ。

 すると、レッドスピーダーの隣に、こちらも「BODY」の機能で色を変えたダークスピーダーが止まる。

 宮元みやもとに沢又の居場所を伝えるため、別行動で公衆電話を探しに行っていたのだ。

 ダークスピーダーからタケルが降りると、レイが居るレッドスピーダーの助手席の外からレイを覗いた。


「終わった。そっちはどう、何か掴めた?」

「今調べてる」


 レイは武に向くとことなくタブレット画面を睨んでいる。

 沢又が言っていた「死体処理」「しー」の手掛かりを探しているのだ。


「ジイ、どう?」


 通信で野々原(ののはら)にも分析を行ってもらっているのだ。


『リストは手に入れましたが、塚元つかもと組が所有する会社はこれで全部です』


 塚元組が関連する会社の一覧がタブレット画面に現れた。

 しかし、どれも沢又が言い残したものとはあまり関係が無いように思える。


「そもそも『死体処理』っていう時点で、自分の名前で契約しないわね……」


 レイが自分の考えの甘さに呆れていた。


「沢又のスマフォのデータから、何か手掛かりは?」

「既に調べたわよ。電話番号も該当する会社は見当たらない」


 武とレイが「うーん」と首をかしげていると、武があることを思いついた。


「そうだっ! オッチャンなら何か知ってるかも」

「オッチャンって?」

オヤッさんの凄腕情報屋。まぁ、駄目もとだけど……」


 そう言うと、武はダークスピーダーのグローブボックスから、自分の携帯電話を取り出した。

 万が一の情報収集の為に持ってきていたのだ。

 流石に持ち歩くのは危険だとレイに注意されたため、グローブボックスに仕舞っていた。

 武は携帯電話の電源を入れると、すぐに日下くさかを呼び出した。


『おい! 本当にアンちゃんか?』


 電話の向こうから日下の慌てたような声が聞こえた。


「その感じだと、俺のことも耳に入ってるみたいだな」

『その通りだ。何回も電話をかけても繋がらないし、死んだかと思ったよ。無事なのか?』

「ピンピンしてるよ――って、それはいい、情報が欲しい」

『こんな時にか?』

「こんな時だから! 俺の側にいる魔法使い二人組にからまれてよぉ」

『魔法使い二人組⁉ ――って、まさか白い奴と黒い奴か⁉』

「そのまさか――」

『何の情報だ?』

「実は塚元組の死体処理……場……? ――みたいな情報ないかな?」


 それを聞いた日下がしばらく沈黙した。

 やっぱり知らないか。

 武が半分諦めると、日下の声が電話の向こうから聞こえた。


『確かな情報じゃねぇけど、偶に人が消える、って噂の会社なら知ってるぞ』

「知ってる⁉ なんてとこ⁉」

『確か……シーシャークっていったかな?』


(シーシャーク……『しー』ってもしかして!)


「場所は?」


 日下は知る限りの住所を武に伝えた。


『――埠頭近くに倉庫が並んでいる場所のはずだ』

「ありがとうオッチャン!」

『ところでアンちゃんは大丈夫なのか?』

「今のところは平気だよ。しばらく缶詰になるけどな……」


 そう言って武は電話を切ると、レイに日下からの情報を伝えた。

 レイはその情報を基にネットで位置情報を確認する。

 日下の言っていた埠頭の近くに、確かにマップには、『株式会社 シー・シャーク』と出た。


「あったな」

「そうね」

「『株式会社 シー・シャーク』――ネーミングセンス最悪……」


 武とレイが同時に口にした。

 シーシャーク、直略すると、海鮫うみざめ、そもそも鮫は海に居るのがほぼ当たり前なので、この名前はどうかと思える。


「多分、沢又の言いかけた『しー』は、ここじゃないかな?」

「かもしれない。ジイ、どんな会社か調べられる?」

『待ってください』


 しばらくすると、野々原から通信が入った。


『この会社は海の生物を保管および研究をしているようです。他にも潜水道具などの販売もしているみたいですね』

「表はそうでも、裏では死体を海に捨ててるってことなのかも?」

「あり得るわね。行きましょう」


 レイも納得し、レッドスピーダーの運転席へ移動。

 武もダークスピーダーに飛び乗った。

 

                 〇

 

 水沼研究所跡――

 辺りは暗くなり、明かりの必要性が増したころ、西嶋にしじま率いる県警の捜査一課イッカと、そして地元の刑事たちが集まっていた。

 その中に、組織犯罪対策課(マル暴)・第二係二班の班長・神代かみよが居た。

 本来ならあまりこういう現場には来ないが、沢又の件などを確かめるためにここに来たのだ。


「よし、キミ達は1階を頼む」


 西嶋が制服警官に指示を出し、一同は建物の中に入って行った。

 入り口を潜ると、明かりの無い室内は、とても暗く、足元に何があるのか全く分からない。

 西嶋と神代は、持ってきた懐中電灯を点け、周りを照らした。

 すると、壁に「3階に来い」と書かれた張り紙を見つけた。


「……3階に行きましょう」


 西嶋と神代が3階へ上がった。

 注意深く進み、やがて会議室へたどり着いた。

 すると、部屋の中には、床に横たわる2つの陰。

 西嶋と神代が、そこへ明かりを向けると、神代が声を上げた。


「沢又⁉」


 そこに横たわっていたのは、間違いなく沢又だ。

 神代が沢又に近づいて調べるが、既に息はない。

 西嶋はもう一つの死体に近づいた。こっちも息はない。

 チンピラの死体を調べると、背中に、何か硬い物があることに気がついた。

 しかし、それ以上は調べず、鑑識に任せることにした。

 

 鑑識を呼んで会議室を封鎖。

 照明機器が置かれ、部屋が明るく照らされている。

 倒れている沢又を鑑識官がチョークでアウトラインを引き、それが終わると、沢又の遺体は担架に乗せられ運ばれていった。

 神代と鹿沼は、鑑識官の邪魔にならないように、隣の部屋に開いていた大きな穴から様子を見ている。


「一体誰が……」

「分かりません警視」


 慎重に横たわるチンピラの背中に隠された物の写真を撮った後、それを取った。

 それは紙袋に包まれているが、その形から袋を取らなくても中身が何なのかが分かる。

 拳銃だ。

 鑑識官が袋から拳銃を取り出した。

 その拳銃を見て、西嶋と神代があることに気づいた。

 拳銃は、シグザウアーP230JP、警察拳銃だった。


「なぜ警察の拳銃をこの男が……?」

「すぐにライフルマークを調べてくれ」


 鑑識官に指示を出した神代。

 続いて、別の鑑識官が、チンピラのズボンのポケットからSDカードを見つける。

 SDカードには「警察へ」と機械でプリントしたシールが貼られていた。

 鑑識官が証拠保管用の透明な袋にSDカードを入れる。

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