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WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
第4章 ウィザード降臨
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9話 報告会議

 翌日。

 白摩(はくま)署・会議室――

 県警のたちばな池田いけだがテーブルを挟んでタケルと向かい合っている。

 聴取の内容は、昨日の白摩埠頭での出来事についてだ。

 日下くさかから得た情報で、単身埠頭へ向かい、そこで前尾組と交戦し、埠頭を脱出する際、ホワイトウィッチの車(レッドスピーダー)に乗ったことを話した。


「――それで、一緒に逃げたわけか?」

「はい……」


 橘の質問に答える武。


「その時、車は誰が運転を?」

「ホワイトウィッチがリモコンで誘導していたので、自分が乗った時は誰も……」

「……なるほど、その後、廃工場に?」

「はい。そこで前尾が爆薬を密輸していることと、モール白摩の爆破を企んでいることを聞きました。その後、工場に居た彼女の仲間に……」 

「ホワイトウィッチの仲間の顔は見なかったのか?」


 今度は池田が質問した。


「はい。後ろからだったので顔までは……ただ、声は男性でした」

「そうか……それと、すまなかった大下刑事。我々が動いていれば……」


 武に謝罪する池田。

 それを聞いても武の気は晴れなかった。


(謝るならモールの人たちに、だろ……)

 

                 〇


 神奈川県警・会議室――

 広い部屋にコの字置かれた幾つもの長いテーブルに何十人もの刑事たちが集まり、手元の資料に目を通していた。

 全てホワイトウィッチを前尾組に関係する物だ。

 刑事たちの向かいにある大きなスクリーンには、モールの監視カメラによる前尾組の連中とホワイトウィッチと共犯の男が交戦する映像が流れていた。

 ホワイトウィッチと共犯の男がワイヤーで別の階へ移動する様子や共犯の男が組員の銃弾を撃ち落とすという映画でしか見たことがないような映像が流れた。

 スクリーンの隣で橘が資料を手に説明を始めた。


「昨夜、モール白摩にいてホワイトウィッチと共犯の男が前尾組と交戦しました。共犯者の噂はありましたが、姿を現したのは今回が初めてです」


 映し出された共犯の男を見て、県警の刑事たちは、

 ――思っていたより若いな。

 ――本当に人間なのかあの動き見ろよ。

 などの声が上がっている。


「この男の身元を特定できるような物は現場には残されておらず、使っている拳銃にも前はありませんでした。拳銃はベルギーのFNファイブセブン、日本で犯行に使われたのは今回が初めてです」


 橘は資料を捲り共犯の男が使っていた銃についての説明をした。


「ファイブセブンは通常とは違う特殊な弾を使う銃で、その貫通力は通常の防弾チョッキも貫通します。事実、モールのオーナー室に倒れていた組員の1人が重装備をしていたにもかかわらず、負傷しています」


 ファイブセブンという聞きなれない銃の名称に刑事たちはどよめきだした。更に防弾チョッキも貫通すると聞いて、より一層その銃に恐怖を抱いたのだ。


「この共犯の男による死者は?」


 質問したのは県警本部長・坂東ばんどう 徳雄トクオだ。

 年齢は五十代、前髪は白髪に染まり、表情は硬く第一印象は頑固おやじのそれだ。

 坂東の質問に少々橘は戸惑った。

 それは――


「あぁ……いえ、それが……今回のモールの事件で、ホワイトウィッチによる死者は大勢いますが、この共犯の男による死者は出ていません」

「出てない⁉」

「はい。調べによると意図的に急所を外していることが確認されています」


 その場に居る刑事たちが一斉にどよめいた。ホワイトウィッチと一緒に行動しているなら、この男も殺しをしていると思っていたからだ。


「それと、共犯の男の車は、改造されたDMC12、通称デロリアンだと思われます。現在登録車リストを洗っています」


 報告を終えると橘は自分の席に座った。


「ところで刑事がホワイトウィッチと遭遇したという話を聞いたが?」


 坂東の質問に橘は再び立ち上がり報告を始めた。


「はい。白摩署の大下刑事が前尾組からホワイトウィッチと廃工場まで逃走。その後、大下刑事は例の共犯者によって気絶させられたようです。廃工場からは大下刑事とは別の足跡ゲソコン、そして、天井からもワイヤーらしき痕も確認されています」


 こうしてホワイトウィッチの共犯の報告を終えると、続いて話題になったのは爆弾のことだ。

 それは池田が報告を始めた。


「モール白摩の倉庫に大型の爆弾が仕掛けてありました。爆薬の種類はLSB0と呼ばれる高性能爆薬が使われています」

「……LSB0とは何だ?」


 坂東の質問に池田が答える。


「LSB0は通称ステルスボムと呼ばれる物で、税関の検査でも危険物か識別が難しい油状の爆薬で、今全世界で問題視されている爆薬です。モールの爆弾は既に止められていました。恐らく例の2人の仕業かと」

「爆薬の量は何処くらいだ?」

「……およそ2000リットル回収されました。モール1つを吹き飛ばすには十二分の量です」


 もはや暴力団を通り越してテロリストのような前尾組の行動にその場にいた刑事たちが驚くやら呆れるやらと様々な表情を見せていた。


「しかし前尾組がこれだけ騒いたんだ。黒富士組も叩けるのではないのかね?」

「それなんですが――」


 坂東の質問に1人の刑事が立ち上がった。

 彼は堀内ほりうち 則人ノリヒト、暴力団対策部・第二係一班の刑事。

 年齢は40代半ばだが、長身でモデルのようなハンサムな顔立ちに、スマートな体型から見た目は年齢よりも若く見える。

 ファッションを決めればホストと言っても疑わないだろう。


「――破壊は直接ライバル業のオーナーが前尾組に依頼したらしく、前尾も殺された今、本家黒富士組が関与していたと裏付ける証拠がありません……」

「これだけの騒ぎを起こしている連中を捕まえられんのか⁉」


 坂東は憤怒を露わにし、ドン! と机を叩いた。

 それを見た県警の刑事みんなが教師に説教される子供のように固まっていた。


「いいか⁉ 黒富士組もホワイトウィッチと共犯者も必ず逮捕しろ、いいな⁉」


 こうして坂東の血圧が上がったまま報告会議は終了した。

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