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WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
第3章 接触
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10話 脱出

 組員のセダンをかわしたレッドスピーダーは中央ゲートへ向かっていた。


「まさかこんな所で片輪走行が役に立つとは思ってなかったな……」


 ハンドルを握るタケルが独り言を呟いた。

 この倉庫の間を抜ければもうすぐ中央ゲート――出口だ。

 そうと分かると少しだけ気持ちが晴れるが、それを邪魔するようにレッドスピーダーの後部から無数の銃弾が飛んでくる。

 ルームミラーを覗くと後ろからセダンが3台、それぞれ組員が後部座席からサブマシンガンや拳銃を撃っていた。


「しつこいな。他に武器は?」

「マシンガンとオイルはあるけど」

「よしオイルだ」

「道が広すぎるわよ」


 ホワイトウィッチの言う通り、倉庫の間の通路は広く、オイルを撒いただけでは、せいぜい1台をクラッシュさせるくらいしか効果はないだろう。


「じゃあ、マシンガンを」

「前方攻撃用よ」

「それでいい。出してくれ!」


 前方にいる敵を攻撃するための武器をどうやって後方の敵へ向けるのか。理解するよりも先にホワイトウィッチの指はシフトレバー横の「M・GUN」のボタンを押した。

 すると、レッドスピーダーのナンバープレートの部分が上へ開き、横に並ぶ2つの銃口が突き出た。


「撃つときは?」

「ハンドルのボタンよ」

「これだな!」


 ハンドルに付いている発射ボタンを見つけた。発射ボタンは右の内側、元々ハンドルに付いているオーディオなどの音量を操作するボタンの上の部分に付けられている。


「よし!」


 パーキングブレーキペダルを踏んだ。

 すると後輪がロックされ、スピンする形でターン、バックする形でレッドスピーダーを走らせた。

 正面には組員たちのセダン。武はハンドルのボタンを押した。

 レッドスピーダーのマシンガンは火を噴き、銃弾が雨のように飛び、先頭を走っていた組員のセダンのフロントバンパーを破壊、やがて銃弾はタイヤに穴を開けた。

 パンクしたことでコントロールを失った先頭のセダンは横向きの形で止まった。

 そこへ、後続のセダンが避ける暇もなくそのまま衝突。さらに最後尾のセダンも避け切れず、衝突していたセダンに乗り上げ横転してしまった。

 後ろ向きのまま走るレッドスピーダーは中央ゲートに差し掛かる。

 その時、守衛所から警備員が現れ、「おい、止まれ!」と、両手を振って停止を呼びかけた。


「止まらないで!」 

「どうして!?」

「止まったら撃つわよ!」


 ブレーキペダルに足を乗せた武にホワイトウィッチが拳銃(P99)を向ける。

 本当なら止まりたいが、こうなっては仕方ない。

 正直、情けない、と思いながらも渋々アクセルを踏み込んだ。

 それに驚いた警備員は一目散に守衛所へダイブする形で逃げ込んだ。

 ゲートを抜けると、武はハンドルを切った。

 それに合わせてレッドスピーダーは、タイヤを鳴らしながら再びターン。通常の走行に戻った。


「で、どこに向かえばいい?」


 武はホワイトウィッチに訊いた。本当ならこのまま署に連れて行きたいが、それ以前に谷との関係を確かめたかった。


「いい場所がある」

「案内してくれ」



 その頃――

 埠頭では前尾(まえお)が無線機を手に木崎(きざき)の連絡を待っている。

 何か妙なことが起こっているのは間違いないだろう。

 すると、無線の呼び出し音が鳴り、続いて木崎の声が無線から流れた。


『すみません、逃げられました』

「バカが‼」

『すみません! でも片輪で逃げるとは……』

「何が片輪だ!」


 無線機を地面に叩いつける。予想はしていたが、あまりにも無様な報告に怒りを抑えられなかった。

完璧だったはずの計画も失敗に終わった。


「オヤジ、落ち着いてください……木崎のアニキにも何か事情があったんですよ!」

「何が事情だ⁉」

「『片輪』がどうって言っていたじゃないですか!」


 確かにそうだ。

 前尾は一度深呼吸をして何とか気持ちを落ち着かせ、改めて失敗の原因を考えた。

 プログラムも「片輪で逃げる」とは出ていない。事実、ホワイトウィッチが過去にスタントマン顔負けの片輪走行で逃げたというデータは無い。

 プログラムが予想できなかった何かが起こったということだ。

 ということは、プログラムは勿論、自分たちもここで現れるとは思わなかった人物による仕業ということになる。


「あの大下 武(デカ)だ」

 

 前尾の中で武に対する警戒レベルが一段上がった。

 問題は今後、ホワイトウィッチと武がどう自分たちに絡むかによって対策を考えなければならない。

 前尾はスマートフォンを取り出し、どこかに電話を入れる。

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