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WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
第6章 罠
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3話 赤西

 会議が終わり、タケルはモヤモヤした気持ちで自動販売機の前で飲み物を買っていた。


「……何が『銃を拾って使った』だ、ガキみたいな推理しやがって……」


 会議の時に飛馬ひばが言っていた推理に文句を言いながら武は飲み物を口にし――


「――さすがに私もアレは無理やり過ぎると思ったね」

「ブフォー‼」


 いきなり背後から沢又さわまたに声を掛けられ武は驚いて口に含んでいた飲み物を噴き出して閉まった。


「背後霊ですかあなたは⁉」

「おお、面白いジョークだね」


 沢又は「ハッハッハッ!」と高笑いをした。

 言い出した武は呆れて目を細くしていたが。


「ところで、わざわざ脅かしに来たんですか?」

「あっそうそう。さっき君が言っていたことで、もし今回のことが塚元つかもと組の自作自演なら、組員を1人捕まえて吐かせれば何か分かるかもしれない」

「それは賛成ですが、何処から探しますか?」

「さっき捜査一課イッカたちばな君から聞いたんだけど、どうやら塚元組の人間が全員病院に居るわけではないらしい」

「病院?」

「殺された組員が運ばれた病院だよ。その中で赤西あかにしって男だけが確認されていない」

「赤西?」

「事務所でスキンヘッドのポッチャリ男が居ただろ? あいつ」


 何となくだが武も赤西の顔を思い出した。確かにそんな男が居た気がする。


「そいつを捕まえれば、何かわかるかも、と思ってね。もし本当に暴力団の抗争が起こっているなら、塚元組《奴ら》も武器を用意するはず、もしかしたらそれでたに刑事を殺した犯人ホシの手掛かりが得られるかもしれない」

「得られますかね……?」


 不安は残るものの、何も思いつかない武。


「駄目もとでやってみないかい?」

「……」


 案の無い武は何も言い返せなかった。

 

                 〇

 

 武と沢又を乗せた覆面車は塚元組の事務所が見える駐車場の一番奥の列に止まっていた。

 ちなみにその隣には白いミニバンが止まっているのだが、これは県警の車両で、武たち同様張り込みをしていた。

 武が自分の腕時計を見ると、時間は「12:34」を表示している。

 運転席に座る武は、張り込みの必需品・コンビニのパンをほおばっていた。味は不味くないのだが、やはり物足りない。


「張り込みの時は何時もそんな顔をするのかい?」


 助手席の沢又が武の不満を感じ取ったのか話しかけてきた。


「どうも苦手なんですよね。待つのが……」

「おいおい、刑事は粘り強くないと、だぞ?」


(なんかオヤッさんと同じこと言ってる……)


 武は遠くを見るように目を細めた。

 そんな武の願い――不満――が通じたのか事務所で動きがあった。男が1人、事務所から現れたのだ。

 スキンヘッドのポッチャリ系、沢又の言っていた赤西に間違いない。

 赤西は手ぶらで駐車場の方へ歩いて来る。

 武と沢又は、赤西に気づかれないように体を低くして隠れた。

  赤西は周りをキョロキョロと見回すと、止められていた黒のクーペに乗り込んだ。どうやら武たちには気づいていないようだ。

 沢又が無線のマイクを取ると、隣に止まる県警の車両に連絡を入れる。


「尾行を開始します」

『了解』


 赤西のクーペが駐車場を出たことを確認し、武は覆面車のスターターを回し、発進させた。

 

                 〇


 武と沢又が赤西を尾行してしばらく走ると、赤西の車はビルが密集する通りに入った。ハッキリ言って最悪だ。この辺りは張り込める駐車場が少なく、おまけに一方通行で一車線の所が多いため、下手に車を路上に止めることが出来ない。

 赤西の車が何処かの駐車場に止めたとしても見張るのが難しい所なのだ。


「大丈夫か大下君?」

「正直きついです……」


 尾行が難しい地域に入り、武も緊張が走る。


 

 しばらく走ると、赤西の車はビルの間にあるコインパーキングに入って行った。

 武はアクセルを離し、スピードを落とす。

 何処か止められる場所は無いかと周りを見回すと、赤西が車を止めたコインパーキングの向かいに駐車場を見つけた。幸いにも駐車スペースもある。

 武はウィンカーを出して頭から駐車場へ。

 ここは洋菓子店の駐車場で横に10台は止められるようになっている。

 武はルームミラーを動かして赤西の車を見張った。

 赤西は車を降りると、コインパーキングのすぐ横にあるビルの1階にある……ラーメン屋に入って行った。

 お昼時なので特に怪しい行動ではない。


「呑気にラーメンかよ。こっちの気も知らないで……」


 愚痴を言う武に沢又は苦笑した。

 ここから赤西が出て来るまで缶詰になることを覚悟した。



 数十分後。

 相変わらず張り込みが苦手な武は、その不満が顔に出ていた。

 沢又も慣れたのか、武の表情に対しての何も言わなくなっていた。

 すると、赤西がラーメン屋から出てきて、コインパーキングへと入って行く。ただお昼を済ませただけだったのだろうか。

 そんなことを考えていると――


「ん!」


 武は違和感を覚えた。

 赤西が足を運んだのはシルバーのセダン。普通にドアロックを解除してそれに乗り込んだのだ。

 確か赤西が事務所から乗って来た車は黒のクーペだったはずだ。


「沢又さん!」

「あぁ、間違いない。あの車に乗って何かするつもりだ」


 赤西は何事も無かったように、コインパーキングから出る。


「行きましょう」


 武は覆面車のエンジンを掛け、再び赤西の尾行を始めた。

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