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WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
第4章 ウィザード降臨
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3話 潜入(武視点)

 そしてモール白摩――

 ダークスピーダーはモールのメインコートの入口に向かうように止められていた。

 ここまで誰にも気づかれずに来られたのはダークスピーダーの装備の1つ「SILENT(サイレント)」と「NIGHT(ナイト)」を使ったからだ。

 「SILENT(サイレント)」はエンジン音をコンピューターが瞬時に分析し、真逆の音を出して音同士をぶつけ、音を消す機能だ。

 「NIGHT(ナイト)」は暗視装置で、周りが真っ暗でもフロントガラスが昼間のように明るく見えるようになる機能となっている。

 配置に着いたダークスピーダーの中では変装したタケルが仮眠を取っていた。

これはサボっている訳ではない。能力を少しでも長く使えるように備えているのだ。

すると――


『……プランBよ。早く来て!』

「……ん? ――んっ! 了解!」


 ホワイトウィッチの無線に一瞬寝ぼけて返事が遅れたが、回路が繋がったように飛び起き、ダークスピーダーのシフトレバー右のボタンの中からまず「GLASS(ガラス)」のボタンを押してガラスをスモーク状にした後、シガレットソケットの左にある「ROCKET(ロケット)」のボタンを押した。

 ダークスピーダーのフロントバンパーのウインカーランプが内側へスライドし、赤いロケット弾が顔を出した。

 続けて武は「ROCKET(ロケット)」の横の発射ボタンを押し、ロケット弾を飛ばした。

 モールのメインコートの入り口は派手に吹っ飛び、武は思った。


(ごめんなさいね)


 無関係者に被害を出してしまうことに申し訳なさを感じつつも、ダークスピーダーのスターターを回し、ヘッドライトを点けた。

 武はシフトレバーを(ロー)へ入れ、クラッチを離すと同時にアクセルを踏み込み、ダークスピーダーを急加速させた。

 純正とは違う改良されたエンジンが積まれているため加速した時のパワーが通常とは全く異なる――そもそも純正のエンジンがどんなものかもよく知らないが……。

 モール内へ入ると、百貨店の前に立つ、暴力団の男――木崎の姿が目に入った。

武はハンドブレーキをかけると同時にハンドルを左に切り、ダークスピーダーを横滑りさせて停車した。

 続いて武は白く点灯する「ROCKET(ロケット)」のボタンを押してロケット弾を格納。


「お前ら動くな。これは陽動だ!」


(陽動? なんのことだ?)


 木崎の言葉の意味が理解できなかったが、自分のことは気づいていないようだ。

 木崎は続いて無線で誰かに連絡をしていた。恐らく相手は前尾だろう。しばらく無線との会話が続いた後、2人組が木崎と合流した。


「お前ら良いところに来た。女があの柱に隠れている。連れてこい」


(よし!)


 武はスピードメーターのすぐ右側に取り付けられたドアのスイッチを押した。

 ウィーン、という機械音と共にドアが上へ開く。

 木崎たちもその音に気づき、こっちに視線を向けた。


「オヤジ、車から男が降りてきましたが……」

『オトコォ? ――構わん撃ち殺せ!』

「了解」


 木崎は武へ向けサブマシンガン(UZI)を構える。


(やべ!)


 武はダークスピーダー中へ戻った。

 次々飛んでくるサブマシンガンの銃弾まで避けられる自信がなかったからだ。

だが、ダークスピーダーのボディもガラスも防弾だ。見事に武の盾として銃弾を弾いている。

 UZIの弾が切れたらしく、木崎があたふたしている。

 武はダークスピーダーから降りる。


「おい、突っ立ってねぇで撃て‼」

「い、いや俺たち人を撃つなんて――」

「――れ‼」

「は、はい‼」


 パッと見て漫才師のような2人組が木崎に怒鳴られ、武に向けて銃を構えた。


「すみません‼」


(謝るんかい……)


 情けない。撃つ前に謝るなんてギャグマンガでも見ないぞ、と武は内心呆れてしまう。どうやら心底悪い奴ではないようだ。


(脅かすか)


 武は2人組のそれぞれ掛けている眼鏡のヨロイの部分目掛けて、拳銃ファイブセブンの銃弾を放った。

 狙い通り、2人組がそれぞれ掛けていた眼鏡が床に落ち、2人も尻餅を着いた。

 しばらくして「うぇーあああー‼」と悲鳴を上げて2人組は一目散にその場から逃げていった。


(ちょっとやり過ぎたかな?)


 武が少しだけ反省すると、「使えねぇな!」と、木崎は2人組が落とした拳銃を拾い武に向けた。


「よしなよ……」

「うるせぇ!」


 武は木崎が放った銃弾を避け、惚けるように言った。


「どこ撃ってんだよオッサン?」

「どうなってんだ⁉」


 やがて木崎が持つ拳銃が弾切れした。


「おい、お前らっ――」


 木崎がサブマシンガン(イングラム)を持った組員を呼ぼうとして武を背にした。

 その隙に武は木崎に近づいた。


「お休みっ!」


 イングラムを持つ組員を呼び出そうとする前に、武が木崎を拳銃のグリップで殴り、それを遮った。

 それでも木崎の声を聞いた組員2人が事態を察し、武に向けてイングラムを構え――


 バン! バン!


 ――それよりも早く武の拳銃が火を噴き組員のイングラムが弾き飛んだ。その衝撃で手を抑える組員2人。


「クリアだ」


 武は耳のインカムから手を離した。


「よーし。お前ら両手を上げ――」


 バンッ! バンッ!

 2発の銃声と共に、先ほど武がイングラムを撃ち落した組員2人の頭に風穴が開いた。


「え⁉」


 不意を突かれた武が間抜けな声を上げた。


「遅かったじゃない」


 ホワイトウィッチが柱の陰から姿を現した。その手には拳銃(P99)が握られている。


「こんなに殺しやがって。いくらなんでもやり過ぎだ‼」


 敵とはいえ、目の前で人が殺されたことに対する怒りもあるが、その前に誰が谷を殺した犯人か分からない今、1人でも死人を出すわけにはいかないのだ。


「敵なのよ。それに――」

「うぅ……」


 唸る木崎の声に気づいた。ホワイトウィッチが、ハッとして木崎に拳銃を向けると、武がそれを抑えた。


「やめろ‼ 動けない奴まで殺す事ないだろ‼」

「邪魔するならどっか行ってくれない⁉」


 ホワイトウィッチは武を睨みつける。

 それでも武は自分の考えを曲げなかった。

 武は目を覚ました木崎の胸倉を掴むと、無理やり立たせ、眉間に拳銃を突きつけた。


「死にたくなければ前尾ボスの居場所、言いな!」

「……あぁ、撃てよ。そんな度胸無いくせに」


 強気で挑発する木崎に、武は躊躇なく引き金を引いた。


 バン!


 弾は木崎の眉間……ではなく下半身の男の急所ギリギリを通り過ぎ、その部分だけズボンが破れ、青い縦縞のパンツが見えていた。


「次は当てるぞ」

「さ、3階のオーナー室だ‼」


 そう言うと木崎は膝から崩れ落ちて再び気を失った。


「度胸が無いのはどっちだよ?」


 武はとりあえず、木崎が逃げないように専門店にあったテープで両手を縛った。


「行こうか?」

「はぁ……」


 ホワイトウィッチはため息をついた。彼女から見れば武のやり方は生温いというところだろう。

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