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WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
第5章 密会と交流
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10話 備え 第5章END

 レイの隠れ家リビング――

 タケルとの通話と終えたレイの表情は硬かった。

 気掛かりなことがあるからだ。

 一応、罠である可能性を警告したが、あの武だ。目的を優先する可能性がある。


「どうかなさいましたか、お嬢様?」


 レイを見ていた野々原(ののはら)がレイに声を掛けた。


「嫌な予感がするのよ」

大下おおした様のことですか?」


 レイは頷いた。


たにさんの為なら単独行動も取るような刑事よ。このまま大人しくしているとは思えないの……」


 それを言った瞬間、レイの表情が曇り始める。

 確かに武には、谷が自分のことで武を巻き込むことを嫌がっていたことを伝えた後、武が自分の意思でレイと行動する道を選んだのは間違いない。

 だが、元をたどれば自分が谷を誘ったことが、武の単独行動――いや、巻き込むきっかけになったことは間違いない。そう思うと胸が締め付けられるような気持になった。


「お嬢様?」

「え? あっ、ごめんジイ……」

「お嬢様、そこまで心配なのでしたら、様子を見に行ってはいかがでしょうか?」

「……そうね」


 そこでレイは考えた。

 問題はどうやって他の刑事に気づかれないように武を監視するかだ。

 幸い映画館から帰ってからメイクやヘアカラーを落としていなかったため、このまま外出することはできるが、ホワイトウィッチは金髪の白人女性と武が証言しているので、このままの格好でも安全とは言えない。

 それよりも問題があった。

 使える車が無いのだ。

 レッドスピーダーは色を変えることが出来ても、車種は手配されている。もし警察の目に留まって調べられたら面倒だ。

 ではクライスラーならどうだろうか?

 色もナンバープレートも変更済みだが、それでもレッドスピーダーと状況は殆ど変わらない、車種は武によって手配されているうえ、いざ戦闘となった時、ガジェットが付いていないのは勿論、ガラスもボディもノーマルの為、何の役にも立たない。

 そこで野々原がある提案をした。


「それではお嬢様、あのマシンをお使いください」


 レイは首を傾げた。


「あのマシン?」

「新たらしく購入したあの車ですよ」

「あぁ、()()()()()()()ね」

「はい」


 野々原は頷いた。

 レイドマスターは、更なる戦闘に備えて取り寄せた車で、2日前に届いたニューフェイス――なのだが……。


「でもジイ。あの車はまだ完成していないわよね?」

「はい。まだ装備などは付けていませんが、防弾処理等は施されています。銃撃くらいは問題ないかと」


 レイは少し考えた後に野々原に頷いた。

 新しい車――レイドマスターなら警察に見つかっても調べられる心配はないだろう。この車なら監視は可能だ。


「ところでお嬢様、大下様の居場所はお分かりに?」

「十中八九、塚元組の事務所でしょうね。すぐに準備して出るから、ジイはサポートお願い」

「はい、お嬢様」

 

                 〇


 野々原は廊下の突き当り左にあるサポート部屋へ。

 部屋を入って正面にあるのは、緩いアーチ状の机の上にパソコンが横に2台置かれた席がある。

 野々原は席に座ると、パソコンを立ち上げた。


 左のパソコンは主に情報収集用のコンピューターでインターネットでの収集は勿論、専用のウィルスを使ったハッキングでの収集に使われている。

 右側は主にレッドスピーダーやダークスピーダーの自動走行用のプログラムを入力したり、マシンのコンディションを示したりするコンピューター。

 この2つのコンピューターがメインで使う物だ。


 更に部屋の右にも席があり、その机の上にはディスプレイが置かれ、その下にはレースゲームなどで使うようなハンドルが付いたコントローラー、その左隣にはVRゴーグルが置かれている。

 椅子の右隣りには、オートマチック車のシフトレバーのようなものが置かれ、机の下にはアクセルとブレーキのペダルもある。

 これはレッドスピーダー及びダークスピーダーのリモートコントロールシステムだ。

 メインコンピューターでの各マシンの自動走行は巡航ミサイルのように決められたコースを走り、車体に付けられたセンサーが障害物を回避し、信号機の電波を感知して停車及び発進を行うため、最低限の走行を可能にしている。

 しかし、戦闘時などで細かいコントロールが必要な場合は、この機械を使って遠隔操作を行っている。

 

                 〇


 一方レイは、一度自分の部屋にも取り、クローゼットから紫のライダースジャケットを取り出し、それを羽織ると、地下の武器庫へ向かった。

 いくらレイドマスターが防弾だからといっても、無防備で武を監視するのは危険だ。

 レイは、棚から小型のオートマチック拳銃・グロック26を手に取った。愛銃のワルサーP99では万が一警察に見つかった時に正体がバレてしまうからだ。


 グロック26はオーストリア製の拳銃。

 同メーカーのモデル17を極限までコンパクト化した、隠し持つには最適の銃だ。

 レイの愛銃・ワルサーP99と同じ、9ミリ弾を使用しているので必要最低限の威力は持っている。

 

 続いてレイが手に取ったのは、壁に掛けられていたスナイパーライフル、ブレイザーR93・LRS2だ。

 

 ブレイザーR93はドイツ製のスナイパーライフル。

 通常のボルトアクションライフルのようにボルトハンドルを回転させ、それを引いて戻す動作ではなく、ストレート・プル・アクションと呼ばれるボルトハンドルを前後にスライドさせるだけなので装填と排莢を素早く行うことができる。

 強化プラスチック製のストックは、個人の体型に合わせて調節可能な頬付け(チークピース)床尾板バットプレートを搭載。

 銃を固定するための二脚バイポットも付けられているため、標的を狙う時もぶれを抑えられるため、安定した狙撃が可能となっている。

 弾薬は、遠距離でも対人であれば十分な殺傷能力を発揮する、7,62ミリのライフル弾を使用している。

 

 遠距離射撃が可能なこのライフルなら、万が一、武に何かあった時にも敵に姿を見せることなく援護することができる。

 レイはライフルの弾倉マガジンを抜いて弾薬を確認すると銃へ戻した。


                        第5章「密会と交流」END


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