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WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
第3章 接触
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6話 計画通り

男(組員)の悲鳴が耳に入り、前尾まえおの周りにいた内の5人の組員が駆け足で向かった。

 前尾も悲鳴には気づいているが、振り向くことなくパソコンを操作している。


「……現れましたかね?」


 前尾を護衛する組員が訊いた。ホワイトウィッチが現れたと思い、少々怯える組員に対し、前尾は冷静だ。


「あの女がこんなドジは踏まない。恐らく別の――」


 前尾が言いかけた時、ふと前尾は思った。

 ホワイトウィッチじゃないことは確かだが、それならば一体誰だ?

 考えていると、車のエンジン音の後にタイヤが地面を滑らせる甲高い音が前尾の耳に入った。

 警察が来たのか? と前尾は眉を顰める。勿論タンクの中身を調べられても逮捕されるような心配はないが、どう考えても、あのエンジン音はパトカーによるものではない。

 そんなことを考えていると――


 ズガーン‼


 全身を衝撃が走る程の轟音が響き、前尾も思わず音の方へ向いた。

 ホワイトウィッチが現れたようだ。

 過去の記録からホワイトウィッチがどんな武装をしているか把握している。恐らくさっきの車のエンジン音から推測すると、爆発は女の車に付いていたロケット弾だろう。

 だが変だ。ここでロケット弾を使うなど、プログラムには出ていなかった。


 何が起こっている?


 前尾は慌てて無線機を手に取った。


「これから指示を出す。必ず従うように」


 無線で組員に指示を送った後、無線機を車の屋根に置き、現在起こっていることを入力した。

 パソコンの画面には、一瞬だけローディングが表示され、それが終わると、文章が表示された。


〈第三段階を省略。クラッシュポイントをJ3に変更。以後通常通り〉


 それを見た前尾が無線機を手に取り、組員に指示を出そうとした時だ、けたたましいエンジン音と共にコンテナの陰からホワイトウィッチの車が現れた。

 車はドリフとするように後輪を滑らせた後、真っ直ぐタンクを積んだ大型トラックへ向かって近づいてくる。

 組員たちはホワイトウィッチの車へ向けて拳銃を撃つが、当然ボディは銃弾を弾いていた。

 すると、ホワイトウィッチの車の運転席の窓から左手が伸びると、トラックの方へ向かって何かを投げた。投げられたそれはトラックの真下へと転がり込んで行った。

 そして、レッドスピーダーは岸壁を猛スピードでトラックから離れて行く。


「離れろ!!」


 前尾が叫ぶと、組員は勿論、前尾も車の屋根に置いてあったノートパソコンをジュラルミンケースごと手に取って地面に伏せた。

 ホワイトウィッチの車が急いてトラックから離れていったことを考えればトラックの中に投げ入れられた物は爆弾だということは容易に想像できる。

 そして、ドーン‼ という、けたたましい音を上げ、トラックは爆発。

 炎を上げることはなかったが、白煙を上げて大破していた。

 この状態では、とてもトラックは自力では動かないだろう程に。

 さらに荷台に積まれていたタンクも破損し、中身が流れ出ていた。

 これでは計画が実行できない。組員誰もがそう考えていた――いや、考えていると誰もが思うだろう。

 だが、前尾を含め、誰一人慌てる様子はない。

 そう全てが――


 計画通り。

 

 ただ、前尾にとって予想もしなかった男の顔が、ホワイトウィッチの車の助手席に見えていた。

 タケルだ。

 谷のことで警戒するべき人物ではあったが、ここに現れるのは予想外だった。

 もしかしたら何かを嗅ぎ付けてここに来たのだろうか?

 だとしたら警察が来ているのか?

 そんな不安が過ぎるが、冷静に考えてみれば、ホワイトウィッチの車の中に居たということは、恐らく単独で動いたに違いない。

 これは好都合かもしれない。邪魔な女は勿論、将来的に邪魔になるだろう刑事も一緒に秘密裏に葬ることができればその分悩みの種が無くなる。

 今日は幸運に恵まれている。そう心の中で喜びに浸っていた。

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