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WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
幕間 ライフルの行方
82/152

保険

 河川敷の橋の下――

 そこに1台のバイクが隠れるように止まった。

 エンジンを切り、ヘルメットを外した。

 鬼柳きりゅうは周りの様子を窺い、問題ないと判断すると、懐からスマートフォンを取り出した。


「仕事は終わった。追加分のギャラを忘れるなよ」

『ホンマか……?』


 スマートフォンの向こうから聞こえてきたのは、塚元つかもとの疑うような声だった。


「問題ない、特製の弾丸だ。体内に入ればすぐに死ぬ」

『ならえぇ。今夜9時にシーシャークで待っとる。場所は――』

「――知ってる。9時だな」

『ほな、待っとる。そうそう、()()()も忘れんようにな』


 そこで電話は切れた。


(嘘つけ……)


 塚元のことだ。恐らくそこで自分を殺すつもりだろう。

 それに塚元が指定した場所は、死体の処理場だということは既に調べが付いている。

 鬼柳もそこまで馬鹿ではない。

 塚元も言っていた硬い物。あれが保険だ。

 何に使ったかは知らないが、訳アリの品なのは間違いない。

 警察に渡ってしまえば、塚元は勿論、黒富士組全体にダメージが及ぶ可能性がある。

 そうなるのはさすがに避けたいはずだ。

 鬼柳は再びヘルメットを被りバイクを走らせた。

 

 鬼柳が向かったのは、とある住宅街にある貸しガレージ。鬼柳が向かったのは一番奥のガレージだ。

 シャッターを開けると、中にはもう1台のバイクが止まっていた。アメリカンスタイルの大型のタイプだ。

 その奥には、パソコンと3Dプリンターが置かれていた。

 鬼柳は、今まで乗っていたバイクをガレージの中に仕舞うと、今度は大型バイクに乗り換えた。

 あの黒いデロリアンの追跡は振り切ったが、万が一ということもある。乗り換えた方が安全だろう。

 

 続いて鬼柳が向かったのは、とある霊園。

 鬼柳が足を運んだのは、「鬼柳」と彫られた背の低い洋形の墓石の前。

 勿論ただの墓参りではない。

 周りの様子を窺い、誰も居ないことを確認すると、墓石の香炉を退かし、その下の拝石を退かした。

 本来骨壺を収める場所に有ったのは、黒いアタッシェケース。

 これは上地を撃った時に使った銃が入っていたケースだ。

 そのケースとは別にもう一つ同じサイズの白いケースがある。

 鬼柳は銃が入っていた黒いケースを取り出すと、拝石と香炉を元に戻し、ケースを持って歩き出した。

 その鬼柳を、墓石の陰から覗く人影があった。

 

                 ○

 

 とあるヨットハーバー。

 数多く停泊するヨットの中から、鬼柳は黒いアタッシェケースを持って、一艘のクルーザーの中へ入って行った。

 どうやら鬼柳の所有している物らしい。

 その鬼柳を高台から双眼鏡で覗く1人のスキンヘッドの男が居た。

 赤西あかにしだ。

 塚元の命令で、鬼柳を尾行していたのだ。

 鬼柳が例の銃を持ってこない、又は偽物を持ってくる可能性があるので、鬼柳が立ちまわるところを全て監視しろということだ。

 黒富士組の情報網を使って、鬼柳が借りているガレージのことを調べ、そこからこっそり尾行していたのだ。

 しばらくすると、鬼柳がクルーザーから姿を現した。

 手には先ほどの黒いアタッシェケースがあり、鬼柳はそのままバイクに乗ってヨットハーバーを後にした。


「追え」


 赤西は後ろに居た2人のチンピラに命令を出した。

 チンピラが鬼柳を尾行して行くと、赤西は鬼柳のクルーザーの中へ入って行った。

 クルーザーの扉には鍵がかかっていたが、赤西はピッキングで鍵をこじ開けた。

 中に入ると、多少の使用感はあるものの、綺麗そのものだ。

 赤西はクルーザーの中を調べる――他から見ると物色ともいえるが。

 あっという間に船内は散らかり、漫画で見るような、泥棒が入りました、の光景に早変わりした。

 棚などの収納が可能な場所は全部調べたが何も無い。

 そこで赤西は、クルーザーの先端の中にあるⅤの椅子を調べる。

 すると、一ヵ所だけ僅かにガタを感じた。

 その部分を取ってみると、そこには先ほど鬼柳が持っていた――正確には、レイの銃が入っていた――アタッシェケースがあった。

 赤西がケースを開けてみると、中に入っていたのは、3つに分解された中折れ式のライフルが入っていた。

 間違いなく上地を殺す為に鬼柳に渡した物だ。

 鬼柳に渡す為に、青いゴミ箱にこのケースを隠したのは赤西だ。当然中身も確認している。

 やはり保険としてここに隠したのだろう。

 しかし、それも無駄になった。

 赤西はスマートフォンを取りだし、塚元を呼び出した。


「オヤジ、見つけました」


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