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WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
第7章 STEP UP(ステップアップ)
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6話 動画(ビデオ)

 たちばなは様々な現場に足を運んでいた。

 その場所は沢又さわまたが供述した場所だ。

 沢又の話では、赤西あかにしを追っていた時に、赤西が天王会てんおうかいの組員と揉めている場面に遭遇、赤西には逃げられたが、天王会の組員を捕まえ、塚元組つかもとくみとの抗争を企んでいることを白状させ、天王会の組員があつまるボートマリーナへ向かった。

 タケルが応援を呼んだという言葉を信じ、一時は待機していたが、天王会の組員が行動を起こす時間になってしまったので、やむなく踏み込んだ。

 ということだが、やはりおかしい。というより出来過ぎている気がする。

 沢又が自分たちに塚元組の張り込みの状況を訊いてきたり「気になるから」と唐突に張り込みに参加したり、むしろ沢又の方が怪しい気がしてきた。

 橘に付き合う西嶋にしじまもまた同じだ。


 続いて橘たちが向かったのは、赤西と天王会の組員が揉めたという現場。高速道路下の公園付近だ。

 ここで赤西の車が銃撃されたという。

 この現場では車の物と思われるガラス片が発見されている。

 付近の聞き込みで銃声を聞いた人は居なかったが、沢又の話では、サイレンサー付きの拳銃が使われたらしいから、銃声を聞いていない人が居ても当然だろう。

 続いて向かったのは、その後のカーチェイスをした経路だ。

 その時に付いたと思われるタイヤ痕も確かに確認された。


 次は天王会の組員を抑えたという狭い道路。

 偶々工事をしていたため、それで抑えられたというが、それも計画の一つだろう。恐らく工事はわざと捕まる為に前もって仕掛けていたに違いない。その証拠に現場には工事をした形跡が全く無い。

 でも、これだけでは沢又の供述通りだ。


「とりあえずは供述通りですね?」


 西嶋は渋々納得したようだが、橘はモヤモヤした気持ちが残った。


「本当に大下刑事が天王会と繋がっていると?」

「沢又刑事の話では、脅された様子だった、って言ってますから、もしかして人質……?」

「じゃあ、大下刑事と親しい人を当たってみよう」


 確かに西嶋の言う通り、人質を取られているならやむを得ないかもしれない。

 それでも何か引っかかる自分がいるのも事実だ。

 現場を去ろうとした、その時だ――


「すみません、刑事さんですよね?」

 

 橘の西嶋の元へ、1人の中年の女性が声を掛けてきた。


「どうしました?」


 2人が一斉に女性に尋ねた。


「ここで工事をしてたみたいなんだけどね、その人たちが変だったのよ」

「目撃したんですか?」

「ええ。それで何が変だって、車でここを通ろうとしたら、通行止めだって言われて、仕方なく引き返したんだけど、そういうのはもっと手前にも看板を出さないといけないはずでしょ? それが無いのに怒られて……」

「その工事をしていた作業員の顔は覚えていますか?」


 西嶋が訊いた。


「それが……ヘルメットで目の部分が隠れていたので……」

「他に何か見ませんでしたか?」


 橘が訊くと、何かを思い出したかのように女性は話し始める。


「そういえば……その後にパトカーのサイレンが聞こえて……――そうっ! その工事現場の前で車が止まって、その後に覆面パトカーっていうの? その車が来たのよ」


 恐らくそれは武と沢又の覆面車だろう。


「それで覆面車から降りたのはこの2人ですか」


 橘は自分のスマートフォンを出して、武と沢又の画像を女性に見せる。

 女性は「そうそう」と頷いた後、更に目撃したことを伝えた。


「――それで、その2人の刑事さん、相手が何をしたのか分からないけど、酷いのよ。男の人を投げ飛ばしたり、脅したりして、もう見ていられなかったくらいなんだから……」


 その割にはよく見ているよな、と橘は思ったが口にはしなかった。


「それで、相手の男はどんな人でしたか?」

「そうね……あっ、動画ビデオ撮っていたのよ」

「どうしてまた?」

「こういうビデオがインターネットで受ける、って娘が言ってて」


 そう言うと女性はスマートフォンを取り出した。

 少し操作で回り道をしたが、何とか動画のメニューにたどり着き、動画を再生。

 遠目で撮ったせいか画面は少しピンボケしているが、それでも状況を把握するには十分だ。

 動画では沢又が男を捕まえてボコボコにして、その後に武が男を脅している(?)様子が記録されていた。

 正直これだけでも警察の問題行動として指摘されるいい材料になりそうだが、それを見ているうちに、橘があることに気づく。


「この男……。おい西嶋、こいつ!」

「まさか!」


 西嶋も動画の男を見て頷いた。

 沢又によって覆面車に乗せられているスキンヘッドの男。

 多少ピンボケしていても、こいつは間違いなく、塚元組の赤西だ。服装も事務所を出る時に来ていた物と全く同じだ。


「橘さん⁉」

「あぁ、決定だ。沢又は嘘をついている!」

「すぐに警視に連絡します!」

「頼む――すみませんその動画いただけますか?」


 橘が女性に動画の提示を求めた。


 その後、動画の買い取り金額について色々女性にぼやかれたが……。

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