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WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
第3章 接触
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8話 一か八か

 セダンからサブマシンガンを取り出した組員たちを見て思わず身をすくめたタケル

 やがて組員たちの一斉射撃が始まりレッドスピーダーに次々銃弾が襲う。

 だが、レッドスピーダーのフロントガラスは銃弾を防ぎ、武に届くことはない。


「……この車、防弾?」

「そうだけど、いつまでも持つわけじゃないわよ」


 ホワイトウィッチの言う通りだ。防弾といっても、永久に銃弾を防ぐことは物理的に不可能だ。

 このまま銃撃を受ければ、いつかは銃弾がガラスを貫くだろう。


「ロケット弾はもうないのか?」

「あと1発よ。でもこれを使ったら本当に手詰まり。ここまで読まれるなんて……」


 話に聞く程度だったが、いつも襲撃を華麗に行う印象が強かったホワイトウィッチの目には弱気の色が若干窺えた。よほど相手に行動が先読みされたのがショックだったのだろう。


「何かないかな? —―」


 武は辺りを見回した。後部座席—―シートは無いが――にはショットガンは有ったのだが、相手の人数や激しい銃撃を浴びている今は何の役にも立たない。


「――携帯タイプのロケットランチャーとか……」


 結局、役に立つ武器は見つからず、武はシートに座り、正面を見た。

 すると、レッドスピーダーの正面に位置するセダンのサンルーフが開き、1人の組員が上半身を外へ出すと、車内から緑色の太い筒のような物を取り出した。


「……⁉」


 その筒のような物の正体に気づいた武は飛び出るのではという程、目を見開いた。

 組員が持っていた筒のような物、それは、M72LAWと呼ばれるロケットランチャーだった。

 今の主力戦車を破壊するほどの威力はないが、レッドスピーダーを破壊するには恐らく十分な兵器だ。


「何でお前が持ってんだよ‼?」


 漫才師のツッコミのような声にホワイトウィッチが、全然面白くないし、と目を細めて呆れた――勿論、武も笑いを取るためにツッコミを入れたわけではないが。

 武は何かないかと周りを見渡し、レッドスピーダーの外にも目を向けた。

 すると、レッドスピーダーの右前にコンクリートが剥がれ地面が陥没しているところを見つけた。そして再び正面に見える組員たちのセダンたちへ目を向ける。

 3台のセダンの内、真ん中とコンテナヤード側のセダンとの間が広がっていた。それでも車1台が入れるほどの広さはない。通り抜けることは不可能だろう。

 仮に強行突破をしたところで、レッドスピーダーのダメージは計り知れない。いくら防弾車でも車にぶつかって無事でいられる保証は何処にもない。

 ロケットランチャーを持つ組員は、使い慣れていないせいで、ランチャーの横に書いてある説明書きを読み――英語が読めないので絵を見てだが――ちまちまランチャーを組み立てている。


「強力な爆弾とかないか?」

「何をするの⁉」

「あるなら出してくれ」

「ダッシュボードに」


 言われた通りダッシュボードを開けると、確かに爆弾があった。黒く塗られ、コーラの缶くらいの太さに、頭には手榴弾のように安全レバーと、それを留めるピンが付いている。


「手榴弾⁉ もっと強力なのは?」

「中身はプラスチック爆弾。それ1つでこの車も粉々よ」

「あぁ……」


 これならいける、と武は頷いた。


「使い方は手榴弾と一緒?」

「そう、でもまさか近づいて投げる気?」

「いや、俺が合図したら、ギリギリまでバックしろ」


 武は爆弾のピンを抜いた。安全レバーは飛んでいない為、まだ爆弾のタイマーは作動していない。

 武は窓を開けると、爆弾を陥没している地面に向けて軽く投げた。爆弾は陥没している所に入る。


「バック!」


 それを聞き、ホワイトウィッチはシフトレバーを(リバース)に入れアクセルを踏み込む。レッドスピーダーを一気にバックさせた。


「爆弾だ!」


 銃撃していた組員たちはそれぞれ車内に身を隠し、運転手は車を後退させた。

 そして、武が投げた爆弾が爆発した。海風によって埃が流され爆弾があった場所が姿を現した。陥没していた穴はさっきよりもさらに深い溝となっていたが、それ以外全く被害は無い。

 それでも武は、うまくいった、と笑みを浮かべて頷いた。隣に座るホワイトウィッチは武の狙いが全く分からず、武を睨んでいるが。


「よしっ! 運転代われ」

「えっ?」


 一体何を言ってるの? とホワイトウィッチは武を睨んだ。


「いいから!」


 武の狙いが分からないまま、ホワイトウィッチは渋々武に運転席を譲った。さすがに狭い車内の為、互いにぶつかりながら、何とか武は運転席へ移動した。

 爆弾に驚いてセダンの車内に身を隠した組員たちがポツリポツリと姿を現すと再びレッドスピーダーに向けで銃撃を始める。

 ロケットランチャーを持っていた組員も仕上げにランチャーの後部を引き延ばし、自分の肩へ乗せた。


「頭ぶつけないように」

「なんですって⁉」


(一か八かだけど……)


 ホワイトウィッチの理解を待たずに、武はシフトレバーを(パーキング)から(ドライブ)に入れ、床にが抜けるのでは、と思うほど、一気にアクセルを踏み込んだ。

 パワーを一気に送り込まれた後輪は、甲高い音を立てながらスリップし、そして急加速。パワフルなエンジンを搭載しているだけあって、セダンたちとの距離が一気に縮まった。

 迫るレッドスピーダーにロケットランチャーを持つ組員は慌てて照準を合わせ、発射ボタンを押すと、ロケット弾はレッドスピーダーに向かって飛んで行った。

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