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WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
第7章 STEP UP(ステップアップ)
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5話 生きていた!

 沢又さわまたは焼け焦げたボートマリーナ付近の聞き込みをしている。

 一見すると警察の職務を遂行しているように見えるが、沢又の場合、邪魔になる可能性がある目撃者探しと、行方不明になったタケルの足取りを掴むための行動だ。

 当然ながら、武の情報は全く無い。

 腕を負傷した状態で運河に落ちたのだ。助かる可能性は低いと思うが、だからといって安心できるわけがない。少なくとも武の屍が上がらない限りは。

 

 県警の刑事部屋に戻った沢又は、自分の席に着くと、椅子に深く座り込んだ。

 一通り確認するがボートマリーナの件での目撃者は全く見つからない。

 とりあえず問題の一つが無くなったことで沢又は内心、ホッとしていた。

 すると、刑事部屋の電話がなった。

いち早く気づいた県警刑事が電話に出る。


「はい第二係……お待ちください――沢又さん白摩はくま署から電話です」

 

 そう言うと、県警刑事は、電話の保留ボタンを押した。

 沢又は一瞬、何故白摩署から? と首を傾げたが、自分の席にある電話の受話器を取り、回線を繋げた。


「はい沢又……」


『あいにくだったな、俺にはまだ()()()()()()()ぞ……』


 その声を聞いて沢又は目を見開いた。

 武だ。

 焦った沢又は、咄嗟に机の下に身を隠した。


「生きていたか……」

『当たり前だ。15時ジャストに、本牧埠頭の水沼研究所跡に1人で来い』

「何だって?」

『来なければ、アンタの悪事を全部バラす。分かったな』


 そう言って一方的に電話を切られた。

 武が生きていたことも驚きだが、何故わざわざ自分に電話をしてきたのか?

 もしかしたら、いつでもお前の化けの皮を剥がせるぞ、という脅しなのだろうか?

 いずれにしてもこのままでは……まずい。

 焦りから冷や汗が止まらない。


「どうしたんですか沢又さん?」


 同僚の刑事に声を掛けられ、沢又は「はっ⁉」と声を上げてしまう。


「な、何がだ⁉」

「顔色悪いですよ?」

「えっ、あぁ……ちょっと調子が悪くて……トイレ行ってくる」


 そう言って沢又は刑事部屋を後にした。

 

                 ○

 

 刑事部屋を後にした沢又の姿を超高倍率の双眼鏡が捉えていた。

 その双眼鏡の持ち主はレイだ。

 ここは神奈川県警の隣にあるビルの屋上。

 意外に警備が手薄なのが色んな意味で心配になるが、お陰で様子がバッチリおがめた。


「沢又が部屋を出たわよ」


 武に連絡を入れるレイ。

 ちなみに武は県警から離れた公園の電話ボックス。そこから沢又に電話を掛けていた。


『分かった。引っかかってくれるかな?』

「引っかかるわよ」

『そう願いたいね』


 今後の作戦の結果次第で武の汚名が晴らせるかどうかが掛かっている。武にとっては大きな博打も同然、不安が拭いきれないようだ。


「私を疑ってるの?」

『不安なだけだよ。まだ本調子じゃないし』

「頭痛は治ってるでしょ?」

『頭痛が治っても、()()()()()()()使()()()()んだよ……』


 そう、能力による頭痛は完治しているが、それでも数時間は能力を使うことが出来ない。

 もっと言えば、鍛錬だって、いうまでもなく不十分だ。


「大丈夫よ。別に能力を使わなくても沢又を抑えられるプランになっているし」

『沢又が大勢連れてこなければだけどな……』


 一応作戦として、沢又が誰かを連れて来る、と読んでいるが、それはあくまで1人か2人の場合。

 武が気になるのが、相手がこっちの予想より多く連れてきた場合だ。

 そんな武の不安と裏腹にレイは、沢又が刺客を連れてきても、1人か2人と読んでいる。それも塚元つかもと組と縁が薄い人間、つまり使い捨てが出来る人間を寄こすはずだ。


『ところで――』


 武は気になることをレイに尋ねた。


『――その姿、目立たないか?』


 今のレイは襲撃時に着る黒のロングコート、そして肌も髪真っ白の状態。

 一応バイクに乗る時に被るフルフェイスのヘルメットを被っているので、素顔を誰かに見られることは無いが、それでも長く白い髪はヘルメット後ろからはみ出ているので、非常に目立つ。

 コスプレ会場なら逆に溶け込めそうだが。


「むしろこっちの方が誰かに見つかっても、この髪の毛の色でホワイトウィッチだ、って分かるし、変に素顔を晒す方が逆に危ないわよ」


 そう、万が一レイの存在を感づかれても今のレイなら、ホワイトウィッチが覗いていた、くらいで済む。


「それに面倒なのよね。メイクをするのも落とすのも」

『確かにそうだな』

「それじゃ、あなたは手筈通りに」

『了解』


 そう言って武とレイは交信を切った。

 

                 ○


 塚元組の事務所――

 組長室で仕事……をするふりをしてゲーム――アッチ系の――で遊んでいた塚元。

 選択画面になり画面をタップしようとした時、机の上に置いてあった携帯電話が鳴った。


「何やねんっ⁉」


 せっかくのイチャイチャ展開に進めるところだったのに、水を差されてご立腹。

 すぐにセーブし、急いて携帯電話を取った。


「何やヒコちゃん⁉ ホンマに緊急なんか⁉」

『緊急です。大下が生きてた!』

「何やそないなこと……――なにぃぃぃいっ⁉」


 まさかの報告に沢又は声を上げた。

 その声は部屋の外に居る組員にまで届き、一瞬何が起こったのか分からずドギマギする程だ。


「そんで、何処に居るん奴は?」

『それは分かりません。奴から電話があって』

「逆探知したらええやん?」

『そんなこと出来ないですよ』

「――それもそうや……。でぇ、奴と何を話したん?」

『15時に水沼研究所跡に来るように言われました。1人で来ないと洗いざらい喋ると』

「ほう……かけ直すさかい、ちょい待っとって」


 そう言って一方的に電話を切った。

 立ち上がった塚元は部屋のドアを開けて顔を出した。


「おい、赤西」

「はい」


 赤西が塚元の前まで行く。


「何ですかオヤジ?」

「使い捨て出来るモンるか?」

「だいぶ減りましたので、ここには……」

「誰がうちのモン言うた?」

「あぁ、半端な奴で良ければ1人いますが……」

「早う連れてこい」

「分かりました」


 そう言うと塚元は部屋のドアを閉め、再び自分の席に着いた。

 塚元は改めて携帯電話をダイヤル。


「今どこぉ?」

『県警の前だ。何時でも奴をつけられるぞ』


 電話の相手は鬼柳きりゅうだ。


「間もなく本牧埠頭にある水沼研究所跡へ向かう。そこで大下とかいう刑事デカと会うようや」

『それで、全員始末するのか?』

「そうや、その場にいる人間、みんなや。沢又の連れも一緒な」

『あんたも残忍だな』

「おおきに。ほな、頼んだでぇ」


 そう言うと塚元は電話を切り、沢又に電話を掛ける。


「ヒコちゃん、俺や――」

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