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WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
第3章 接触
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7話 疾走レッドスピーダー

 ホワイトウィッチが走らせるレッドスピーダーは、岸壁の通りを走り埠頭の北側ゲートへ向かっていた。

 目的の1つは果たせたが、タケルが現れたことで、当初の計画と大きく変わってしまい、今はこの場から離れることを最優先にしていた。

 本当は中央ゲートに向かいたがったが、トラックを爆破するために使った爆弾は時限式だったため、引き返すより岸壁に沿って走る方が手っ取り早く避難できる。

 そして岸壁の角を曲がり、レッドスピーダーの正面にゲートが見えた。

 もうすぐコンテナヤードを抜ける。

 そんな時だ。


 コンテナヤードと倉庫群の境の通路から大きな貨物用コンテナを抱えた20トンクラスの大型フォークリフト2台が現れ、横並びの状態になると、コンテナを盾にするように置き道を塞いだ。

 それを見たホワイトウィッチはシフトレバーの横に並ぶボタンに手を伸ばし、その中から「DOUBLE(ダブル)(ロケット)」のボタンを押した。

 レッドスピーダーのフロントグリルが開き、さっき1発使ったため3発のロケット弾が顔を出した。

 コンテナに狙いを定め、「ROCKET(ロケット)」と「DOUBLE―R」のボタンの横にある白いボタンを押した。

 すると、両端のロケット弾が2発同時に発射された。

 ロケット弾はコンテナに被弾し大爆発した。

 通常のコンテナの強度ならレッドスピーダーのロケット弾を2発同時に撃ち込めば大型フォークリフトごと破壊できるはずだ。


「すげっ……」


 助手席に座る武の方は目の前に置きた爆発にキョトンとしている。

 だが武と違い、ホワイトウィッチは着弾地点を睨みつけたのだ。

 コンテナには、穴は開いたものの、道が塞がれている状況は変わってはいなかった。

 それどころか、穴の開いたコンテナを持ち上げ再びレッドスピーダーに迫って来たのだ。

 恐らくどこからかレッドスピーダーのロケット弾の威力を調べ、耐えられるように強化されたのだろうか。


「って効いてねぇし‼」


 声を上げた武に、そんなの分かってる、と言いたい気持ちを抑えながら、ルームミラーを覗くと、ホワイトウィッチは舌打ちをした。

 すでに黒塗りのセダン2台が道を塞ぐように横向きに止まっていたのだ。

 右側には海だ。いくら改造された車でも海の上を走ることはできない。

 ホワイトウィッチは周りを見渡すと、左側へ目を向けると、「SMOKE(スモーク)」のボタンを押したと同時に急ハンドルを切る。

 後ろから黒煙を噴射するレッドスピーダーはターンして煙に包まれた。


 大型フォークリフトが煙の中へ突っ込む。

 レッドスピーダーは押し潰されてしまったのだろうか。

 だが、煙の中から出てきたのは大型フォークリフト。抱えているコンテナにはレッドスピーダーどころか車の残骸も見当たらない。

 完全に消えてしまった。

 大型フォークリフトを操縦していた組員も周りを見渡したが、やはりレッドスピーダーの姿は無かった。

 レッドスピーダーは何処に消えたのか。


 すると、大型フォークリフトの後ろから突然レッドスピーダーが走り去って行った。

 まるでレッドスピーダーが大型フォークリフトをすり抜けたみたいだ。

 実はコンテナヤードに車が入れるスペースを見つけ、煙幕を使って組員たちの視界を奪うと同時に避難していたのだ。


「危なかった……」


 ピンチの逃れたと思い武が安堵の声を上げた。

 その直後だ。


「いえ、まだよ!」


 ホワイトウィッチが声を上げた。

 確かに大型フォークリフトをやり過ごしたが、これから向かうはずの倉庫群には、別の大型フォークリフトがコンテナを抱えて道を塞いでいたのだ。

 ロケット弾は残り1発。

 ホワイトウィッチはふとルームミラーを覗くと、先ほどかわした大型フォークリフトが見える。さらにフォークリフトのバックランプが点灯しており、リフトが後進しているのだ。

 挟み撃ちの状態だ。

 ホワイトウィッチは仕方なく、ハンドルを左に切った。

 倉庫群とコンテナヤードの間の広い通りだ。

 倉庫群は中央ゲートへと交差する通りまで続いており、その距離はおよそ300メートル。反対側のコンテナヤードに並ぶコンテナも同じくらいの距離で並べられ切れ目は殆ど無い。

 通りを走るレッドスピーダー。あと数十メートルで中央ゲートと交差する通りに出る。

 しかし、レッドスピーダーに乗る2人の目に飛び込んできたのは、中央ゲートと交差する通りの前に3台の黒塗りのセダンが、レッドスピーダーを睨みつけるかのように止まっている。

 それを見てホワイトウィッチはブレーキを踏んだ。セダンたちと向かい合うようにレッドスピーダーは停車した。

 後ろは既にコンテナを抱えた大型フォークリフトが止まり――その距離は数十メートルあるが――とても通れない。

 車1台ならロケット弾で何とかなるかもしれないが、これを使ってしまったら、本当に打つ手が無くなってしまう。

 袋の鼠だ。

 仕方なくホワイトウィッチは白く点灯している「|DOUBLE―R」のボタンを押しロケット弾を格納した。


 完全に読まれてる。


 ホワイトウィッチがそう考えていた時だ。

 各セダンの後部座席から箱乗りをする形で組員が身を乗り出した。その手にはそれぞれUZIやMAC10などのサブマシンガンが握られている。


「……!」


 それを見た武は大きく目を見開いていた。

 レッドスピーダーに向けて一斉に銃弾を放った。

 銃弾を受けたレッドスピーダーは銃弾を弾きボディのあちこちから火花を散らせる。


「……この車、防弾?」

「そうだけど、いつまでも持つわけじゃないわよ」

「ロケット弾はもうないのか?」

「あと1発よ。でもこれを使ったら本当に手詰まり。ここまで読まれるなんて……」


 その時ホワイトウィッチは違和感を覚えた。なぜこんなにレッドスピーダーから離れた位置で一斉射撃を始めたのか。

 後ろの大型フォークリフトもレッドスピーダーから離れている。被弾しないようにしているとも考えられるが、どうもそれだけが理由とは思えなかった。

 嫌な予感がする。


「何かないかな? 携帯タイプの()()()()()()()()()とか……」


 そう言って武は後部座席を見回している。そんなことをしてもショットガンしかない。

 だが、武の一言で察しが付いた。奴らは、このレッドスピーダーを破壊する兵器を持っていること。

 それならばセダンや後ろのフォークリフトが距離を置いていることに説明がつく。

 何とかこの場から脱出できないかと必死に頭を回転させた。

 だが、周りの殆どが壁だ。

 

 一体、どうすれば……

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